15th SNOW 「新世代10傑」の儀
今回はパーティーの最中の重大発表が行われます。果たして「新世代10傑」とは何か。ぶっちゃけいうと、結構偉い立場というか、若い世代の実力者を選ぶ選考会みたいなものです。
さて、登場人物紹介。今回は都姫です。
小寺都姫 16歳 152センチ 10月20日生まれ AB型 3サイズB77W56H79
小柄で垂れ目が特徴の華奢な少女。氷華の友人の1人。普通の人間。実家は商店街にある呉服屋。心優しい心配性な性格で、玲香とは幼馴染。氷華と梢とは中学生からの付き合い。
成績はまあまあ。将来は実家を継ごうと思っており、そのために服飾系の専門学校に行こうと思っている。
呉服屋の娘だけあって、おしゃれや最新のトレンドには詳しかったりする。
雪女が一同に会する儀の会場。
やはりおおよそ30000人もの雪女を収容できるだけあり、物凄く中も広い。
煌びやかで豪勢な会場だ。
氷華と氷衣露が落ち着かないでいると、霜乃が思い出したかの様に言った。
「ああ、ごめん。私今日司会進行だった。それじゃ、また後で。」
そういって、霜乃は司会席へと向かっていった。
誠も裏方としての仕事があるので、別行動だ。
しかし、人が多いと落ち着かない。
提供されている食事は楽しんではいるものの、いまいち喉を通っている感覚がしない。
何せ今日は氷華にとって大事な日だ。
その緊張もあるのだろう。
10代後半の雪女の中でも実力者の氷華であろうと緊張するものだ。
しかもその年齢にもう、達している。
心臓が高鳴っていると、後ろから誰かに声をかけられた。
突然のことに氷華は声をあげてしまった。
「相変わらずこういうところに弱いのねえ、氷華さん!!」
口元を扇子で隠し、高らかに笑う制服を着た少女____「霰塚雪羽」だった。
彼女は長野県に拠点を構える、今回の雪女の取り決めを毎回排出している名家で、如何にもお嬢様らしい格好が高飛車な女性を連想させる。
氷華とは同い年で、幼い頃から2人は17歳の世代のツートップと言われてきており、ライバルとも言える間柄だった。
「ゆ……雪羽ちゃん!?」
「そんなに驚かなくてもいいわよ〜? 何せ今日は、『新世代10傑』が……決まるわけでしょ? だから声を掛けたのよ。」
雪羽が言った「新世代10傑」とは、15歳から25歳までの雪女が対象で、4年に一度、その年の実力者10人が選ばれる。
霜乃も前回入っており、氷華も「神童の妹」というプレッシャーの元で今まで頑張ってきたのだ。
霜乃が右眼を失ってからは尚更だ。
今回はその努力が報われるか否かの日だ。
「……確かにね……今年は2人とも可能性があるもんね……。」
「なーに不安げな顔してるのよ! ……2人一緒に入るって、約束したじゃないの!!」
「そ……そうだね……。うん。頑張ろ。お互い。」
「……フフ、じゃあ、健闘を祈っているわ。氷華さん。……それじゃあね。」
緊張しまくる氷華に対して終始、雪羽は余裕の表情を見せていたのだった。
そしてパーティー開始から1時間が経過。
ここで霜乃の声でマイクのアナウンスが入った。
「あー……あー……。……皆さま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。司会を務めます、雪宮霜乃でございます。……これより、盆の日の雪女一族の集会の儀の開催を宣言します。初めに、御当主様からお言葉を預かっておりますので、私の方からご紹介させて戴きます。」
御当主様、という言葉に固唾を飲む会場。雪女最強と謳われる実力と、カリスマ性を持ち合わせており、彫刻のような白い肌と赤い眼を持つ人だ。
この屋敷を所有しているのも、この会の主催者も彼女だ。
「……皆さま、本日は遥々遠方より集まっていただきありがとうございます。近頃、牛鬼による雪女襲撃事件が頻発しており、この4年で35人もの雪女の右眼を奪われる事態となりました。今年は新世代10傑の儀を執り行いますので、是非とも、選ばれた10名には、牛鬼を討伐していただくと共に、将来の雪女を支える礎となって戴きたく存じます。ますますのご健勝をお祈りいたしております。 霜之関雪子」
会場中から拍手が沸き起こった。
相当のカリスマの持ち主なのだと、この音の大きさだけでわかる。
「では、さっそくですが……。『新世代10傑』の代表者を発表させていただきます。先に皆様に改めて確認していただきたいのですが、15歳から25歳までの雪女が対象となります。そのことをあらかじめ、改めてご了承願います。では、参ります。呼ばれた方は前へお願いいたします。1人目は……」
全員が霜乃の声に静まり返る。それもそうだ。
雪女の命運が掛かっているのだから。
そして最初に呼ばれたのは……
「霰塚雪羽」
雪羽が一番手として呼ばれた。
それもそうだ。
名家の出で、呼ばれないわけがない。
しかも雪羽は本家の人間だ。
実力も相当だ。
そして、立て続けに発表される。
「凍野氷愛花」
「雹崎雪美」
「霜ヶ原雪華」
「冬岡真雪理」
「氷山三雪希」
……なかなか呼ばれない。
氷華はそんな思いでいっぱいだった。
緊張で心臓が爆発しそうだ。
同時に不安度も高くなる。
呼ばれなかったらどうしよう……そんな思いもあり、動悸が起こる寸前になった。
そして、その時は来た。
7人目のタイミングで、だ。
「……雪宮氷華」
「……え……? よ、呼ばれたの……!?」
一瞬で緊張の糸が解れ、選ばれた嬉しさというよりかは信じられない、といった表情だった。
そして氷華はカチコチになりながら前へ進み、登壇する。
氷華の登壇後、また更に3人が発表された。
「冷原小雪」
「凍山冬実」
「落雪冬菜」
全員が登壇した後、霜乃からアナウンスが入る。
「えー……今回呼ばれました、10名には、これからの雪女の未来を引っ張っていくとともに、是非とも憎っくき敵、牛鬼を討ち果たすことを期待しております。皆さま、拍手をこの10名にお送りください。」
再度、拍手が鳴り響いた。
氷華の表情は、というと、能面の様に固かったのだった。
その後、氷華と雪羽は抱き合って喜びを分かち合った。
「良かったーーーー!! 選ばれてないかと思ったよーーー!!」
嬉しさのあまり、氷華は感極まった。
妖怪討伐の実績も豊富な氷華が選ばれないわけもないのだが、それでもやはり嬉しいのには変わり無い様だ。
「私は……貴女が選ばれると信じてたわ……! だって一緒に強くなっていった仲じゃないの!!」
ライバルであり、戦友の選出に涙が溢れる雪羽。
2人の実力はほぼ互角といっても過言ではない。
それだけに選ばれていると信じていたようだった。
「良かった……本当に……」
「そうね……お互い、頑張りましょう? 雪女の未来のために。」
「うん! 頑張ろ! 雪羽ちゃん!!」
お互いに健闘を讃えあって2人は別れた。
と、そこへ、霜乃から声を掛けられた。
「ああ、おつかれ、氷華。……私は知ってる立場だったとはいえさ……緊張はしたよ……。」
「うん……お姉ちゃんもお疲れ様……。本当に……ホッとしたよ………。でも……これから頑張っていかないと!」
「うんうん、その意気だよ氷華。……ところで、アンタ、御当主様から直々に呼ばれてるよ。……行ってあげて。」
「え……?? 御当主様直々に!? ……心当たりが全くないんだけど……。」
「………話しておきたいことがあるってさ。……行ってあげなよ。」
「……わかった。行ってくる。」
「ああ、案内はするよ。初めてでしょ? そこに行くの。」
そういって霜乃が先導役となって、御当主様____霜之関雪子のところへ氷華は向かっていった。
そして到着した、雪子の書斎。
2回ノックをして、氷華はドアを開けた。
「失礼します!!」
そういって入っていった氷華。
奥には、脚を組み、白装束を身に纏って右手を頬杖として使っている、白い髪に、両眼とも赤い眼をした、絶世の美女が座っていた。
「………私めになにか御用でしょうか……御当主様。」
『御当主様』と氷華に呼ばれたその白髪赤眼の女性_____『雪女一族当主』、「霜之関雪子」が、王の玉座に座るかの如く、また御神体の如く、下に跪いた氷華を見下ろしていたのだった。
最後にチラッと姿を現した御当主様なのですが、なぜ、白い髪で、赤い眼なのかと言いますと、「アルビノティーマイナス」の雪女だからです。
この姿で生まれた雪女は、常に「邪眼」を使える状態で、雪女としての妖力はマジでバケモノです。つまり、氷華がマトモにやっても勝てません。無理ゲーです。他の雪女も彼女には勝てません。
このアルビノティーマイナスの雪女は、慣わしで次期当主とされており、先代との争いに勝てば当主就任可能となります。
氷華も無事、10傑に選ばれて、立場も良くなったことですが、御当主様は後々キーマンになってきますので、抑えといて損はない人物です。次回はその御当主様と氷華の面会のシーンからお送りします。
また、登場人物紹介では、霜乃を紹介します。
「新世代10傑」の方も、後々掘り下げますので、そちらもよろしくお願いします。特に雪羽を。




