105th SNOW 満月の狼
この回は若干長め、というか、濃いめの濃口醤油です。
今回の登場人物紹介、今回は寒奈です。
氷柱山寒奈 14歳 中学2年生、氷柱山家次期当主 11月2日生まれ B型 162センチ 3サイズB81W55H82
氷柱山家次女で、次期当主。
氷衣露とは幼馴染で親友同士。(学校も一緒)
次期10傑候補の1人で、魔導系は現10傑にも引けは取らない。
明るい氷衣露に対し、社交的な反面、冷静な性格でもある。
イルカが好きで、冷奈が修学旅行に行く際には写真を撮ってきて欲しいと頼むほど。
姉妹仲は良好で、冷奈にも分け隔てなく接することができる。
雪子の夜襲宣言にざわめき出す雪女達。
雪子は更に話す。
「現状では優勢ではあるが……向こうは奇襲などと焦っておる。それは不利だからじゃ。だからこちらから攻める。夜襲など、向こうは想定外じゃろうからの。」
尚も響めきを隠せない雪女達だが、ここで雪美が手を挙げた。
「御当主様……御言葉ですが、今回の戦いで持久的な部分がある雪女が少ないですし……いくら奇襲が来るとはいえ、今は体力の回復に努めるべきではないでしょうか?」
雪美の言うことも尤もで、邪眼は1時間しか保たないため、リスクがかなり大きいのが事実としてあった。
更には10傑でも閻魔眼を使える雪女は、現在は氷華しかいない。
その中で夜襲は戦力にならない雪女が多いため、雪美は翌日に備えるべきだというのが案であった。
だが、雪子はそこも計算済みだった。
「雪美、そこは問題はない。ワシと氷華……そしてあと2人、これだけで連れて行こうと考えておる。」
「少数精鋭で襲撃する……というわけですね? 余力のあるメンバーを揃えて。」
「その通りじゃ。一気に戦力を注ぎ込んでも、それを悟られては逆に手薄になって不利になってしまう。だから4人で襲ってただの奇襲だと思い込ませて、一気に昼茂の首を取る。そこで、じゃが……誰か有志はおらぬか?」
またざわめき出す雪女達。
躊躇が生まれるのも当然で、邪眼が何分保つかも分からない状況下で、手を挙げるものはなかなか現れない。
と、ここで手を挙げた者が。
「アタシが行くよ。まだ邪眼も使っちゃあいねえし、な……」
小雪だった。
表情からしてまだ余力の残っていそうな雪女筆頭だった。
「小雪、か……行けるな?」
「任せといてくださいよ……アタシにはとっておきがあるもんで、な……早く戦いたくてウズウズしてんですよ……」
小雪の目から狂気的なオーラが漂っている。
余程の自信の現れなのか、はたまた只の戦闘狂なのか……とはいえ、雪子にとっては頼もしい存在である。
さて、問題はあと1人なのだが……これがなかなか上がらない。
「あと1人はおらぬか? 誰でも良いぞ?」
しばらくの沈黙が流れたあと、雪女でない者が1人、手を挙げた。
「アタシが行くわ……このメンバーだったら荷が重いけどね?」
天狐だった。
天狐もこの戦いに向けて、並々ならぬ決意で臨んでいた1人である。
「……晴夜の『女狐』か……死をも恐れぬ覚悟はあるか?」
雪子が凍てつくような目で問う。
天狐はこれを見て、一層覚悟を決めた。
「……たしかにアタシは……元々牛鬼の部下だったから正直複雑な気持ちよ。でも晴夜のため、っていうなら……アタシはアイツのために戦うし……晴夜が氷華と付き合ってる、っていうなら雪女のために命を捨てる覚悟はできてる。それに……指咥えて黙って見てろっていうのはアタシの性に合わない。だから行かせて。」
雪子は氷華の方を見る。
氷華は行かせてやってくれ、という目で頷く。
雪子はこの事を受け、薄笑いを浮かべた。
「律儀じゃの……晴夜が気にいる理由も分かるわ。面白い奴じゃ……よし、承った。着いて参れ、女狐よ!!」
「ハッ!!」
こうして雪子、氷華、小雪、天狐の4人が天幕の前に躍り出た。
しかし、課題は残る。
第一の課題として、迅速に辿り着く必要があった事と、第二の課題として「樹木子」をどうするか、だった。
が、ここで小雪が前に出た。
そして上着を脱ぎ、上半身サラシの姿になった。
よく見ると、背中に狼の刻印が刻まれていた。
「!! 小雪、それって……!!」
氷華が驚きの声を上げた。
それもそうだ、小雪が「刻印者」である事を知らないのだから。
小雪は空を見上げている。
「……今日は満月、か……アタシの中の『人狼』が疼く……」
「え……!? 小雪、どういう事!?」
「アタシは『人狼の刻印者』さ……アタシは邪眼の使い勝手が悪いって……氷華姐には前に言ったはずさ……その理由がコイツさ。人狼と一緒に使わねえとアタシは妖力を過剰に消費しちまう。今日は満月、アタシは狼になるから……御当主様と氷華姐……狐サンはアタシの背中に乗ってくれ。」
「成る程のう……これで全速力で行く、というわけか。」
「その通りだ、御当主様……『血色解放』……『氷の人狼』!!!」
小雪の刻印が怪しく光り、赤い光があっという間に小雪を包んだ。
小雪の全身から毛が生える。
身体がどんどん狼に近くなっていく。
赤い光が消えたあと、小雪は完全に狼の姿になった。
青白い巨躯に、神々しさが見えた。
狼になった小雪は、大きく遠吠えをした。
「よし……乗るぞ、2人とも。」
「「ハイ!!」」
雪子は氷の手綱を作り出し、小雪は脚を思い切り蹴り上げて陰陽師の陣まで一直線に走って行ったのであった。
走る事30秒ほど。
樹木子の前に迫ってきた。
氷華はこれを見て立ち上がり、天叢雲剣を構える。
「御当主様……ここはお任せを。……邪眼第二段階『黒薔薇』……そして『閻魔眼』解放……!!」
氷華は一瞬でこの2つを解放し、触手を伸ばしてくる樹木子を相手に退かない体勢を取った。
「天叢雲剣剣術……!! 『天翔ける竜の蹄・神速』!!!」
小雪の頭に乗り、膝を思い切り屈伸して勢いよく、目にも留まらぬ速さで飛び出した。
「黒薔薇」でスピードを極限まで高めている氷華を、樹木子の触手が追いつくはずもなく。
氷華は天叢雲剣で幹を一瞬で一刀両断してみせた。
樹木子は、血の樹液を垂れ流し、ズズズズズズズ………と、ゆっくりと崩れ落ちた。
バターン!!! という音と共に、樹木子は消滅した。
氷華は余力の温存のため、これを一旦解いた。
「ハッ……やるじゃねえか、氷華姐。」
「これで憂いはなくなった。次は……ワシの番、じゃな。このまま突撃するぞ、小雪。」
「仰せのままに。」
氷華が再び小雪に飛び乗った瞬間、小雪は邪眼を使ってスピードを上げ、陰陽師陣営の天幕を爪で突き破った。
入ってきた4人に対し、陰陽師の方は動揺と驚きを隠せなかった。
「や……!! 夜襲だァァァァーーーーーーー!!!!!」
突如襲ってきた雪女達に総じてパニックに陥る陰陽師の雑兵達。
雪子、氷華、天狐は飛び降り、戦闘体勢に入った。
「雑魚どもに用はない……ワシらの狙いは諏訪朝吉と……土岐昼茂だけじゃ!! そこを退け!!」
雪子は氷の術を放つべく、冷気を収束させた。
「小雪、氷華、女狐。まずは諏訪を討ち取れ。ワシは昼茂を探し、一騎討ちを仕掛ける故。頼むぞ。」
「「「了解!!!」」」
3人は走り出していく。
諏訪を仕留めに。
「さーて……そこを通してもらおうかの!!! 雪女魔導結界奥義……『凍獄の世界』!!!」
一瞬で冷気が陰陽師の雑兵を包んだ……と思った瞬間だった。
空気が割れる音と共に、冷気が一瞬で凍りついた。
雑兵の断末魔が聞こえる中、雪子は昼茂の居所を目指して進んでいくのであった。
次回は激闘の開戦となります。
ですが天狐が氷華と小雪のために体を張って……という感じで進んでいきます。
つまり、次回のメインは天狐です。
それに因んだタイトルにしたいと思いますので、お楽しみにしていてください。
七章完結まで秒読みのところまで来ましたので、僕も全力で書きたいと思います。




