66th SNOW 雪羽が遺したもの
今回は今章や、次章に向けてのカギを握っている回です。
氷華が久々にΣに顔を出します。
トピックスは、「雪女」についてです。
雪女とは
・雪や氷に関するものを操る妖怪、寿命は長い者だと160年は生きる。
・人間の男と結ばれるので、全員が半妖。つまり、人間社会に普通に適応できる妖怪。
・霊力や妖力が非常に高く、「半妖界最強」と謳われる
・99%女性しか産まれない。1%は男だが、一族間でも雪女の血を引く男の名前は知らない、会えたらラッキー。
・赤き目「邪眼」を所有することが強さの指標。
・性格も人間らしさ満載だが、共通して言えるのは好きな人に対してはかなり嫉妬深い、特に若い雪女は。
・肌は総じて乳白色だが、ごく稀に黒い肌で産まれてくることも。
・メラニン色素が無ければ無いほど強い。
・つまり、アルビノ雪女は最強、御当主様最強。
・他にもいろいろ伏線だったり設定だったりはあるんですが、それは第七章で回収します。
デートから帰ってきて、自宅で入浴を終えた氷華に、霜乃が声をかけた。
「氷華、明日『Σ』行くんでしょ?」
「え? う、うん。」
氷華は何のことかさっぱり分からず、とりあえず返事だけした。
「これ、冷奈さんから預かったやつ。私も中身は知らないから、あとでパソコンで確認しといて。」
といって、霜乃はUSBメモリを渡した。
「? あ、ありがと。」
氷華は疑問に思いながら自分の部屋へ戻っていった。
自分のパソコンに繋いでフォルダをクリックする。
その動画の内容とは。
「え……」
氷華が絶句する内容だった。
そして氷華は何故か中学時代の卒業アルバムのページを開いていったのだった。
翌日。
氷華は「Σ」本部へ来ていた。
着いて開口一番、氷華は文化祭前の自分の行動を謝罪した。
「皆さん、お騒がせしてすみませんでした。私はもう大丈夫です。」
北川は咎める気はなかった。
が、説明は求める。
「まあ、いいけどよ……何があったんだ、この数週間。」
「ハイ……実は……」
氷華は事の顛末を話した。
雪羽が一族を裏切った事で、雪女当主・霜之関雪子から命令を受け、氷華が雪羽を殺害した事、そして霰塚家は雪子によって粛清された事を全員に話した。
これを聞いたメンバーはというと。
「……分かった。お前の事情は。御家騒動のことに首を突っ込む気はねえよ。とりあえず、雪羽と霰塚家は全員死んだ、ってことでいいんだな?」
「……ええ。」
「……となると……残りは蝿崎と……羅生門桃悦か。」
怜緒樹が呟いた。
馬仙院教には、この最強格の二人が残っている。
と、ここで氷華が手を挙げた。
「あの……よろしいですか?」
「うん、氷華ちゃん、どうかした?」
これに文香が反応した。
「実は……USBを預かってて、私の姉から……」
と、USBを取り出す。
重大なカギを握っているUSBを。
「……佐久間、パソコンはあるか?」
「ああ、あるよ。ちょいと待っててよ……?」
といい、佐久間はパソコンを起動し、準備を整えた。
その後でUSBを挿し込み、フォルダをクリックし、全員で動画を確認した。
映像の主は雪羽だった。
「オイオイ……なんで雪羽がいんだよ……死んだんじゃなかったのか?」
まさかの展開に北川が驚きの表情を浮かべていた。
「……どうやら私と会う前に遺していたもののようです。」
氷華が冷静に釈明する。
氷華が驚いた内容だというので、全員固唾を飲んで視聴することにした。
『私は霰塚雪羽です……一族の皆様、及び私と同じ10傑のみんな、特に氷華さんにこれが開かれる頃には届いていることを……私はもう、その時にはこの世にはいないだろうと思います……』
自らの死を予言していたのだろうか、雪羽の顔に覇気は無い。
『……私は新興宗教《馬仙院教》の手に落ちました。……突如襲撃してきた《羅生門桃悦》の手によって、です……私でも……手も足も出なかった強敵でした……くれぐれもお気をつけください。ですが……幹部として生活している間に、私は情報を得ました。……桃悦の情報を……』
「雪羽さんで何もできなかった相手の……情報……!?」
冬菜が眉間に皺を寄せて聞いている。
動画内の雪羽は続ける。
『教祖……羅生門桃悦は……『刻印者』の上位互換『簒奪者』の能力者……状況に応じて体内に取り込んだ妖怪の能力を発動する、そんな能力です。……更に言えば……内臓逆位であり、右腕側に心臓がある男です。事実左胸に剣を突き立てることができましたが、彼はピンピンしていた……そして驚くべきは……その男は、桃悦は……私と同じ17歳であるということに……』
と、ここで動画内で桃悦の盗み撮った顔写真を公開する。
童顔で銀色の短髪の出立ちながら、目が何処か狂気的で、闇があった。
「これが……羅生門桃悦……!!」
晴夜が苦い顔になる。
氷華を精神崩壊させかけた張本人の顔を目撃し、倒すべき相手と再認識したのだった。
『……氷華さん、貴女に伝えておきます……桃悦の狙いは貴女よ、氷華さん。……因果関係は詳しいことは分からない、でも偶然……彼の中学の時の卒業アルバムの中に……貴女がいたの。そして教科書に書いてあった名前と照合して……桃悦の本名を特定したのです。……羅生門桃悦の本名は……』
全員、固唾を飲む。
雪羽は、ノートにメモした字体と共に、こう言った。
『《石田晃良》。……彼には注意なさい、氷華さん。そして調べたところ……貴女と同じ高校に通っているわ。』
動画はここで終わった。
全員苦い顔になる。
氷華はここで卒業アルバムを取り出し、顔写真を指差す。
羅生門桃悦もとい「石田晃良」を。
「……彼は小学校と中学校で同じクラスだったんです。けれど……石田くんが私と晴夜が通っている高校に入っていることは知らなかったんです……。」
「チッ……よりにもよって氷華ちゃんの身近かよ……灯台下暗しってやつじゃねえか……」
相澤は特に苦虫を噛み潰した顔になっていた。
「待て、氷華……なんで石田が……桃悦が同じ高校だった、だなんて今の今まで知らなかった?」
「……まず、彼の名前がそこらへんにいるような普通の名前でありすぎたこと……もう一つは……彼は中学時代にイジメを受けていて、年明けから学校に来ていなかった。これが私が知らなかった理由です。」
質問者の北川が納得のいった表情を浮かべた。
しかし卒業アルバムの写真と、雪羽が提示した顔写真とがあまりにも違いすぎている。
ペタッとした髪に眼鏡の中学時代と、銀髪でツンとした短髪の現在では印象がガラッと変わりすぎているくらいに変わっているからだ。
「……副隊長……どうしますか、彼を。」
怜緒樹に問いかけられた佐久間が、少し首を捻る。
そしてこう結論を下した。
「……確かに僕の学校の生徒ではある、だけど新興宗教に入っているからと言って……彼を問い詰めても意味はないからねえ。だから泳がせる。来月にはウチの学校は、修学旅行があるんだ。捕まえるには沖縄が一番良い。部下も居なくなるからね。」
慎重に行くべき、という結論を下した佐久間。
では、まずやるべき事は。
蝿崎だった。
蝿崎を捕まえて吐かせるしかないのだが……強敵との情報があるのでそう簡単にはいかない。
「……私が先鋒隊になって……蝿崎と交戦します。」
氷華が悩んでいる一行にそう宣言した。
「いいのかい? 何の能力か分からないんだよ? 蝿崎は。桃悦は情報を得ているからアレだけど。」
晴夜は止めようとしたが、氷華は首を横に振る。
「私が時間を稼いで体力を消耗させて捕らえる、こういう作戦です。表向きは、ですけど。ただ……私もどうなるかは分からないし、最悪死ぬかもしれない。けれど決めたんです。一族の絆を絶ったあの男を必ず倒すって。」
氷華の目は真っ直ぐに、しかし熱い闘志が沸き立っていた。
「分かった。氷華、もし必要なら援軍を行かせる。全員本部で待機だ、いいな?」
全員これに頷いた。
会議を終えた後、氷華は、あのー……と声を出す。
「ん? 氷華、どうした?」
この声を聞いた怜緒樹が氷華に聞く。
「あのー……言い忘れてたんですけど……」
といい、こう続けた。
「私……実は……」
固唾を飲むメンバー。
「晴夜と今……お付き合いさせてもらってます。」
氷華は頬を赤らめながら、指で付き合ってるジェスチャーをした。
一瞬の沈黙が上がったところ、全員一様に、
「「「「「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」」」」」
と、声を上げたのだった。
ただ一人、佐久間だけは大爆笑だったのだが。
その後、氷華と晴夜は色々質問攻めに遭いながら今回の会議は幕を下ろしたのだった。
次回、蝿崎と接触。
事態は色々動きますよ。




