14th SNOW お盆の季節と雪女一族の集い
時系列は海の帰り道です。雪女一族のしきたりを書き記したいと思います。
この回で雪宮三姉妹の両親が初登場となります。
さて、登場人物紹介のコーナー。今回は玲香を紹介します。
黒川玲香 17歳 162センチ A型 3サイズB82W57H80 5月4日生まれ
氷華の友人の一人。霊能力のない普通の人間。三つ編みメガネが特徴。成績常にオール5。腐女子でもあり、イラストも上手いが、描く絵はほぼBLモノ。
都姫とは幼稚園からの幼馴染み同士。氷華と梢とは中学生の時からの付き合い。学年最上位クラスなのだが、オフはオフでメリハリはつけるタイプ。量より質派。勘が鋭いタイプで、実際グループを裏で主導権を握っているのは玲香だったりしている。
電車内での帰り道。
5人は疲れ果てて眠りこくっていた。
そしておよそ2時間後。
目が覚めた氷華はいつのまにか車内に一人だった。
(うわっ、マジか。寝過ごした……。てかメール入ってるじゃん! ……え、なになに? 『アタシら荷物あるから先降りる』……って……。まあ、仕方ないか。それは。てか今ここどこ!?)
ここでアナウンスが入る。
『間もなく、銀座、銀座です。降り口は左側です。』
え!? 銀座!? 家まで遠い!! そう心の中でツッコミを入れた氷華。
ただ、同時に腹も減っている。
お金は一応持ってきているし、何か食べていくか……。
でもどこにしようか……。
「……お母さんのところいくか……。」
そう思い立ち、銀座駅で電車を降り、母・吹雪の働いている料亭を目指した。
母が女将として働いている料亭『山吹』。
ミシュランでも二つ星がつけられているほどの地元では隠れ家的な名店だ。地下にあって店自体もそこまで大きくないのだが、味は確かだ。
厳かな雰囲気も相まって、お盆の時には毎年家族で食べに来るほどの御用達。
それに隠れ家なので氷華の年齢でも普通に食べられるほど値段もリーズナブルだ。
氷華は地下に降り、ドアを開けた。
ガラララッ、という音と共に氷華は店に入った。
「いらっしゃいませー……って、アレ? 氷華? どうしたのここに来て。」
吹雪は驚いた表情をしている。
それもそうだろう。
わざわざ我が愛娘がこんなところに足を運んできたのだから。
「いやー……友達と海行った帰りで寝過ごしちゃって……。それでここ来たんだけどさ……。」
氷華の事情を聞いた吹雪は笑っていた。
「あらあら、よほど疲れてたのね、氷華。……とりあえず、いつものでいい?」
「うん。ありがと、母さん。」
こうして吹雪は懐石料理を作り、氷華に提供した。
氷華がこの店で一番好きなセット料理。
久しぶりの母の料理をゆっくりと味わいながら、氷華は食べていった。
「それで、氷華ちゃん、今年のお盆もまた来るんかい? 家族でさあ。」
この店の店長の山吹栄五郎は氷華に今年のお盆のスケジュールを聞いてきた。
栄五郎は父・誠の親友で、吹雪の兄弟子的存在で、吹雪と栄五郎の師匠は今は亡き先代の店長。
ちなみに誠に吹雪を紹介したのも栄五郎だったりしている。
つまり、家族ぐるみで付き合いがある間柄だった。
尤も、栄五郎自身はごく普通の人間なのだが。
「うーん……どうですかね……。今年は親戚の集まりが横浜でありますから……。そこは父さん次第なんですけど、今年は特に何が起きるかわかんないもので……。」
「そーかあ。難しいもんだな、あいっかわらずさあ。で? 誠は今帰ってきてんだろ?」
「え、ええ……。多分帰ってきているんじゃないかと思います……。父さん、有給取るって毎年言ってるんで……。」
「ほんで、吹雪はどうよ? 今年の事情は。もし来るんだってなったら振る舞ってやるぜ? サービスで。」
「まあ、氷華の言う通りですよ。今年は氷華にとって大事な集まりですから……。といっても私もまだわかってないんですよね。詳しいことは。」
「そーかい……。わりいな氷華ちゃん。ヤボなこと聞いちまって。」
「いえ……店長さん、お心遣いありがとうございます。」
雪女の一族は毎年お盆と正月の時期に、全国にいる雪女一族3万人の集いがある。
特に17歳の氷華にとっては一族の人生を左右する、4年に一回の取り決めの年だ。
一族3万人が集まって入れるほどの巨大な屋敷が横浜にある。
そこで毎年親戚が一同を介するのだが、女しかいない集いだ、バチバチになるのは必至だった。
氷華はそういう無闇な争い事を嫌うため、本音は行きたくないのだった。
と、ここで栄五郎が話を変えてきた。
「ところで氷華ちゃんよぉ……。」
「は、はい、なんでしょう。」
「………そういやあ最近氷華ちゃんのところに転校生が来たんだろ?背の高い、カッコいいアンちゃんが。」
「え、ええ……。」
「ぶっちゃけ……どうなんだい? ソイツに気はあるか??」
氷華に対し、悪戯に笑顔を向ける栄五郎だった。
どうやら晴夜のことを言っているらしい。
「せ、、席も隣ですし……確かにカッコいいなと思いますけど……その……」
「ハハハ、照れるなって。……誠も、吹雪を紹介したらさ、アイツ一目惚れしちまってよぉ、そっからラブラブなんだぜ?今でもよぉ。……氷華ちゃんの顔見てたらそんなこと思い出すわ。」
「ち、違いますから〜〜〜!!!! そんな関係とかないですって!!」
豪快に両親の紹介秘話での交際する裏話を栄五郎から聞かされ、赤面しながら氷華は否定した。
だが、ここに吹雪も乗っかる。
「フフ、氷華? 付き合っちゃうなら……早いうちがいいわよ〜? 霜乃なんて未だに彼氏いないんだから先越しちゃいなさいよ。母さん、応援しちゃうから♡」
「母さん! だから違うってば!!!」
厳かな雰囲気が一瞬にして和やかになった瞬間だった。大人の恋愛話に子供が入っているような状況ではあったのだが……。
他の客がいないのも、この雰囲気に幸いしていたのだった。
色々ありながら帰宅した氷華。
そしてリビングに入るや否や、パンツ一丁の男がテレビを見ているのを見かけた。
……父・誠だった。
「……父さん……」
「おう、氷華おかえり。……ってどうしたよ、そんな顔してよ。」
「いやそりゃおかえりだけどさ、こっちこそ。……なんで帰ってきて早々パンイチになってんのよ!! みっともないわ!! 氷衣露もいるんだからせめて服着てよ!!」
「いいじゃねーかよ暑いんだから。」
「そういう問題じゃないって!! てか氷衣露もなんで注意しないの!! 思春期真っ只中なんだよ!? アンタは特に!!」
そばにいた氷衣露にもツッコミを入れる氷華。
だが当の氷衣露本人は淡々としていた。
「氷華ねーちゃん、いいじゃん別に。いつものことだし。」
「ちょっとは気にしろ!! そういう問題じゃないから!! コンプライアンスってもんがある!! てかお姉ちゃんは!?」
「ああ、霜乃なら風呂だぞ。……というか、氷華は遊んできたんだからお前も早く風呂入っとけよ。」
「父さんお気遣いどーも。入ってきますよー。」
そういって氷華は洗面台へ向かっていった。
そして8月になった。
事前に宿題を終わらせていた氷華は、集いに向けて、学生の正装でもある制服を着ていた。
雪女の集いは、一家の父親は裏方として料理を提供したり、雑働的な立場。
誠も例外ではない。
「準備できた? みんな。」
吹雪が声を掛ける。一様にみんな返事をした。
「よし……それじゃ、いくぞ。横浜に。」
こうして、雪宮一家は横浜へ出発していったのだった。
走らせること1時間半。
物凄く大きい、煌びやかな屋敷だ。
「……やっぱり相変わらずデカイなあ。」
氷衣露がつぶやく。
「氷衣露。呆気に取られてないで、入るよ。……もうそろそろで始まるから。」
霜乃に促され、一家は会場へと入っていった。
そしてこの後、氷華にとって、大事な取り決めが始まりを告げる合図、そして氷華の運命を左右する出来事がこの屋敷で待っているのだった。
吹雪は今年で46歳になりますが、めちゃくちゃ美人で、見た目は20代後半です。雪女の実力としては、全盛期はかなり強かったとのことです。まあ吹雪の戦闘描写を書く予定はないのでアレですけど。
さて……次回はめちゃくちゃ情報量が多くなりますんで、僕の方も全力で書きたいと思います。
登場人物紹介のコーナーは都姫を次回で紹介します。乞うご期待ください!




