70th SNOW 生徒を想う心
教師としての矜持。
それを見せれるのは佐久間先生しかおらん。
「『蝿霧』」。
数千匹はいるだろう、蝿崎が解き放った蝿の群れが2人に襲いかかる。
「『絶対零度』!!」
氷華は両手を突き出して、マイナス200℃を下回る冷気を蝿に向かって解き放った。
蝿の群れは一瞬にして凍る。
佐久間はすかさず固まって蝿を「紅蓮炎」で焼き払った。
「雪女魔導結界……『逆さ氷柱』!!!」
氷華が地面に手を置くと、地面から氷柱が生えてきて、蝿崎に襲いかかった。
「『腐敗の右』。」
蝿崎は冷静に右手を氷柱に向かって翳すが、佐久間がこの隙を見逃さない。
「結界術……『雷光槍・二連』。」
2枚の札を解き放ち、それは蝿崎に襲いかかった。
蝿崎は「分離」しきれないと判断し、左サイドステップで避ける。
が、氷華はこれを狙っていた。
「天叢雲剣剣術……『神速一閃』!」
光速の剣技が解き放たれた。
蝿崎もなんとか致命傷を回避したが、傷口が焼けるような痛みを負った。
(なんだ? あの剣は。「腐食の鎧」を使ったのに、防ぎきれていないだと……?)
続いて佐久間の攻撃が飛んでくる。
「結界術『鎌鼬』。」
風刃が飛んでくる。
蝿崎は「蝿の盾」で対応するが、そうすれば氷華の攻撃が飛んでくる。
「二刀流剣術・『神楽の舞』!!」
氷華が連続で蝿崎に斬りつけていき、蝿崎も致命傷は回避しているが、ダメージは避けられない。
何せ「分離」が使えないほど速い上、佐久間の攻撃の対応に追われている状態。
いくら強敵の蝿崎でも、対処はしきれなかった。
(やっぱり2人だと対処しきれないの刻印術だ……! 今なら触れる!)
蝿崎のガードを氷の剣で跳ね上げ、氷を纏った脚からの右回し蹴りを放った。
蝿崎は後退りさせられた。
「『枯山水』。」
続け様に佐久間は、意思を持った木を生成し、蝿崎を襲わせた。
蝿崎は「腐食の鎧」でこれを凌いだ。
「……まさか俺が遅れを取るなんてな……」
猛攻を凌ぎ切った蝿崎が土埃を払いながら呟いた。
「……陰陽師の男……なかなかやるじゃないか。」
蝿崎は佐久間を褒め称える。
静かに、客観的に評して。
「……何故……雪宮氷華のために戦う。それこそ無駄死にではないのか?」
これを聞いた佐久間は、口角を上げる。
「何故彼女のために戦う、って聞いたね? 蝿崎。……簡単な話だよ。『僕の教え子』だからさ。」
そういって、佐久間は「不知火」を放った。
蝿崎は凌ぎながら佐久間に尚も問いかけた。
「たかが一生徒のために……貴様は何故戦うんだ?」
蝿崎には理解が出来なかった。
たとえ氷華が大事だったとしても、そこまで彼女を守る理由がないはずなのだから。
見捨てるべきなら見捨てればいい、と考えていたからこそだ。
「……生徒を見捨てるバカ教師が……何処に居るって言うんだい?」
「……たとえお前が死んでも、か。教師陰陽師。」
「フッ……面白い問いかけだね。蝿崎……死ぬことを計算に入れるバカが何処にいるんだい? たとえ結果論で……この身が朽ちてしまったとしてもね。」
「……理解出来んな。自らのエゴで……生徒のことを放棄していてもおかしくはないのに。」
「……まだわからないかい? ……教える側も『勉強』なんだよ。生きている間……毎日ずっと、ね。」
術と術のぶつかり合いの中で2人が言論をぶつけ合う中で、佐久間の「教師としての矜持」が垣間見得ていた。
氷華も佐久間を雪女の術で援護するが、蝿崎も2人の連携に慣れてきたのか、徐々に対処されていく。
蝿崎はたまらず距離を取った。
(……何故あの剣は腐らない……? 俺の術で腐らせられないものがあるとはな……だがさっきから目障りなのが……援軍に来た佐久間だ。……コイツは早急に殺すしかないな。)
「『大蝿霧』!!!」
怒り任せに、数万からなる蝿の群れを上空に、2人に向かって解き放った。
「先生、ここは私が。」
氷華はそう言って、天叢雲剣の面を蝿の群れに向けた。
「『破邪の光』!!」
天叢雲剣から、青白い光が放たれる。
それを浴びた蝿は、動きが止まり、一斉に散らばった。
天叢雲剣は、あらゆる邪悪なる気を打ち祓い、妖力を無効化する、という特性を持っていた。
蝿崎の攻撃で腐らなかったのはそのためだ。
「合技……『霧氷風刃』!!」
天叢雲剣を振るい、3センチあるかないかの蝿の群れを、無数の飛ぶ斬撃で真っ二つに割った。
だが。
視界が晴れた先に蝿崎がいなかった。
後ろにいた筈の佐久間もいない。
「え……!? 先生は……!?」
氷華は一瞬の出来事、神隠しのような出来事に動揺を隠せず、キョロキョロと辺りを探した。
胸騒ぎがした。
氷華が左側を見ると、2人はそこにいた。
が、なぜか遠い。
2人は術を撃ち合っていたが、両者当たっていない。
氷華も援護に行こうとしたが、邪眼の制限時間が迫っていた。
身体も重くなる。
(お願い……動いて、私の身体……!! 早く……先生を助けないと……!!)
氷華は歯を食いしばり、左足を踏み出す。
だが、走り出した瞬間だった。
氷華は衝撃の光景を目撃してしまったのだった。
時は同じくして、佐久間と蝿崎サイド。
2人とも術を撃ち合っていたのだが、2人とも紙一重で躱していた。
が、事態が動いたのはこの後すぐ、丁度遠くにいる氷華が左足で地面を蹴った瞬間だった。
「……貴様は目障りすぎる。……俺たちの計画を邪魔するな。」
そう呟き、蝿崎は右拳を握る。
「ここで死ね。『腐食拳』。」
蝿崎は「刻印術」を拳に纏い、大きく踏み込んで右ボディーストレートを放った。
佐久間は一瞬、隙を突かれた格好になった。
蝿崎の拳が、佐久間の腹と臓腑を貫いたのだった。
氷華がそれを見たのは、あまりにも一瞬のことで、数秒思考がストップするほどだった。
佐久間が吐血した。
「せ…………」
氷華の佐久間を呼ぶ声が震える。
「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!」
……氷華の悲痛の絶叫だけが、公園内に響いていたのだった。
佐久間先生、地味に人気あったんで……佐久間先生推しの方、申し訳ないです。
けれど、構想段階でこれは考えていたことです。
次回、蝿崎戦は終幕です。
佐久間先生、その渋い生き様及び死に様を見せたいと思います。




