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37th SNOW みんなを守るために、勝つために

あとこの回含めて牛鬼戦は4話で終わります。

最後まで、頑張りたいと思います。

さて、ここで前回後書きで話した通り、『邪眼』の解説をしていこうと思います。


「邪眼」とは


簡単に言ってしまえば、雪女の妖力を高めるために使用されるもの。

年齢が高ければ高いほどコントロールをしやすくなる。

解除は自由だが、使える効力は1時間までで、それ以降は寿命年数を引き換えに使用しなければならない。

雪女の平均寿命は160年なので多少は問題なし。(尚、雪子のようにアルビノティーマイナスで産まれてきた雪女は常時使える。)

右目の虹彩を赤くすることで使用できる。

また、雪女の妖力の源でもあるので、失明すれば術を扱えたとしても粗悪なものになる。

「メラニン色素含有量の少なさ」が邪眼に密接に関係しているので、冷奈のようなメラニズム雪女は使用不可能。

 牛鬼との戦いが熾烈なものになってきている。


しかし、ダメージは与えられているはずなのに、牛鬼が倒れる気配は微塵もない。


しかも氷華の邪眼の効力がもう、4分しか残されていない。


とはいえ、氷華の寿命数年を代償にして牛鬼を倒すかと訊かれれば、そういうわけにもいかなかった。


邪眼の効力が残り少ない氷華は最後の力を振り絞った。


氷の刀を構え、一直線に走り出した。


冬菜も走り出す。


晴夜は2人に「春雷直下」を氷華の刀と冬菜の脚にブーストさせた。


そして2人は同時に技を繰り出す。


「雷鳴合刀……『霹靂霜斬』!!」


「魔導雷脚……!! 『雷鳴(らいめい)氷点脚(ひょうてんきゃく)』!!」


牛鬼の身体にスパークが弾け飛んだ。


しかし、この程度で怯むほど牛鬼はヤワではない。


更に追撃を2人は叩き込む。


氷結雷神(ひょうけつらいじん)(ざん)!」


連撃一閃(れんげきいっせん)・『雷光霰蹴(らいこうせんしゅう)』!!」


氷華が袈裟斬り、冬菜は空中で連続キックを繰り出した。


この隙を見逃さない怜緒樹。


「刻印術……『鵺暗唱(ぬえのあんしょう)虎空拳(こくうけん)』!」


怜緒樹のいつものとは違う、黒雲を使った拳の術を怜緒樹の動きに合わせて繰り出した。


意表を突かれた牛鬼に今度はカイメイジュウの拳が襲いかかった。


雷鳴を纏った右ストレートを牛鬼の顔面に放った。


まともに喰らい、後ずさる牛鬼。


「結界術『迦楼羅炎』!」


晴夜も術で応戦し、反撃の隙を作らせない。


押しているのは明白だったが、それでも牛鬼の倒れる気配がないに等しかった。


氷華、冬菜は一歩も引くことなくどんどん攻撃を繰り出していったが、ついにその時間が訪れてしまった。



 「霧氷神剣・雷の型!」


この技を出した直後、氷華はガクッと膝を付いた。


右目から赤みが消えていた。


肩で息をし、疲労の色を隠せていない。


邪眼の効力限界を超えたようで、時間切れだった。


これにより、創造も自動的に解除された。


「氷華さん!?」


冬菜が氷華に声を掛けた。


邪眼の活動限界ということは察してはいた冬菜だったが、冬菜は勝つには氷華の力が要ると思っていたのですがそう掛けた。


「ご……ごめん……こんな時に……()()()()だなんて……」


氷華は力を振り絞って冬菜の問いかけに答えた。


牛鬼が氷華の姿を目にして左足を蹴り上げる。


しかし、これを怜緒樹が止めた。


「氷華! ここはアタシらに任せろ! お前は体力を回復させるのに専念しろ!」


「は……ハイ……!」


しかし、立ち上がろうとしても疲労で体がフラつく。


これを見た晴夜は一反木綿に指示を送る。


「雪宮さんを一回遠くまで頼む!」


布の顔で頷き、一反木綿は氷華を抱えて遠くまで飛び出していった。



 「ハア……ハア………ハア………」


空中に一反木綿と飛び出した後も息切れが治らない氷華。


それもそうだ、ノンストップで邪眼を1時間フルで使い切ったのだ、疲労困憊もいいところだ。


(クソ………こんな時に「邪眼」が切れるなんて……折角押していたってところだったのに……!!)


疲労の色を浮かべながら、自らの不甲斐なさに心の中で悔しがった氷華だった。


勝つには限界突破しかないが、打開策がなければそれをしても同じところだった。


と、ここで声が聞こえてきた。


背負っていた天叢雲剣からだった。


〈無様じゃのう、氷華よ……〉


突如氷華の脳内に響き渡った声。


声を聞き、咄嗟に剣の柄を握る氷華。


天叢雲剣は続ける。


〈我の力を使わずに勝つと()()()()()()()()()()()()……何故我を使わなかった? 氷華よ……〉


氷華は答える、正直に。


「ごめん……正直に言うとあなたを使いこなせる自信がなかった……まだ通わせきれていなかったし……」


〈ハハハ、なるほどのう……強がりか。……じゃが、我ならば()()()()の妖なぞ、一瞬じゃ。氷華よ、藁にも縋るか? 牛鬼に勝つために。〉


事実、天叢雲剣に頼らないといけない状況下。


氷華は悩む。


八岐大蛇を屠るのには使えたが、それは目が覚めていない時だった。


目覚めた今、心を通わせきれていないのは事実だったが、使っても勝てる保証が氷華にはなかった。


〈悩むか……それはそうじゃ、悩むだけ悩むが良い。……だが氷華よ、一つ、問うぞ。……お主は()()()()()今回の戦に臨んだ?〉


「……一族のため……」


〈氷華よ、本当にそれだけか? お主は……彼奴らを守りたいからではないのか? 本心として。〉


「……守り……たい……!!」


氷華は天叢雲剣の問いかけに声を振り絞った。


〈そのはずじゃったろう? だが現にお主は守られてばかりじゃ。……だから……我を使って今度は守るが良い。じゃが、我もただ手を貸したりはせぬ。……氷華よ……もう一度聞く。何のために戦いを挑む。〉


「……叢雲……私は……みんなをアイツから守りたい! そして……! 私の手で葬りたい!」


〈それが本心じゃな? ……よかろう、我の力を貸そう。〉


「うん……お願い! 力を貸して!! みんなを守るために……! 牛鬼に……勝つために!!」


〈今までで最も力強い答えじゃ……気に入った。〉


氷華が天叢雲剣の鞘を抜き、剣を構えると、聖なる力が湧いてきた。


疲労の取れた感覚がする。


力も同時に湧いてくる。


氷華は自信が湧いてきたと同時にこう誓った。


必ず牛鬼を倒すと。



 一方、晴夜たちの方も、事態が動こうとしていた。


《小賢しい人間ども……調子に乗るでないぞ……!》


牛鬼が激昂し、大きな唸り声を上げ、どんどん身体が変形していった。


身構える3人とカイメイジュウ。


牛鬼の最強形態・「蜘蛛態(くもたい)」に変身しようとしていたのだった。

展開がどんどん蠢いていきますね……

次回、蜘蛛態の強さを発揮させればと思いますのでよろしくお願いします。

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