17th SNOW 晴夜、京都に帰省する。
この回は間埋めの回なので、面白い回にする予定はゼロですね。
あとはまあ、帰省なので晴夜の親父殿が登場します。
登場人物紹介、今回は氷衣露です。
雪宮氷衣露 14歳(中学2年生) 4月6日生まれ O型 158センチ 3サイズB82W57H81
雪宮家三女で、霜乃と氷華の妹。快活そうな童顔の顔立ちとショートヘアが特徴で、男勝りで竹を割ったような性格。身体は絶賛発育中。
思春期真っ只中なのだが、父、誠がリビングでパンツ一丁になっても気にしない素振りをしている。思ったことはハッキリと口にするので、氷華が悩んでいる時は一喝したりもしている。
運動神経抜群で、邪眼発動時の爆発力は凄まじいが、氷衣露自身はまだコントロールが出来ていない。
異性の友達も未だに多い。細かいことが苦手で、家事は壊滅的に酷い。
一方、東京から遠く離れた京都府宇治市。
晴夜の実家はその中心街から少し離れたところにある。
未だに古風な街並みが残っており、観光客も毎年来る。
そんな中でトランクを引きずりながら街の中を歩いている晴夜は、背が高く、また美形なのでよく目立つ。
本人は無自覚でも、イケメンオーラを漂わせている。
女性がその色香に惑い、倒れかける。
そんな中で晴夜は実家に帰った。
「ただいま。」
と、晴夜は引き戸を開けた。
「お帰りなさいませ、坊ちゃん。」
と、陽陰家執事、「月岡陽一」が出迎えた。
陰陽師の名家、「陽陰家」。
身の回りの世話はこの月岡がしていたのだった。
「月岡さん……父さんは?」
「旦那様は書斎にいらっしゃいます。……坊ちゃんが帰省されたとの旨をお伝えいたしましょうか?」
「いや、いいよそれは。僕がするから。」
「……左様で御座いますか……。それでは、ごゆっくり。」
手を洗った晴夜は、父、月久の書斎にて、帰宅したとの旨を伝えた。
「父上……今、帰りました。」
仰々しく、月久に対して敬語を使う晴夜。
流石に名家の御曹司だ。
礼儀もしっかりと弁えている。
「……ああ。晴夜か……。帰るなら連絡の一報くらい、よこさんか。」
無愛想な声で晴夜を出迎えた月久。
まさか帰省してくるとは思っていなかったようだった。
「……申し訳ございません…。」
「……まあ、そんなことはいいんだ、晴夜……。それより……東京へ行って2ヶ月経つが……どうだ? 学校は。慣れたか? 少しは。」
「……ええ。おかげさまで。……実は、雪女の一族の者と同じクラスになりましてね。」
この雪女、という単語に月久は反応した。
「……雪女がいたのか。」
「……ええ。今は『Σ』東京支部でも一緒に任務をしておりましてね……。なかなかの実力者ですよ。彼女は。」
「……晴夜、くれぐれも気を付けろ。雪女には。……特に、お前はな。」
「………? わかりました。では、これにて失礼いたします。」
僅かな疑問を残して、晴夜は書斎を立ち去った。
晴夜が立ち去った後、月久は書斎にてポツンと呟いた。
「……まさか晴夜に……こんな数奇な運命を辿らせて……それが今この時期とはな……。」
ある女性と共に写っている写真を見ながらため息を漏らしたのだった。
晴夜は、雪女に気を付けろ、特にお前は、という言葉が頭から切り離れず、気分転換に釣りに行くことにした。
「坊ちゃん、どちらまで行かれますか。」
外へ出ようとしたところ、月岡に声を掛けられた。
「ああ、川釣りに行こうと思ってね。気晴らしに。」
「……お気をつけて。……それよりも坊ちゃん、せっかくお帰りになられたのでしたからもう少しゆるりとしていけばよろしゅうございますのに。」
「……たまには遊びにくらい行かせてよ、月岡さん。……いいだろう? 夏休みくらい有効に使っても。」
「そうですなあ……。では、いってらっしゃいませ……。」
こうして川釣りに出かけた晴夜。
川に着くと、餌のイトミミズを釣り糸に引っ掛け、それを川に向かって放った。
そしてヒットしたと同時に柄を持ち上げた。
鮒が釣れた。
その後も何回も何回も糸を垂らし、掛かったら引き上げるを繰り返した。
釣れど釣れど、鮒ばかりが釣れた。
再び糸に餌をかけ、川へ放ろうとしたその時。
ある人物に声をかけられた。
「おー、晴夜。帰ってたのか。」
この男は「朝日奈夕哉」。
晴夜とは、京都支部で同期だった陰陽師の血を引く者。
名家ではない朝日奈家ではあるが、実力者であることには変わりなかった。
晴夜が心を許している数少ない人物で、晴夜が東京へ行くことになった2ヶ月前にも京都駅で見送りに行ったほどだ。
「ああ、夕哉か。久しぶりだね。」
「なんでえ、晴夜。帰ってんなら早く言えって。親友やないか、ワイら。」
「アハハ、ごめんごめん。」
「まあ、別にええんやがな……。それで、東京はどうや? ……女の子にうつつ抜かしてるんちゃうやろな?」
「うーん、まあ、ちゃんと任務の方はやれてるよ。それに、家を離れたから割と自由にやらせてもらっているしね。」
「まあ、ちゃんとやってるならそれでええんやけどさ。自分なら女の子に寄られてもおかしくあらへんからなあ。」
「女の子、ねえ……。まあ転校初日から黄色い悲鳴上がったくらいだからさ……。ああ、あと友達が出来たかな。女の子の。」
「結局うつつ抜かしとるやないか! で、どんな子やねん。」
と、晴夜はポケットからスマホを取り出した。
そして、写真のライブラリから5人で海へ行った時の写真を夕哉に見せた。
「ほ〜〜。なかなかべっぴんさんやないかあ……。くー、羨ましいなあ自分! ワイも女の子にモテたいねんてー!!」
「ハハ、大丈夫だよ夕哉もさ。その気持ちがあれば彼女だってすぐ出来るんじゃない?」
モテを拗らせる夕哉を、晴夜は軽く笑っていなした。
「カー! 羨ましいな! 晴夜はんは!! この顔とタッパがあれはワイだってモッテモテやのになあ!! ……で、そういう晴夜は彼女おるんかいな。そこまで言うなら!」
もはや情緒不安定になっていた夕哉の問いに、晴夜は少し考えた。
「うーん……彼女はいないけど……。ただまあ……一人この中で気になってる人はいるかなー。ってくらいだよ。」
「ほー……。どんな子や。……写真の中かいな。」
「この人。」
といって、晴夜は氷華が写っている真ん中付近を指した。
「………ごっつ可愛いやないか!! その子が気になっとるんかいな!!」
「ま、まあまあ、夕哉。落ち着いてよ……。で、その子なんだけど……実は、雪女の一族なんだ。」
氷華の事実をカミングアウトされた夕哉は一瞬思考が止まった。
「………は………??? 何言うとんねん、ワレ。冗談やろ??」
「……これが事実なんだよね。……嘘みたいな話だけどさ。実際任務で彼女の雪女の力も目にしてるしね。あと、席も隣だし。」
「……晴夜!!」
突然、夕哉にがっしりと襟を掴まれた晴夜。
顔は戸惑っていた。
「な、何?? ど、どうしたんだよ急に……。」
「………これは運命や!! この子と絶対付き合ったれや! 晴夜!! 自分が『陰陽師と雪女の和解の象徴』となるんや!!!」
「え、ええ?? なんのこと?? 夕哉……。」
晴夜が困惑するのも無理はなかった。
話の脈絡が全くないのだから。
「……実はな……お館様がな、今年中に雪女の一族とごっつデカい抗争を仕掛けようと企んでおるんや。……晴夜、もしそうなったらその子と対立することになる……! そうなる前に付き合っちまえや!!」
「………え?? ホントにそんなことが?? ……まさかね……でも、起きないことを願うよ。」
「ワイとて嫌や……争い事は良くないと思う……仕方ないやろ。戦わざるを得ない時もあるやないか……。」
その後は夕哉と他愛もない話をして、日が沈むまで晴夜は語り尽くしたのだった。
伏線が要所要所で張られてますが、いずれ全部回収する予定でいます。
次回は登場人物紹介で、吹雪の紹介と、氷華の夏休みを再び書きたいと思います。今週中には前半10話はほぼ終わるかなー、って感じなので、よろしくお願いします。




