10th SNOW 泊まって行った結果。テスト後に呼ばれる氷華。そして新たな妖の情報。
まあそうですね……今回はパッパと終わります。ので、次章に向けての区切りとして考えてもらえればいいかな、と思います。あと、超久しぶりに加賀山先生が出てきます。次章に繋がる重要な情報を持っているので、必見です。
さて、前回後書きで紹介した、怜緒樹の紹介です。
小鳥遊怜緒樹 24歳 11月28日生まれ O型RHプラス 144センチ 3サイズB72W55H77
鵺の「刻印者」で、Σのエース的存在。普段は警察官で、役職は巡査長。10歳の時両親を鵺に殺されて以来、怜緒樹に乗り移った鵺と共に生活している。ちなみに両親の死後は祖父に育てられる。北川とは警察内でも直属の後輩。捜査第二課に共に配属されている。初めは鵺を追い出そうと試みていたが、16の時に共に妖を倒したことで和解し、今では重要なパートナーになっている。脾臓を捧げることで鵺の力をキープしている。猿、虎、タヌキ、蛇がそれぞれ眠っているので、これらのメンテナンスは欠かさない。
戦闘は近接戦闘特化型。鵺の力を格闘術に転換することで妖魔を退治する。また、鵺の力をそれぞれ使うこともできる。猿は毒霧攻撃を得意にしていて、またアドレナリンを過剰分泌することで戦闘力、集中力を上げることが可能。ただ、本人はあまり使わない。虎は戦闘中に最もよく使い、手足を虎の脚に変貌させることが可能。膂力は人間の30倍で、凄まじいパワーを発揮する。タヌキは防御特化で、氷華の「冥王星の環境」でギリギリ動けるくらいの氷結耐性を持ち、また熱攻撃もある程度カット可能。胴体のみ変換させる。蛇は滅多に使わず、普段は背骨に眠っている。顕現した時にはムチのように扱うことができ、また噛みつき攻撃がある。出血毒型の毒ヘビで、その毒はハブの50倍。人間なら20秒で死亡。妖怪に対してもある程度致命傷までは与えられる。
鵺の本来の力として「黒雲」を作り出すことができる。原料は炭素。体に纏って姿を見えなくしたり、それぞれの動物に纏い、技の威力を強化することもできる。硬度もダイヤモンドから燃やした後の脆くなった炭のような硬さまでに調整可能。
翌朝。
晴夜の家で目が覚めた氷華。
どうやらそのまま疲れて泊まることにしたようだ。
勿論、寝る前に霜乃には連絡済みだ。
霜乃は笑っていた。
まあ疲れて眠りこくって男子の家に泊められるというのはベタなラブコメでも展開がベタすぎるからだったのだろうか。
まあそんなことは置いといて。
晴夜の家のリビングで寝ていた氷華は全身筋肉痛になっていた。
それもそのはず、邪眼を解放し、「冥王星の環境」を使ったことで起こった筋肉痛だ。
全身が鉛のように重く、起き上がるだけでも一苦労だ。
と、氷華の鼻にある匂いが入ってきた。
白米の匂いだろうか。
テーブルに足を運ぶと、朝食が置かれていた。
白米にシャケの塩焼き、沢庵、味噌汁といった、超質素な食材だった。
味噌汁はインスタントではない、手作り。
晴夜は簡単なものなら作れるとのことで、なるほど、生活力は一般男子よりはあるようだ。
「あ、、あの……さ……。これ……二人で食べるの……?」
氷華は慣れない光景を目の前にし、つい聞いてしまった。
これに対して晴夜は、
「勿論。人を泊めているのに、もてなさない家主がどこにいるっていうんだい?」
「そ……それはありがたいんだけど……さ。そのー……なんていうの……。ふ……夫婦みたい……っていうか……。」
氷華は赤面していた。
女だらけの家庭で生まれ育ち、父も単身赴任であまり家にいない状況だからか、年頃の男子に対する免疫はゼロに等しかった。
シチュエーション的に恥ずかしくなるのも無理はない。
この言葉に晴夜も頬を紅くした。
晴夜も一人っ子だったので、しかも母親がいない家庭で育ったのでそういった経験がゼロだったのだ。
「ふ、夫婦って……! そもそも僕ら付き合ってないんだよ!? 僕はただ泊めただけっていうか、そのー、、と、とりあえず食べよ! 冷めちゃうからさ!!」
気まずく感じながらも二人は朝食を摂った。
意外にも普通の味だった。
氷華は、というと、終始赤面していた。そして、二人は学校に行く準備をして登校した。(氷華のカバンは事前に晴夜が預かっていたので氷華は授業の道具を忘れることなく持っていくことができた。)
登校後、氷華は机に突っ伏していた。
筋肉痛の影響が大きいのだろうが、なるべく動きたくないのが本音だった。
そこに都姫がおはよう、と声をかける。
「お…おはよ…都姫…。」
力のない声で挨拶をした氷華。
それに都姫は心配したようで、
「ひょ、、氷華ちゃん、お疲れモード……? 朝から……。何かあったの…?」
「いやー、、ちょっと体動かしすぎてねー……アハハ……。全身筋肉痛だよ…。」
「もう……。帰ったらしっかりお風呂入んなよ? 疲れも取れるし勉強も捗るし。」
「そうだね〜…。そうさせてもらうわ〜……」
これを梢と玲香は笑いながら話を聞いていた。
そんなこんなで約二週間後。
テストが始まり、9教科を3日かけて終わらせた。
最後の教科が終わり、ひと伸びしていると、突如、担任の加賀山から声をかけられた。
職員室に来い、とのことだった。何かあったのか……。
とりあえず話を聞きに職員室に、氷華は行くことにした。
そして職員室に到着した氷華は、応接室内で加賀山の話を聞くことにした。
だが、悪い話ではなさそうだ。
これはオフレコで頼みたいんだが、と切り出した加賀山は、こんなことを氷華に聞いてきた。
「雪宮、お前は……妖怪とか、そういうのは見えたりするか?」
突然何を言い出すんだこの人は……そう思った氷華はわけが一瞬わからなかった。
「え……? 先生、どういうことですか……?」
すると、加賀山はスマホの写真を見せてきた。
そこにはバカでかい、「写ってはいけないもの」が写っていた。
なぜ、普通の人間にコレがキチンと取れているのか……氷華の謎は深まる。
「これがわかるか…? 亡くなった妻が事故に遭った時、俺に送ってきた写真だ。」
「………え……?」
思考が止まる氷華。
亡くなった奥さん? どういうこと?? 加賀山は続ける。
「これは3年前に送られたものでな……。娘の保育園の迎えに行った帰りにコイツに襲われて……妻と娘は命を落としたんだ。……死ぬ間際に妻が決死の想いで送ったんだろうがな……。俺は元々霊感が強い方だったんだが、妻と娘の死後に更に強くなってな……。調べたら『牛鬼』って妖怪らしい。」
「!!!」
牛鬼____。
それは氷華が追っていた妖怪だった。
姉の右眼を奪い喰らった張本人で、雪女一族が襲われ始めたのは3年前。
それ以来、警戒するべき妖怪だと、一族間では言われていた。
時系列は合う。
加賀山が嘘で生徒にこんなことを伝えるとは思えなかった。
「……やっぱり見えるんだな……。雪宮。悪いことは言わない。こんなオッさんの頼みで申し訳ないんだが、、コイツを討伐してくれないか? お前の家のことも調べているからこそお前に頼みたい。」
目が真剣だった。
無下にするわけにはいかない。
氷華も包み隠さず話すことにした。
「………その妖怪はものすごく強いですよ……。姉もコイツに襲われて大怪我しましたから……。一命は取り留めましたが、それ以来姉は一族から軽蔑されていて……。雪女の力が消失したので……。だから、、絶対に仇を私が取りたいと思っていました。」
おそらく加賀山も同じ想いなのだろうが、氷華は怒りが噴出していた。
だが、かつて『神童』と言われた霜乃で倒せなかった強敵だ。
自分にできるのだろうか___不安がよぎる。
「とにかく頼みたい。おそらく……お前にしかできないことだ。」
「……わかりました…検討しておきます。ただ、その代わり、、先生、一つ、約束をしてもらえますか?」
「おう。なんでも聞くぞ。」
「今言ったことを……他の先生には言わないでもらえますか? そうでなければ私も動けないものですから。」
「ああ。勿論だ。俺個人の頼みだからな。」
「ええ……では。」
そういって氷華は加賀山の右手を取った。
そして、加賀山に妖力を送る。
「雪女宣誓術『血盟の契り』」
この技は常時発動する技で、他人との約束事を守る時に使用される。
雪女は約束を守らない人間に死を与える。
それがこの術だ。
つまり、お互いに命を賭けるということになる。
「な……何をした……?」
戸惑う加賀山をよそに氷華はこう答える。
「雪女の前で軽々しく約束を守る、なんて言わない方がいいと思います。最悪、先生があの世行きになってしまうので……。私だってこのような技は使いたくないのですが……。先生の覚悟を、今後試させてもらいます。」
「……ああ。わかった、頼むぞ、雪宮。」
こうして、氷華は職員室を後にし、帰路についた。
次章に繋がる内容といいましたが、牛鬼編はかなり長くなりますんで、その心算でいて欲しいかな、と思います。タフで低音にも強い妖怪で、また、一番タチが悪い武器が「影舐め」といって、影を舐めて一瞬で命を奪う技を持っています。霜乃の右眼を食ったのもコイツです。パワーもエグい強敵なのでかなり長くなるかな、ってなりますね。普通に。
さて、次回は相澤を紹介します。第二章も開幕するので、次回もぜひお楽しみに。




