31th SNOW 「お台場に出る」というリーク
この回は章終盤の最初なのですが、あの後も書きたいので若干長めです。
登場人物紹介、今回は冷原小雪です。
冷原小雪 15歳 中学3年生 4月27日生まれ A型とAB型の「キメラ」 155センチ 3サイズB79W54H83
埼玉県さいたま市在住。
今回の10傑最年少。
氷結系に関しては天才の領域で、全盛期の霜乃をも凌駕する。
普段は無口でマイペースなのだが、戦闘になると途端にシリアルキラーのような快楽主義的なサイコパスになる。
霜乃からは「本当は10傑に選びたくなかったほどの危険人物」、氷華からは「性格さえ良ければ雪羽より早く呼ばれていた」、氷衣露からは「得体が知れない」と言わしめるほど。
邪眼を使わずとも強大な魔力を繰り出せるため、実力は本物。
邪眼を使うと体力を余計に消耗するのだとか。
実は「人狼」の刻印者なのだが、周囲には明かしていない。
天狐が牛鬼について話し始めた。
雪女を狙い、喰らう理由、なぜ従っていたのか、牛鬼の住処、など、詳細に話し始めた。
これを北川が、まるで事情聴取をするかのようにメモを取っていく。
「……つまりは……天狐、雪女を狙う理由は単純に魔力の強化か? 雪女は狙われやすいって晴夜も言ってたしな。で、お前はその化ける能力を買われた、と。」
「そーそー。で、住処なんだけどー……実は牛鬼って超自由人なの。確かに浅間山に本拠地があるとは言った。でも普段は殆どいることがない。それは事実だよ。だって、人間に化けれるんだもん、牛鬼。行客をしてんのよ。アイツは。」
「なるほどな……だが……次の出没情報がどこかわかるだろう? 組織立って行動していれば。」
「うん、それは勿論知ってる。………お台場だよ。お台場。1週間後だってさ。」
「……お台場……」
「そこで雪女を狩るってさ。名前は確か……『落雪冬菜』だったかな?」
「………え……!? ふ、冬菜ちゃんを!?」
氷華は10傑の1人、冬菜の名を出され、椅子からガタッと立ち上がった。
「氷華、知ってるのか。」
「知ってるも何も、私と同じ『新世代10傑』です!」
これに相澤が反応する。
「まあ、確かに……気が気じゃねえよな。知り合いが狙われていると知ったらさ。」
冬菜をまず戦闘に参加させるべきかはさておき、ここはΣで足止めをしないと幾ら冬菜といえどやられかねない。
何せ3年前の霜乃よりかはあまり強くないのが冬菜だ。
闘志が燃えてくる。
なにしろ加賀山との約束を果たせるのだ、これでようやっと。
氷華の目に、燃え盛るものが映っていた。
「……で、氷華にはなんだけど……アタシが二重スパイで牛鬼にリークしておくからアンタは囮になって。」
「は!? なんでよ!! そもそも天狐の言うことを聞く義理は私にはないんだけど!?」
「……まあ、確かにな。」
全力で拒否する氷華と、妙に納得する怜緒樹。
温度差は対照的だったが、怜緒樹は氷華にこう、説得した。
「……天狐が言いたいのは『雪女を狙う』ということを逆手に取っている、とも捉えられる。つまり、本丸のアタシらが到着する間になんとか凌いでくれ、ってことだろうな。つまり、アンタが餌役には最適なんだよ、氷華。」
「確かにそういうのはやるべきだとは思いますけど……!! でも、冬菜ちゃんを守んないと!!」
「……そう、だな、俺たちは向こうのターゲットを逃さないといけない。お台場からな。……護衛役は俺がやろう。」
「隊長! いいんですか!?」
「……冬菜本人は16歳って話だ。そこは相澤から聞いている。妖怪から人を危機から守るのも、俺たちの仕事だ。だから……体力を削るのに氷華は専念すればいい。」
「……わかりました。でも他の皆さんは……?」
「本丸は怜緒樹と晴夜でどうにかしよう。文香は2人のサポートを頼む。」
この言葉に文香は鋭い目つきで頷いた。
では、佐久間と相澤はどうするのか。
「……そもそもの問題、相澤の能力と牛鬼とは相性が悪すぎる。何せ影を舐めるのと泥に潜るのとではグーとチョキの関係だ。相澤は俺のサポートを頼む。で、佐久間は天狐と連絡を取り合って場所を共有して欲しい。」
「はいよ、北川くん。仰せのままに。」
「任せといてくださいよ、隊長!」
「よし……今日は解散だ。1週間後、お台場集合だ、いいな!?」
「「「「「「「了解。」」」」」」」
そうして、この日のΣの再集結は終了した。
晴夜は天狐を仕事に送り出していった。
帰り道にて。
氷華と晴夜はというと。
「……陽陰君……あんなこと、言ってゴメンね、さっきは……。」
「いいって、気にしてないよ。」
「……ホント陽陰君、お人好しだよね……羨ましいくらいに……。」
「まあ……僕も正直焦ったけどね……」
お互い、気まずい空気になっている。
しばらく沈黙が流れた後、これからどうするかを晴夜が聞いた。
「……雪宮さん、これからどう、するの?」
「……え? ああ、あの剣と通じ合わせないといけないから……それに当てるかな、この1週間。」
「……そっかぁ……。」
といい、こう提案を出した。
「僕が話しておくからさ、明日……2人っきりでどっか行ってくれば? 天狐と。」
「え??」
ポカン、と口を開けた氷華。
それもそうだろう、なぜ、敵対しているもの同士でどこかに行かなければいけないのかは気が気でない。
「……今後戦っていく上でもさ、普段でもさ、僕らの間に入っているわけじゃん? 天狐は。今はしがらみがあるけど、お互い『人間的に』分かり合えばいいんじゃないかな? なんだろうな、天狐は聞き上手だから……悩んでることも相談に親身に聞いてくれると思うよ。……大丈夫、僕が保証する。」
「……まあ……陽陰君がそういうなら……。」
「決まりだね。じゃ、天狐にも話しておくから……それじゃ。」
別れようとしたその時、
「ま……待って!!」
と、氷華が大声で晴夜を呼び止めた。
「? どうかした? 雪宮さん。」
氷華は顔を赤らめている。
「……そ、その……あ……あり…がと……」
氷華は照れ隠しなのか……精一杯の感謝の言葉を口にした。
晴夜はこれに笑顔で返す。
「どういたしまして。」
そういって、晴夜は電車に乗るために改札へ向かっていった。
帰宅後、自室のベッドの枕に顔を埋めた氷華は……
「………あーもう! 私のバカ!! なんで大事な時に『好き』……って言えないの、もーーーーーーーー!!!!」
……自らの不甲斐なさに癇癪を起こしていたのだった……。
素直になれない自分と、勇気を持てない自分とが、混雑していた氷華の心境だった。
翌日、学校終わりにて。
ファミレス前で天狐と待ち合わせている氷華は、メールで連絡を取り合っている。
正直言って憂鬱以外、何者でもない。
晴夜に言われたからとはいえ、なぜ嫌いな相手と分かり合わないと行けないのか、氷華には分からなかった。
と、そこに、天狐が到着した。
いつもの派手な格好とは違う、真っ白のワンピースを着た天狐がそこにいた。
「お待たせ氷華。じゃ、入ろっか。」
天狐に促され、氷華はファミレスの中に入っていったのだった。
シリアスと恋愛が混在している回になりましたねwww
次回はお互いのことを知る回になります。
恋愛相談もあるよ!!www
次回の登場人物紹介は「凍山冬実」です。
お楽しみに。




