40th SNOW 月光の下に輝く雪女・雪宮氷華
やっと牛鬼との決着&終章です……
ホントマジで長かったです……30話って……前回話した通り、最後にこの後の伏線が出てきます。
牛鬼の舌を切り裂き、完全に牛鬼を圧倒していた氷華と天叢雲剣。
出血した右手の傷口を凍らせて血を堰き止める。
時刻は夜7時30分。
月も昇るころだ。
月光の下に青い剣と共に怪しい輝きを、氷華は放っていたのだった。
《小癪な……我を圧倒したのはあの方以来か……》
(あの方……? 誰のこと……? まさか牛鬼の裏に誰かいるってこと??)
氷華が牛鬼の意味深な言葉に疑問がよぎるが、天叢雲剣が氷華に正気に戻るよう声を掛ける。
〈おい氷華。戦に集中せい。ここまで来て水泡に帰させる気か?〉
「うん……ごめん、叢雲、大丈夫。」
氷華は冷静に戻り、天叢雲剣を構えた。
そして、力を込め、技を繰り出す。
「天叢雲剣剣術……『天翔ける竜の蹄』!!」
幻惑するステップワークで牛鬼の視界から一瞬で消え、胴体の上に飛び上がった。
そして三角州状に牛鬼の胴体を切り裂いた。
蜘蛛態の牛鬼も怜緒樹をも圧倒するスピードを誇るのは周知の事実ではあるが、今の氷華は誰の目にも追えない。
晴夜はこの光景を見て驚愕している。
「凄い………邪眼を限界突破させるだけでここまであのタフな牛鬼を圧倒するなんて……!!」
怜緒樹も同情する。
「ああ……あの剣の補正もあるかもしれねえが……あそこまで速い氷華は初めて見た……」
そしてそんな二人の呟きを他所に氷華は技を次々と繰り出していく。
「魔導・虹冷気付与……合剣術『月光の虹剣』!!」
からの……といい、左手の人差し指、中指、薬指の三本指を立てて技を繰り出す。
「雪女砲術『虹冷気大砲』!!!!」
牛鬼の関節の付け根に放ち、牛鬼の動きが完全に止まった。
しかし、牛鬼も黙っているわけではない。着地と同時にヘッドバットで氷華を跳ね上げた。
氷華は剣で受け止めてダメージを軽減する。
ただ、牛鬼の反撃もここまでだった。
氷華は再び牛鬼の頭上に跳び上がり、右腕だけで剣を持ち、左肩に天叢雲剣を添えた。
「雪女剣術……天叢雲剣剣術合技……『三日月の絆』!!!」
氷華は三日月状の斬撃を飛ばし、牛鬼の頸を一瞬で一刀両断した。
こうして牛鬼との戦いは終幕を迎えたのだった。
牛鬼の胴体の上に立ち、氷華は立ち尽くしていた。
それはまるで、月光の上に立った歴戦の戦士のようだった。
「雪宮さん!!」
晴夜が声を掛けた。
氷華はこれに何も言わずに飛び降りる。
「氷華さん! 今のは……!?」
「……わからない……でも……自信以外の感情で……何も湧かなかった……」
所々傷だらけ、しかも邪眼を限界突破してまで、さらに天叢雲剣の超常的な能力を駆使したことで氷華は疲労の色を隠せていなかった。
普通なら意識が飛んでいてもおかしくはない。
怜緒樹は氷華を抱きかかえた。
「……お疲れさん、氷華。……よかったな……勝てて……」
「……怜緒樹さん……疲れたんで……寝ても、いい……ですか……?」
そう言いながら、氷華は怜緒樹に寄りかかった。
「ハア………全く、無茶しやがって……ああ、あと冬菜、もう無茶すんじゃねえぞ? ……隊長に免じて許すけどよ、今回は。」
「……ごめんなさい……氷華さんが心配で……」
俯く冬菜を晴夜は優しく労った。
「正直……君が助けに来なかったら雪宮さんのアレだけじゃ多分倒しきれなかったと思う。……助かったよ、ありがとう。」
戦いの気分が抜けて、超美形の男性に声を掛けられれば、思春期真っ只中の冬菜は紅潮することだし、実際していた。
「い、いえ……そんな……お恥ずかしい、限りです……」
「……じゃあ二人とも……文香さん呼んで帰るか。あと、冬菜は気をつけて帰れよ。」
「ハイ……! 本当に、ありがとうございました!!」
そういって、冬菜はお台場を後にした。
「さて……帰るか、晴夜。」
「ええ。帰りましょう。」
文香に連絡を取って、晴夜と怜緒樹、そして眠りこくった氷華は文香の車に乗って「Σ」本部へと帰還したのだった。
氷華たちが帰還した後のお台場では。
牛鬼の遺骸を見た謎の男達が二人いた。
「……へえ……まさか牛鬼が斃されるなんてね……」
季節外れの長い黒ローブを身に纏った少し小柄な男がそう呟いた。
ワイシャツに黒いスーツを身に纏った長身の男がその男に声を掛ける。
「……あの雪女はいかが致しましょうか。……いずれ教祖様とぶつかるやもしれませんが……」
教祖様、と呼ばれた小柄な男が首を横に振る。
「大丈夫……いずれ僕が奪うから。」
そう言って、牛鬼の前に右手を突き出した。
そしてその右手に牛鬼の身体が吸い込まれていく。
牛鬼は跡形もなく、その男の中に吸収されて消えてしまったのだった。
「所詮牛鬼もその程度だったってことさ……行くぞ、ハエザキ……次なる手はもう用意してある。」
「ハッ。」
ハエザキ、と呼ばれた長身の男と共に黒ローブの男はお台場を後にした。
そして、球状のキャンディを一噛みし、こう呟いた。
「……君は僕が必ず奪うよ……雪宮氷華さん。」
不穏な空気のまま、また更なる戦いが氷華を待ち受けようとしていたのだった。
一方、Σ本部に帰還した晴夜達は、疲れて一日中眠りこくっていたのだった。
不穏な動きを、いざ知らずに。
はー……やっと終わった……
マジで脳みそが疲れた……
さて、次回から新章です。
氷華の体育祭、そしてその裏で氷華を巡る不穏な動きが起こります。
日常とシリアスの両方が入り混じったカオスな展開になりますので、お楽しみにしていてください。




