80th SNOW 妖(あやかし)なるもの
悪役は際立たせてナンボ。
僕自身悪役を書くのが苦手なので、頑張りたいですね。
冬菜の先制攻撃が開戦の合図となった。
冬菜と桃悦は尚も近接戦闘で交戦していくが、桃悦は冬菜の格闘技術を難なくガードしていく。
冬菜が弱いとは言えないし、むしろ実力者なのではあるのだが、相手が悪すぎている。
だがそれは一対一の話、現在は5-1だ。
数的有利ではある。
なんとか冬菜を援護しようと、北川が銃の引き金を引いた。
硝煙の匂いと共に、銃弾が桃悦に襲いかかった。
「味な真似してくれるね、オジサン? 簒奪術『塗壁』。」
強力な防御力を誇る塗壁を左手に展開し、桃悦は銃弾を受け止めた。
その隙を突く冬菜の左膝蹴りが飛んでくる。
しかし、桃悦は伏せて避け、カウンターで右踵蹴りを冬菜の右脇腹に打ち込む。
「あぐっ……!!」(人間の状態でこの威力!? なんて強さ……!!)
冬菜の呼吸が一瞬止まった。
マズイと思ったのか、氷華も援護をする。
「雪女砲術『冷光砲』!!」
氷華は渾身のレーザーを放つ。
桃悦は伏せて避ける。
「ヒュウ♪ 危ない危ない♪」
桃悦は涼しげだった。
続けて北川が銃弾を放つ。
だがこれも桃悦は塗壁で難なく止める。
晴夜も応戦する。
「迦楼羅炎!!」
晴夜も炎を放つが、桃悦は即座に輪入道に切り替えて炎を吸収する。
続けて文香の爪攻撃と持ち直した冬菜の左フックが飛んでくる。
桃悦はこれを避け、冬菜に右アッパー、文香に左ロングフックを放ち、砂浜に説き伏せさせた。
「小賢しいねえ、チマチマと……」
桃悦は勢いよく砂浜を蹴り出し、北川に襲いかかった。
「チッ……俺に来るのかよ……」
北川も応戦しに柔道の摺り足の体勢を取る。
北川は柔道や剣道の有段者だ、銃撃が取り上げられがちだが、近接戦闘もかなり強い。
桃悦はそれを知らずに飛び込んでいたのだった。
北川は桃悦の袖と襟を掴み、一本背負いで投げ飛ばす。
北川はすぐさま寝技に移行しようとしたが、腕十字固めを狙おうとしたところ、その感覚が消えた。
「なっ……!!」
北川が驚くのも無理はない、一瞬にして桃悦の姿が消えたのだから。
しっかりと服の袖を握っていたにも関わらず、だ。
「いやー、危ない危ない。コレを得ていなかったら僕は捕まっていただろうねえ……?」
「!? テメェ……!!」
いつのまにか背後に回っていた桃悦に北川は咄嗟に銃を引き抜いたが、時既に遅し。
「流石に僕を舐めすぎだよ? ……『破壊の右手』。」
桃悦はイフリートを解放し、左ボディに左拳を打ち込み、爆発音と共に、北川を失神させた。
霊感が強く、妖怪を視認できるが、北川はただの人間だ、妖の力を喰らえばひとたまりもない。
「隊長!! クッ……この!! 行ってこい、カイメイジュウ!!」
晴夜は次々と倒れる仲間にムキになったのか、カイメイジュウで一気にケリをつけようと召喚した。
「ちょっ……!! 晴夜!? 落ち着いてって!!」
氷華は珍しく熱くなっている晴夜を落ち着かせるように諌めたが、晴夜は大事な恋人であるはずの氷華の言葉にも耳を傾けようとしなかった。
カイメイジュウは桃悦に拳を振り上げる。
しかし、桃悦は余裕を持って右手で受け止めると、一瞬でカイメイジュウの懐に踏み込む。
「いやー……ベルゼブブの使用は消耗するねえ……でも造作もないよ、コイツ相手でも……! 『簒奪の右手』!!」
強烈な衝撃音と共に、カイメイジュウの腹に風穴が空く。
それと同時にカイメイジュウは桃悦の体内に吸収されたのだった。
「クソ……!! カイメイジュウが……!!」
「いいのを手に入れたよ……それじゃあ早速使わせてもらおうかね……カイメイジュウ解放、簒奪術『雷光拳』。」
目にも留まらぬ速さで晴夜に突進してくる桃悦、氷華もその前に氷の矢を放ったが、速すぎて捉えきれなかった。
一瞬で懐に入られた晴夜はなす術もなく、電気を纏った拳を横隔膜にまともに喰らってしまった。
晴夜は前のめりで砂浜に崩れ落ちた。
「晴夜!!」
「さて……あとは君だけだね? 雪宮さん??」
「ッ……!! このぉ!!!」
氷華は氷の剣を生成し、桃悦に斬りかかる。
桃悦はこれを鎌鼬を使って捌いていった。
「フフ……素晴らしい……素晴らしいね!! 雪羽や蝿崎を斃しただけある!!」
「何が……!! 何が貴方をそうさせたの!! 石田くん!!」
桃悦のことを本名で呼び、問い詰める氷華。
「何が、って……? 僕は何もないところから……この力を得ただけさ。」
「私の知ってる石田くんは……!! こんな卑劣な人じゃなかった……!! おとなしくてお人好しだった貴方は何処へ行ったの!?」
剣を振るいながら尚も咆哮しながら問い詰める氷華。
これに桃悦は苛立ちを少し隠せなかった。
「人というのは移ろい変わる……それは君も同じな筈だ、雪宮さん?」
「はあ……!? 何言って……」
「どうせ君は僕のモノになるんだ……ちょっと眠っていてもらうよ……!! 『雷光拳』!!」
電気を帯びた拳が氷華の腹にめり込む。
「ああああああああああ!!!」
絶叫し、痛みになんとか耐える氷華だったが、意識が飛びそうだった。
だが、歯を食いしばり、「絶対零度」を放とうとした。
しかし、桃悦の連撃がそれを許さなかった。
「君が何をしようが……この僕に勝つなんてあり得ないことなんだよ。『破壊の右手』。」
桃悦の掌底が、氷華の腹に発勁のように打ち込まれた。
流石の氷華も、この激痛には耐えることが出来なかった。
意識を失い、氷華は仰向けに砂浜に倒れ伏せたのだった。
「ククク……ハーーーーーーッ、ハッハッハッハッ!!! これで雪宮さんは僕のモノだぁぁぁぁぁぁ!!!」
深夜の沖縄の砂浜に、桃悦の高らかな笑い声だけが響いたのだった。
まさかの負けイベでビックリしたかと思います。
次回は意外な展開を迎えます。
カギは晴夜です。
節目の80話を超えたので、ここから頑張りたいと思います。




