3rd SNOW 陰陽師との帰り道、そして偶然また出会う。
この小説をめっちゃ久しぶりに投稿しますけど、話の流れをあまりわからないという方は、1話目から見ていただけると助かります。ただ、大まかな数話分の流れは8ヶ月掛けて考えたので、いいものに仕上がってるといいな、と思います。
帰りのホームルームのチャイムが鳴り、晴夜は、氷華を一緒に帰ろう、と誘った。
ぎこちない表情で頷いた氷華は、帰り道で今朝の顛末を聞くことにした。
ただ、それにしても、誰もが羨む美男美女の絵だ。
華やかに映えないわけがない。
学校を出るまでの周囲の視線が気になるし、梢たちとは、約束をもう、昼のうちに済ませていたので、一緒にいる意味は今はなかった。
無言のまま、時間が流れる。氷華は、重い口を開いた。
「……ねえ、陽陰君は、、私のこと、、どんな目で見てる……? もしかして、勧誘……?」
今朝の発言が妙に気になっていた氷華は、晴夜に聞いてみた。
すると、意外な答えが返ってきた。
「君に不思議な気を感じたからね。普通の人より霊感が圧倒的に強い……ただ、美人なだけじゃない、なにかを君に感じたから、『妖』が見えるかどうかを聞いた。それだけだよ。もしかして、、僕が陰陽師だから、警戒してる、とか?」
勘づかれている、と氷華は悟ったし、警戒しているのも図星だった。
流石に今日初めて会ったとはいえ、隠し事は無理だな、氷華はそう考えた。
「ま、、まあ、、私も『雪女』の一族だからさ、、周りには言えないんだけど、陽陰君ならいいかなー、って……ごめんね、なんか、私が誤解してるようで…」
「雪女、、か。道理で霊感が強いわけだ。いや、僕は君を敵対視しているわけじゃない。むしろ、好感を持ってるよ? 僕のいる組織も、そんな人ばっかだからね。」
「そのー、、組織って、どういう活動すんの?」
「うーん、それはまあ、普通の人には見えない妖魔を退治するだけだよ。君も『視える』なら、わかるだろ?」
「私でも、、入ろうと思えば入れる……?」
「勿論、その時は歓迎するよ、雪宮さん。ただ、、雪女は『妖』から、その妖力を狙われやすい。だから、本音はあまり巻き込みたくはないんだ。」
「そ、それはそうだけどさ…!」
そう言いかけたところで、晴夜が立ち止まった。
「あ、僕、次の電車で乗るから。また、学校でね。」
はぐらかされた……。そんな気持ちで氷華は帰路についた。
「ただいまー」
そういって玄関を開けた氷華を姉の霜乃がキッチン越しで「おかえりー」と迎えた。
霜乃は、現在大学2年生の20歳。
3年前、妖に襲われ、右眼を失っている。
それ以来、雪女の力が年々減っている。
ちなみに妹の氷衣露は中学2年生の14歳。
真面目な氷華とは違い、男勝りな性格をしている。
氷華は今日のことを霜乃に話した。
晴夜のことだ。
「今日、クラスに転校生が来てさ、男の子だったんだけど、結構イケメンだったんだよね。」
「へー、そんな子がなんで公立校なんかに来たんだろね。」
「でもさ、私のこと雪女だ、って見抜いたり、自分を『陰陽師』だって、名乗ったりしててさ、、めっちゃ変なやつだなーって。」
そういって、都姫から送られた、スマホの写真を見せた。
晴夜が写っている。
「……アンタが入りたい、っていうなら止めないけど、彼の入ってる組織には入んないで。……聞いたんでしょ? 彼から、組織のこと。」
「?? うーん、詳しいことちゃんと聞いてないからさ……アレだけど……」
「私みたいに、雪女の力を失ったら、一族から軽蔑されて終わるだけだよ。それは、、氷華、アンタも分かってるでしょ?」
「今はでも、入る気はないよ、お姉ちゃん。でも多いよね、最近。雪女が次々と狙われる事件。お姉ちゃんみたいに、右眼をやられて、雪女の力を奪われてる。」
「うん、、私も狙われて、倒そうとしたけど、大怪我して、右眼を獲られた。だから、、アンタは自分の身の安全だけ考えて。私みたいに、なってほしくないからさ。」
「そうだね。それより、今日のご飯なに?」
「天ぷら蕎麦でーす。」
喜ぶ氷華を他所に、霜乃は天ぷらを揚げていった。
そして翌日。
この日は土曜日。
氷華は梢たち3人と、渋谷のショッピングモールへ遊びに行った。
氷華の今日のコーデは、紺色の縦縞ラインに、薄い黄色のワンピース。
梢はいかにも黒ギャル、、な服装をしていて、他2人はまあ、いいところの出らしく、わりかし地味な服装だった。
そして、服を買うのと、流行りのパンケーキを食べに出発していった。
まあ、テストが終わったら夏休みがテストから二週間後に控えているので、海に行く用の水着を買いに行く、という目的もあるのだが。
そして、買い物を4人で楽しんでいると、カップル限定の店に、晴夜が、スタイルのいい女性と共に入っているのを発見した。
梢たちが、ひそひそと話しているのを他所に、氷華は晴夜に声を掛けた。
「ちょっと、陽陰君! なにやってんのー!?」
これに晴夜も反応した。
「ああ、アヤカさん、ちょっと待っててもらっていいですか?」
ツレの女性に声を掛けて、晴夜が呼ばれた方へ来る。
「ごめんごめん、仕事先の先輩に買い物付き合わされちゃって……」
「もしかして……カップルのフリしろ、とかそんなオチ?」
「ま、まあそんなところ、、かな。で、僕は荷物持ち。」
そんなこんなで勘違いから脱却した梢たちと5人で話し込んでいると、晴夜に、「アヤカさん」と呼ばれた女性が来た。
「ちょっとー、晴夜? 何油売ってんのかな?私を差し置いてさあ。」
「あ、ああ、すみません。クラスメイトと、たまたま会ったもので……。」
「あー、そうなんだ? で、アンタが噂の…」
「ゆ、雪宮……氷華です。」
「私は垢里文香。よろしく!」
そういって、他も自己紹介する。悪い人ではなさそうだ。
そして、文香は、何か、氷華に話したがっていそうだった。
「ちょっと、、トイレまで来てくれる…?」
「え、、え? わかり、、ました……。」
言われるがまま、氷華は、文香と近くのトイレへ行った。晴夜はため息をついた。
「あの人、悪い人じゃないんだけど、めっちゃしつこいんだよなー……。何事もなきゃいいけど……。」
晴夜の不安は杞憂に終わるのか、はたまたさらなる波乱を呼ぶのか。
それはまだ、誰も知らない。
急にポッと出で出てきた女性がいますが、次回は少し掘り下げます。彼女のことを。
文香がまだ何者かは教えることはできませんが、只者ではない、ということだけ、先に言っておきます。
これから定期的に投稿を再開しようと思いますので、今後とも宜しくお願いします。