58th SNOW 死闘の果て
邪眼第二段階VS閻魔眼の死闘になります。
衝撃のラストにしようと思いますんで、ガッツリ書きたいと思います。
邪眼第二段階「黒薔薇」を解放した氷華。
身体能力の飛躍的な強化と同時に、妖力を過剰なまでに消費するため、本来は使い勝手が悪い能力なのだが、氷華は牛鬼戦後にこの眼を強化してきたのだ。
より確実に、強力な妖怪を斃せるように。
しかし、実戦で使うのは氷華も初めてで、どうなるかは自分でも予想できなかった。
本気モードの雪羽を倒すにはこれしかないだろうと踏んだ結果、解放に踏み切ったのだから覚悟は生半可なものではない。
雪羽は剣を握り、固唾を飲む。
今まで氷華のことを最もよく見てきた雪羽ですら、この形態の氷華は未知数すぎたからだ。
どこから、どんな技で来るのか……集中力を高めていく。
氷華も剣を構えている。
氷華が素早い踏み込みで雪羽に突撃する。
雪羽の視界から一瞬で消えた氷華。
突然の出来事に戸惑う雪羽。
氷華は雪羽の後ろに瞬く間にいた。
ワープしたわけではない、氷華のこの眼を発動した時のスピードの高さを物語っている。
雪羽が気がつくと、腹部に血が滲んでいる。
「雪女剣術居合の型……『冥土の吹雪』。」
鞘に収めた瞬間、雪羽の傷口から血が噴き出した。
「なっ……!」(速い……! 見えなかった! これが邪眼第二段階……!! なんて強さなの!!)
一方の斬った氷華はというと、手応えはなかったようだった。
(チッ……浅かったか……やっぱりまだ制御しきれてないな、この眼は……)
氷華は剣を抜き、雪羽に向かって連続で斬りかかった。
雪羽は自分のスピードでは対抗できないと悟り、召喚獣を次々と生成して応戦した。
しかし、幾ら召喚獣を生成しても、氷華のスピードはこれを悉く潰していった。
追い詰められた雪羽は、凍結系の術式を繰り出していく。
「雪女凍結術気候変動式……『海王星の環境』!!」
液体窒素を作り出し、空気中に多少は含まれているメタンガスを氷にして生成し、それを竜巻状にして敵に撃ち飛ばす強力な術だった。
氷華は竜巻から逃げるように走り回り、躱していく。
雪羽は立て続けに電磁砲を生成する。
マイナスイオンを凍らせて撃ち出す。
「氷の電磁砲!」
光速のレーザーが氷華に襲いかかる。
氷華は咄嗟に盾を生成してこれを防いだ。
しかし、同時に竜巻も迫ってくる。
躱しきれない、そう判断し、雪羽に向かって突進する。
剣を使って連撃を叩き込み、雪羽をジリジリと下がらせていった。
だが雪羽も目が慣れたのか、氷華の攻撃にも対応していく。
防戦一方なのには変わりはないが、氷華の攻撃を捌いていくようになった。
しかし、そうこうしている間にも眼の時間制限がお互いに迫る。
負けられない_____そう思う二人の気持ちが剣に伝わって共鳴する。
鍔迫り合いになり、お互いの剣で二人は押し合っていく。
唸り声を挙げながら、フルパワーで。
お互いに剣を払うと同時に、二人の剣が折れたのだった。
結果痛み分けとなり、二人は距離を置いた。
お互いの眼の残り時間は、およそ3分。
ここで決めるしかない_____二人はそう感じた。
二人は再度、ドライアイスの剣を生成し、構えた。
二人の額には、激闘の証となる汗が滲み出ている。
泣いても笑っても、これが最後の一撃となると踏み、二人は剣に全集中を注ぎ込んだ。
「これで終わりにしよう、雪羽ちゃん……」
「御託は要らないわ……剣で語りなさい。」
二人は一言、言葉を交わし、そして。
二人は同時に踏み込んだ。
「「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!」」
突きの態勢に入る二人。
あと数十センチ……あと数センチ……と、コンマ1秒が長く映る。
と、ここで雪羽の脳裏に、氷華と交わした言葉がよぎってきた。
《思い出すのはいい思い出ばっかりだよ、雪羽ちゃんと過ごした時間はさ?》
こんな、一族を裏切った自分に対して掛けてくれた言葉に、雪羽の剣に僅かながらの躊躇いが生まれた。
心臓を突こうとした雪羽の剣は、氷華の脇腹を掠る。
だが氷華の剣はというと。
躊躇いが一切なかった。
心臓部に入ってくる切っ先。
そして。
ドブシャッッッ!!!
氷華の剣は、雪羽の心臓を深々と貫いた。
氷華の脇腹を掠ったのと、雪羽の心臓を貫いたタイミングはほぼ同時。
雪羽は吐血する。
雪羽は膝を突き、氷華にもたれかかるように体を預けた。
氷華は気づいてしまった。
本当に、雪羽を刺したのだと。
動揺が襲いかかる。
そして。
ストン、と膝から崩れ落ちた。
邪眼を解く。
雪羽はポツリと一言漏らした。
「私の………負け、ですわ………」
「あ……ああ……………」
潔く敗北を受け入れた雪羽と、頭が真っ白になった氷華。
決着は着いた。
だが、この後語られる雪羽の独白が、氷華を更なる絶望へと陥れることになるのだった。
雪羽を遂に刺してしまった氷華。
雪羽の独白とは何か……そして氷華の精神状態は大丈夫なのか……
次回描くのは、雪女の死に様です。
皆さんご安心ください、氷華は逮捕されません。そこは主人公補正です。
次回もお楽しみくださいませ。
……といっても楽しめないか、この回の後は。




