21th SNOW 飛騨の怪物蛇
この回は氷華と文香が、飛騨山脈で八岐大蛇を調査する回となってます。
戦闘の方はまた次回。
今回の登場人物紹介は、加賀山先生です。
加賀山昌孝 52歳 氷華、晴夜の担任・数学教師 169センチ 86キロ 好きな食べ物 軟骨の唐揚げ
氷華、梢、玲香、都姫、晴夜のクラスの担任で、数学教師を務める。
霊感が北川並みに強いのだが、妖術を扱えるわけではない。
3年前に妻と娘を牛鬼の手によって亡くしている。
多分、全登場人物の中で一番まともなのはこの人wwwww
ちなみに超酒豪で、泡盛のストレートをコップ10杯分はいけるとのこと。
3日が経過し、氷華と文香は、車で長野県の飛騨山脈へ向かっていた。
東京から走らせること2時間半。
二人は飛騨山脈付近のログハウスにある駐車場に車を停めた。
「さてさて……とりあえず準備だけしてこうか……。登山のさ。」
「……文香さん……。ここに停めたってことは、お部屋の方はとってあるんですか?」
それもそうだろう。
わざわざ登山しにいくだけなら、重厚な格好をする必要性はないのだから。
寒さに耐性のある雪女の半妖の氷華は着替えなくても良かったのかもしれないが、文香は半妖とはいえど、垢舐めの体温は人間と全く変わらない。
高山病に罹らないためにも準備は絶対必要だった。
文香は氷華の問いに答えた。
「当たり前よ! 長丁場になるかもしれないのに、泊まって行くことも計算しないでどうすんの! ささ、余計な荷物とか置くよ! あと、氷華ちゃん、お酒出すの手伝って!」
「……わかりました。……この段ボールの箱でいいんですよね?」
「それ、結構重いからね!! 今回の任務で一番重要なやつだから!!」
8本入りの段ボールに入った酒は想像以上に重く、運ぶのにもかなり苦労した氷華だった。
そして、山の服装に着替え終えた二人はというと。
「………文香さんはいいとして、なんで私までこの格好なんですか……? 単純に暑いんですけど……。」
酒は二人で4つずつ分担することになったので、それぞれのリュックサックに入っているのだが、氷華まで登山用の服装に着替えたわけはというと……。
「まあ、いいじゃないの。むしろ白い目で見られたくないでしょ、氷華ちゃんも。だから我慢しときなさい。これで。」
「そ……それは、そうですけど……。」
「さ、早いところ倒しちゃうよ……。夜になったらそれこそ見えにくくなっちゃうからね、山の中は。」
こうして二人は飛騨山脈を登っていくのだった。
歩くこと1時間半。
文香が舌を出してレーダーのように探すが、なかなか見当たらなかった。
気配すらもない。
「……思ったより、居ないもんですね……。八岐大蛇は……。」
「そうねえ……。いつもだったらここら辺でビリッ、と来るんだけど……。」
「……お言葉ですけど、垢舐めの舌って、妖怪とかがわかった時って、どういう感じになるんですか?」
氷華は文香と初めて会った時からそこに疑問を持っていた。
氷華を一瞬で強いと判断したわけがそこにあると踏んでいた。
「まあねえ……。強いのだと、それこそ本当にタバスコを食べた時とおんなじ感覚ね。……霊力が高い妖怪に遭遇したら空気がそんな風に張り付くから一瞬でわかる……。氷華ちゃんなんて、霊力がわかりやすいから、甘ったるいアイスクリームを食べている感覚ね……。雪女の妖力はそんな感じ。」
「あ……甘ったるい、って……それ、褒めてるんですか? 文香さん……。」
「……あと、こういうのもアレだけどさ……。相澤くんがなんでウチの諜報部隊をやってるかわかる?」
何故か文香は話題を変えてきた。
相澤のことだ。
確かにあんな目立つ格好をしていれば、潜入したとしても一瞬でバレるはずなのに、その部隊で活動しているのは確かに疑問点ではある。
「え………?? どういうことですか?」
氷華は全くわからない、といった様子だった。
「……相澤くんも、半妖なの。」
「……え??」
氷華は俄には信じられなかったのだが、頭を回転させると、確かに普通の人間が雪女の存在に感づくはずがない。
違和感はなんとなくあったが、まさか半妖だとは思わなかった。
「……相澤くんは『泥田坊』の半妖なのよ。彼の最大の武器は、『泥に変解させること』。コンクリートでも木でも、なんでも泥に見立てて潜伏することができるの、相澤くんは。ただ……いざ戦うとなると、私とおんなじくらいの戦闘能力しかないから、彼にとっては諜報部隊が天職なのよね。」
「………そっか……それで、あんな妖怪の知識が豊富だった、ってわけですか?」
「……やっぱ、獣医の卵なだけあって、頭はいいのよ。ああ見えて。みんなが死にそうだって時、相澤くんだけはなんだかんだで生き残りやすいのよね。隠れることに特化しているもの、彼は。」
確かに妖怪の攻撃を躱すのであれば、隠れることはわりかし必須条件になってくる。
そういった意味でも相澤の能力は潜伏にはうってつけなのだろう。
氷華はそう思って歩みを進めていった。
そうして、その会話から約2時間が経過した。
流石に歩き疲れたし、だいぶ山も登った。
二人は岩陰で休憩することにした。
ウィダーゼリーを飲みながら、二人は八岐大蛇を誘い出す策を考えていた。
「……そういえば、空気はどんな感じですか? だいぶ歩きましたけど……。」
氷華は八岐大蛇がなかなか見つからないことに焦りを覚えていた。
「……ちょっとずつは近づいているんだけど……。すぐには遭えないかな……。あと1時間くらいはかかるかもね。」
「……でも……それだと暗くなりますよ? 手っ取り早く倒さないと……。」
「……それもそうね。でも、焦ってたって、何も始まらないわけじゃん。そう考えると……やっぱ、このお酒がカギを握るかな。」
文香はそういって酒をリュックサックから取り出した。
そして氷華に作戦を話した。
「……おそらく夜行性の妖怪だと思う、八岐大蛇は。だから夕方の内にお酒を全部並べておいて、私達は目の前で待機……。そうすることで八岐大蛇の理性を奪う作戦で行く。」
氷華はこれに首を縦に振った。
「わかりました。それじゃあ、それで行ってみましょうか、文香さん。」
「OK、じゃあ、出発しようか。氷華ちゃん。」
こうして二人は岩陰から立ち上がって、八岐大蛇の方角へ足を傾けた。
再び歩くこと1時間。
八岐大蛇がいるであろうところに到着した。
時刻は午後4時。
出現まではまだ少し、早いくらいだった。
「よし……氷華ちゃん、お酒、頂戴。」
文香に促され、氷華は4本の酒を手渡した。
山の中を歩いたとはいえ、キンキンに冷えていた。
文香は蓋を次々と開けていき、8本の酒を並べて置いたのだった。
そして二人は、八岐大蛇の出現を待つことにした。
そして2時間半後。
遂に事態は動いた。
巨大な蛇の頭が八つ、鎌首を擡げながら様子を伺っていた。
そして、酒の匂いがわかった途端、瓶に向かって食らいついた。
バキン!! という、ガラスが割れるような音、そして、ガラスの破片ほど、その蛇の頭は酒を飲み込んでいった。
八岐大蛇が姿を表した。
100メートルはあるかという、巨大な体躯をしており、陸地が一つ作れようかというくらいの胴体と、首と同じくらい長い巨大な尾、そして蛇とも龍とも形容し難い八つの頭が胴体から生えていた。
これぞまさに『異形』。
目の前で対峙した氷華と文香は圧倒されていた。
《お主ら……美味そうじゃのう………》
蛇の頭の一つが喋った。
それと同時に二人は身構えた。
と、次の瞬間、頭の一つが氷華に襲いかかってきた。
これが氷華、文香のコンビと、八岐大蛇との開戦を告げたのだった。
いやー……盛り上がってまいりましたね……。
次回はもっとすごいのを書きます。
巨大妖怪との戦闘は迫力満点なのでね。
登場人物紹介の次回は新世代10傑、、といきたいんですが、その前にこの数話は、晴夜サイド(京都)を紹介します。
結構伏線を張ってる箇所も多いので、後々彼らは結構な重要人物になって来ますので、ご参考までに覚えておいてください。




