5th SNOW 氷華、『Σ』に入隊する
今回は、タイトル通りの展開になります。まあ、アレを見せて、入らないわけにはいかないですからねwwこれで入らなかったら、何のための組織なんだよ!って話ですww
時系列的に言えば、中間試験の13日前なので、何やってんだって感じですけどね、普通の高校生が。まあ、この後二話はΣ入隊と、Σメンバー紹介回になるかなって思いますので、そんな腹積りでお楽しみいただけると幸いかな、と思います。
氷華は、霜乃に帰りは遅くなると事前に連絡済みだったので、問題はなかったのだが、問題は晴夜の方だ。
任務のため、と「Σ」に直々に呼ばれたのだから、家族構成は気になるところではあった。
家族はどうしてるのか、とか、そういうのも気になる。
帰路についているところに、氷華の方から、晴夜にそのことを聞いてみた。
「あのー……さ、陽陰君って、家族はどうしてるの?」
「うーん、、まあ、一人暮らしだからね。今は。勿論父さんの名義でマンションは借りてるし、生活費も僕の口座に振り込まれてるから、生活は特に問題はないんだよ。」
「一人暮らしかー……お父さんとか、お母さんはどうしてるの?」
両親のことを知りたかった氷華だが、晴夜から返ってきた答えは衝撃的なものだった。
「……僕は、母さんの顔を知らないんだ。物心ついた時から、、父さんと二人で生活してた。一人前の陰陽師に育てるんだ、っていって、学校から帰ってきたら、修行修行の連続でさ……今時陰陽師なんて、古いのになって思いながらやってたら、中学の時にはじめての任務で成果を残した。それで東京の支部の方に話が来たんだ。僕は地元の京都が好きだったし、乗り気じゃなかったけど……皮肉なのか何なのか、最強の半妖の血族と出会えた。それは運命だと思ってるし、僕は雪宮さんに会えてよかったと思ってるよ。」
「て、、照れくさいなー、なんか……。私の方は、3人姉妹で、、お母さんは銀座の料亭で働いてるし、お父さんは今、名古屋の方で単身赴任してるから、お盆とか、お正月の間に帰ってくる、って感じだなー。」
氷華の家族構成を聞いた晴夜は、少し、羨ましそうな顔をしていた。
ちゃんと帰るべき家庭がある。
晴夜は友と遊んだ記憶がある方ではなかったので、家に帰れば修行の連続……。
しかも、頼るのは自分だけ、という、殻に閉じこもった生活だったのか、そんな生活に憧れているフシは、晴夜の中にはあった。
「あ、、ご、ごめんね、なんか、家族自慢みたいになっちゃって…」
晴夜の反応に焦った氷華は晴夜に気を遣ってしまっていた。
しかし、晴夜は気にするそぶりは見せてなかった。
「ああ、うん、こっちこそ、ちゃんとした反応、返せなくてごめん。普通は驚嘆するべきところなのに。正直、羨ましくってさ。さっきも言った通り、京都にいた時は家に帰るのが嫌だったのは事実だよ。いくら後継ぎとはいえど、、親に強制されてやってるもんだからさ。Σに入ってるのも、陰陽師をやってるのも。……雪宮さんはいいよ。自分で…選べる権利があるんだから。僕と違って。」
突然自虐的に話しだした晴夜だったが、今度は逆に、先程の土蜘蛛との戦闘で見せた、『邪眼』についてを氷華に聞いてきた。
「雪宮さん、一つ聞きたいんだけど、あの『眼』は、戦闘中、どんな効果があるの?」
「陽陰君、そこ聞いちゃうんだ。雪女の一族の秘匿事項なんだけどなー。まあ、、秘密にしてくれるなら、、話してもいいけど。」
「とにかく僕は、君だけの秘密を知りたい。同じ、境遇の者として。勿論、口外はしないよ。」
「うーん、まあわかった。……あの『眼』は、雪女の妖力を高めるには、絶対欠かせないものなんだ。ただ、効力は1時間しか持たないから、それ以降『邪眼』を使うと、寿命を代償に限界突破をすることになる。年齢を重ねれば重ねるほど、邪眼はコントロールしやすくなる。私はまだ、コントロールできてる方だよ。他の親戚とかは、私と同じくらいの歳の子はまだ制御しきれてない方が圧倒的に多い。……それに、私のお姉ちゃんみたいに、右眼を事故や怪我で奪われると、妖力が徐々に減少して、弱い雪女になる。……雪女の右眼には、他の妖が狙うほど、魔力が詰まってる。実際お姉ちゃんは、妖に、三年前に襲われて、大怪我して右眼を奪われて食われた。今は大学に通ってるけど、私や、妹の氷衣露を心配してるから、家にいて家事をしてる時間の方が多いんだ。自分と、同じ目に遭わせたくないって気持ちの現れっていうのは伝わってくる。」
「……まあ、君のお姉さんの件は、隊長に聞くとして……。とにかく、お姉さんは、君を危険な目に遭わせたくない、そういうことだね? そして、雪女は右眼を失ってはいけない、と。」
「そう、、だね。だから、『Σ』の件はもう少し考えさせて。スカウトしてくれたことは嬉しいけど、家族の意向もあるし。私は本音は、『人間』として、生きたいから。」
「…そっか。でも、いつでも待つからさ。僕らは。雪宮さんのことは、隊長にも話は通してあるから、入りたかったら、隊長の携帯番号を渡すから、そこにかけて。あとでメールで送るよ。」
「…わかった。ありがとね、今日は。」
「いや、、まあ。こっちもありがとう。少し、気が楽になった。」
そうして、二人は、駅で別れた。
家に帰った氷華は、浴槽で考え事をしていた。
「Σ」に入るべきか、でも、梢たちはどうなるのか。氷華にとって、人生で初めてできた友人達だ。
自らのエゴで失うわけにもいかない。
本音は「Σ」に入りたい、けれど、白状して、友を失うことも考慮しないといけなかった。
唸り声を上げて悩む氷華だったが、すると、氷衣露の甲高い声が聞こえてきた。
「氷華ねーちゃん、まだー?」
「ああ、ごめん氷衣露、今あがる。」
「まーた考え事してたんでしょ、ねーちゃん。ねーちゃん考えすぎなんだって! もっとシンプルに行こうよ、ってアタシ何回も言ってんじゃん!」
「うっ……」
妹の正論には言葉が出なかった。
そして、浴槽から出て、自分の部屋に戻っていった。
そして、月曜日の放課後。
河川敷で、氷華は、晴夜から渡された電話番号に電話をかけてみた。
「もしもし」、と男性の、低い野太い声が聞こえる。
「もしもし、雪宮氷華というんですけども。」と、氷華も応対する。
「君が雪宮さん、か。晴夜から話は聞いてるよ。それで、要件は?」
「あの、、私、『Σ』に入ろうと思って、連絡をさせていただいたんですけど、、」
「そっかあ。ああ、申し遅れました。俺は『Σ』の隊長を務めてる、『北川和朋』といいます。…わかりました。君の入隊を許可します。それじゃあ、手続きとかしたいから、指定された場所に来て欲しい。ショートメールを通してマップを送るから、それを参考にたどり着いてください。」
「はい……わかりました。それでは、また後ほど。これにて失礼します。」
電話を切った氷華は、ショートメールに自分宛に届いたメッセージを確認する。
開いた瞬間に、北川からメールが届いた。どうやら、青梅市のマンション4階に、本拠地があるとのことだ。
「結構遠いなあ……まあ、山手線で行けば、割とすぐに着くか……。とりあえず青梅まで行ってみるか。」
そして、なんだかんだで1時間半後。
迷いながらも指定された場所に到着した氷華は、そのドアのインターホンを押した。
ドアを開けて応対したのは、文香だった。
「あれ、氷華ちゃん、入ることにしたんだ!」
「え、ええ。文香さんがいるってことは、、間違いなさそうですね。」
二人は笑っていた。
くすくすと、笑っている。
「まあ、氷華ちゃん、立ち話もなんだから、上がって。お茶くらい出すよ。」
「ありがとうございます。それじゃ、お邪魔します。」
居間に上がった氷華は、筋肉質の無精髭の男と、一際小柄で目つきの鋭い、ボーイッシュな女性の二人とあった。
そして、筋肉質の無精髭男の北川は開口した。
「良くきたね。雪宮さん。ようこそ、『Σ』へ。」
そして、テーブルまで案内され、氷華は椅子に座った。
最初、結構グダグダ会話ですけど、話の流れを上手く繋げるためにこんな形をとりました。次回、妖魔の能力者の新名称が出てきます。ネタバレはしたくないので、ここではその名前を言いませんが、要は、ただの人間がなんらかの影響で妖魔の力を人為的に持ってしまった人をそのように言います。
次回から前書きでキャラ紹介していきますので、よろしくお願いします。