20th SNOW 適材適所
この回は作戦決行前日の出来事なので、大事な部分だけ抑えてもらえればいいかと思います。
実際章中盤は、カギになるアイテムも出てきますからね。
登場人物紹介、今回はサクッと終わらせますが、栄五郎さんです。
山吹栄五郎 料亭「山吹」店主兼料理長 48歳 9月3日生まれ A型 177センチ 68キロ 好きな食べ物 蛤のお吸い物
銀座にある隠れ家的料亭「山吹」の二代目店主で料理長を務め、吹雪の兄弟子でもある。初代店主の父は故人。店は常連が多いので、人見知りな栄五郎にとっては現在の状況はやりやすいとのこと。
誠とは幼馴染兼親友で、女性関係が全くなかった誠を見かねて吹雪を紹介したところ、アッサリと堕ちたことで事実上、恋のキューピッドとなった。
料理の腕は、ミシュラン二つ星を獲得するほど。新メニューの開発より、料理を極めることを信条にしているので、新作は吹雪に任せている。
家族は妻と20歳の娘がおり、娘は霜乃と仲が良い。
人見知りだが、豪快な性格で、気はとても優しい。
北川が作戦を練っているところ、他のメンバーは対戦ゲームを楽しんでいた。
まあ、何せ立案し終わるまで暇なので無理はないのだが。
そんなこんなで、北川以外の全員は、対戦ゲームをして、作戦が組み立て終わるのを待った。
二時間が経過。
文香が出前で頼んだピザをメンバーが食べているところに北川から集合がかかった。
「……まあ、こんな感じで作ってみたが……何かあるか? 俺なりに適材適所にしてみたつもりだったが……。」
それぞれの名簿を見たところ、疑問に思う組み合わせだった。しかも、晴夜と北川だけは単独行動だった。
「……僕と隊長が単独で……ですか? 一体どういう意図でそのようなことを?」
北川が説明する。
「正直な話、そのようにしたのも理由がある。覚に関しては下手に二人で挑めば逆に見切られる可能性がある。だから俺1人が行ったほうがいいと判断した。俺は霊感が人の何十倍も強いからな。で、晴夜に関してだが……『化ける』ということは、相当な警戒心がないと出来ないことだ。だから警戒心を少しでも緩めさせる必要がある。しかもホステスということだろう? まず、晴夜が客として来店して落とし込む作戦さ。お前の顔なら、堕ちるのも容易いだろ。氷華の話だとホスト狂いしてるって話だしな。おそらくそれよりもいいであろうお前の方がいいと判断した。」
晴夜が行く、と聞き、氷華は浮かない顔をした。
「……氷華、どうした? 晴夜が行く、というのが不服か?」
その顔を見た怜緒樹が下から覗き込んだ。
「……不服ではないですけど……ただ……心配で……。」
「へえ……なんの心配してんだよ氷華。もしかして……女に化けるやつに関わるってんで、ヤキモチ妬いてんのか?」
怜緒樹はニヤニヤしながら氷華を見上げている。
「や、妬いてませんって! とにかく! 私情です! 私は私の任務に集中します!!」
「で、なんですけど隊長……。なんで八岐大蛇に文香さんと氷華を行かせるんですか?」
「……まあ、それにも理由があってな……。八岐大蛇は大昔に須佐之男命に討たれて以来、男を警戒してると踏んだからな。濡れ女でもそうだが、そいつの『餌』で釣って倒そうって算段だ。」
怜緒樹の顔に不安がよぎっていた。
「それは分かったんですが……氷華はともかく、文香さんに行かせるのはしんどいと思いますよ? 第一戦闘力が違いすぎる。幾ら氷華がいるとはいえ、状況は最悪では?」
「最初に言ったろ? 佐久間が。酒と美女をこよなく愛する、ってな。だから酒を買える奴も必要と踏んだ。且つ、女が二人で行けば、向こうは興奮して判断が正常に取れないと思ったのもある。」
「……了解しましたが……私に濡れ女に行かせたというのは。」
北川はその理由も話した。
「正直、相澤と佐久間だけではああいう巨大な奴を仕留めるのは難しい。佐久間は結界術の火力があるってだけで、濡れ女の弱点を突けるわけじゃないしな。だからパワーのある怜緒樹が必要なんだ。陸上に引き上げちまえばこっちのもんだからな。」
こうして、理由を説明し終えたあと、北川はこう指示した。
「……やるべきことは、『全員生きて帰ること』! 以上だ! 3日後、作戦を各自決行すること! 今日は解散だ!」
こうして、全員は帰路についた。
「……長野……長野かあ……。」
自宅に帰った氷華は、長野に行くということになり、あることが思い浮かんだ。
「そういやあ、雪羽ちゃんがいたよね……長野って……。ちょっと電話してみるか……。」
こうして、氷華は雪羽に電話してみることにした。
『はい、霰塚です。って、氷華さん? どうしたのよ急に。』
「ああ、雪羽ちゃん? 実はさ、3日後に長野に行くことになってさ……。」
『へえ……長野に来るの? 何が目的よ。』
「任務の方で八岐大蛇を討伐することになってさ……。で、雪羽ちゃん、地元が長野でしょ? そいつも長野の飛騨山脈にいるって話なんだけど……何か知ってる?」
『うーん……確かに地元とはいえど、住んでるのがこの辺ではないから詳しくは聞かないけどねえ……。けれどそれ以外にも何か目的があるのではなくて? 情報収集以外に。』
「流石にあそこまで大きい妖怪だと二人で行くんだけど、まともに戦えるのが私だけじゃ限度があるからさ……だから協力して貰えないかなと思ってさ。」
『そういう事情ねえ……。わかった。考えておくわ。家の用事があるから来れたら来るわ。』
「アハハ……名家の子は大変だね……。」
『しがらみが面倒なのよ……困ったことにね……。私だっていつでも行けるようにしておきたいわよ。ただ……これだけは信じていて、氷華さん。私は必ず助けに行く。』
「うん! 待ってるから!」
『それじゃあ……もういいかしら? 健闘を祈っているわ。』
「うん。それじゃ。」
程なくして電話が切れた。
それと同時に今度は文香にメールで連絡する。
[どうしますか? 今度の任務。]
《どうするもなにも……冷静に考えてみたら私がお酒で上手いこと釣って氷華ちゃんが仕留めるっていうさ、構図にならない?》
[けれど……あそこまで大きい妖怪ですよ? 土蜘蛛とか、付喪神とかとは訳が違いますから……。]
《まあ、私も戦えないわけじゃないからさ……応戦はしてみるけど、最悪私が死ぬことも視野に入れないと行けないからな……。だから、全員生きるって任務を完遂させるなら今回だけは情報を盗むって戦略もあるけど……》
《氷華ちゃん、基本優しいからそういうわけにも行かないわよね。私でも見捨てないし。》
[……私が守り切らなきゃ行けませんからね……。文香さんを、絶対に。それに、援軍のアテも一応は取れてますから……行けないことは無いと思います。]
《そうね……セオリー通りに行こうかな、今回は。でも、私は弱点を見つける係だから、あくまでも。だから仕留めるのは氷華ちゃんに任せるわ。》
[そのつもりです。]
《んじゃ、また3日後ね。それじゃ、お休み。》
[はい。お休みなさい。]
文香との連絡を終えたあと、氷華は考え事をしていた。
(八岐大蛇は牛鬼の配下だから……何か情報が有ればいいんだけど……アイツは……私が必ず仕留める。八岐大蛇も……牛鬼も、絶対に私が仕留めてみせる……)
一息吐き、氷華は部屋に戻り、眠りについた。
決戦は3日後。
Σの命運を賭けた戦いが幕を開けようとしていた。
晴夜と九尾の狐の件、氷華は完全に嫉妬してますねwwwwww
でも、ご安心ください。晴夜が九尾の狐に靡くことはありません。
次回、長野に行きます。登場人物紹介は、2回しか出てきていない加賀山先生の紹介です。
次々回から牛鬼とその配下との戦いが激化していきます。お楽しみに!!




