103th SNOW 差し込んだ希望の光
この回は神回になると思う、個人的に。
登場人物紹介、今回は静波です。
亀井静波 27歳 Ω隊員、青梅警察署巡査長 4月5日生まれ AB型 162センチ3サイズB83W59H84
現在の北川のバディで、Ωの隊員を兼務している女性警官。
「馬仙院教」の潜入捜査を任命された人物でもあり、壊滅に最も貢献した人物で、北川、酒鬼原も認めるほど有能。
ただ有能すぎて本人が真面目な性格も相まって、彼氏がいた事がなく、それを気にしている。
静波自身は青黒い髪に涼しげな目の端正な顔立ちをしている。
性格は上記の通り非常に真面目で、クセの強いΩの面々のツッコミ担当になっている。
戦闘では猫又の刻印者ということもあり、俊敏性を活かした攻撃を得意にする。
剣道6段で、昨年の全日本選手権覇者でもある。
その頃横浜では、氷華は絶望感を覚えていた。
脱出ルートで天井裏から屋根まで脱出したのはいいが、庭には陰陽師の精鋭部隊が。
「嘘でしょ……!? なんでこんなに陰陽師が……!?」
「明らかに悪意があるね……どうする、氷華?」
氷華は拳を握りしめた。
逃げるには強行突破を図るしかないが、その後の逃げ道は保証されていない。
そういった意味では打開策がなかった。
だが諦めるわけにはいかない。
とにかく晴夜を逃がすだけでも展開はだいぶ変わってくる、そう判断した氷華は天叢雲剣を抜いた。
「晴夜……ここ、切り抜けるしかないよ。一反木綿を出して。まだ邪眼は温存しておかなきゃ、ここは。」
「いいけど……そのあとどうする気?」
「晴夜を一回逃して私は戦いに行く。そうじゃなきゃもう……今は晴夜を守る手段がない。」
いくら鈍感な晴夜でも流石に察した。
この状況、そして氷華が戦いに行くことの意味に。
「分かった。ただ……僕にもここだけは援護させて欲しい。氷華をただで行かせるわけにはいかないから。」
「……そこまで言うならお願いね、晴夜。」
「了解。」
晴夜は一反木綿を召喚した。
二人はその背に乗る。
「一反木綿……最高速で頼む!!」
一反木綿は晴夜の掛け声に共鳴し、屋根から庭へと突進していった。
突進してきた一反木綿に、精鋭部隊が反応した。
「来たぞ!! なんとしても晴夜を捕らえて殺せ!!」
精鋭部隊が術を次々と放っていくが、晴夜の巧みな操縦で捕まえきれない。
「頼むぞ! カイメイジュウ!!」
晴夜はカイメイジュウを召喚し、精鋭部隊を迎え撃つ。
「天叢雲剣剣術……『星迎撃』!!」
氷華は天叢雲剣を振り、飛ぶ斬撃を繰り出した。
「とにかくここはカイメイジュウに託そう! 建物の隙間はどっちだい!?」
「ここから北東!!」
「オッケー!」
晴夜は布をグイッと北東へと寄せる。
一反木綿もそれに従い、抜けようとしたが、脱出を読んでいたのか、またも待ち構える精鋭部隊。
が、氷華は冷静だった。
「任せといて、晴夜。一瞬だけ邪眼を使うよ……!! 凍結術『凍結の蛇女神』!!」
氷華が目を見開くと、氷華を見た陰陽師たちは一瞬で身体が氷になった。
これで抜け道は楽になった。
人気が消えたあと、二人は陰陽師の精鋭部隊から上手く隠れながら少しずつ、脱出へと向かっていった。
なんとか走って駐車場にまで到着した二人だったが……。
雪子邸を囲っている陰陽師たちに見つかってしまった。
「マジか……!! ここで全滅させる気だったのね……!?」
「その通りだ、雪宮氷華……さあ、晴夜を寄越せ。コイツは陰陽師にとって不都合なんだよ、存在そのものが、な……」
だが晴夜を渡すわけには行かない氷華は剣を強く握った。
「やなこった!!」
氷華は晴夜をおぶる。
そして「黒薔薇」のスピードで一気に蹴り出すと、瞬く間に集団を突っ切った。
氷華は晴夜を降ろし、また二人で走り去っていく。
「逃がすな!! 撃て、撃て!!」
陰陽師が次々と術を放つが、晴夜が召喚した塗壁で悉くそれは防がれた。
(かといって迎えに来るまで隠れるっていっても……いつ見つかってもおかしくないし……まだ何人いるかも分からない……でもなんとかするしか……!!)
氷華は途方に暮れていたが、今は耐えるしかない、と腹を括っていた。
と、そこに、一台の車が。
シルバーのその車には氷華は見覚えがあった。
「氷華!! 早く乗れ!!」
「え……と、父さん!?」
名古屋にいるはずの誠だった。
なぜわざわざここまで迎えに来るのかは予想外ではあったが、話は後、と考えて二人は乗り込んでいった。
が、ここでも陰陽師が追撃に来た。
銃弾を氷華達が座る補助席に向かって放ってくる。
これを察知した氷華は晴夜に「伏せて!」と叫び、割れた強化ガラスの隙間から、氷華は氷の銃弾で反撃した。
危機を脱した3人、氷華は誠に何故来たのかを尋ねた。
「父さん……なんでここまで……!? 仕事は!?」
「吹雪から連絡があってな……仕事を早上がりって形で夕方になる前に抜けてきたんだよ。氷華を助けてやってくれ、って。」
確かに吹雪も事情を知る一人だ、誠に頼んでいてもおかしくはない。
「た、助かったけど……わざわざ来なくても良かったんじゃないの!?」
いい意味で動揺する氷華に、誠は含み笑いを浮かべてこう答える。
「バカヤロウ……いくら生意気に育ったとはいえよぉ……お前は俺の娘だ、どんな状況だろうと行ってやるさ。」
父親として当然と言わんばかりの言葉、そのまま車は高速道路へと乗っていくのであった。
その頃、二人を逃した雪子は。
「さて……我が息子に手を出そうとした下賤な輩には……ワシ直々に鉄槌を下さねばな……」
高尚な笑みを浮かべる雪子、ゆっくりと歩み、手を駐車場のコンクリートに右手を置いた。
「『氷の領域』展開………『絶対凍結』。」
パキパキパキ………ヴァキャァァァァ……ン!!!
全てを凍らせる術を放ち、精鋭部隊は断末魔を挙げる間も無く凍りついたのであった。
「さて……ワシも向かうとするか……」
と呟き、冷奈に連絡を取った。
「ワシは戦場へと向かう。全ての決着をつけるためにな。あとは任せたぞ。」
『かしこまりました。』
雪子は連絡を切り、誠を追うように車に乗り込み、発進して行ったのであった。
次回は氷華と雪子が合流します。
登場人物紹介、次回は眞霜さんです。
お楽しみに。




