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春の訪れ

作者: 遊々

 冬の凛とした空気はなりを潜め、最近空は表情豊かになってきた。蝶々は春の陽気に誘われて、固い蕾を広げた花々の近くで華やかなダンスをしている。

 なのに目の前の男ときたら、一人だけ冬に置いてきぼりにされたみたいに暗い顔をしている。ちなみにこの男は私の婚約者だ。

 太陽の日を浴びて眩しいほどに輝く金髪も、青空のような瞳も、暗く陰った表情が台無しにしていた。いや、ある意味憂いを帯びて美しさは増しているのかもしれないけれど。せっかく春になったのに、何故こんなに辛気臭い顔を見なければいけないのかしら。


「ちょっとアル、せっかくこんなにお天気がいいのに貴方のせいでどんより曇り気分になっちゃうじゃない」


 声をかけてみるが、アルから返事はない。何かに思い悩んでいるようで、私の声など耳に入っていないようだ。

 どうしたものかと思っていると、私の侍女のメアリーが彼の様子を見かねて声をかけた。


「アルフレッド様。そのようなお顔をしていましては、エリーお嬢様のご機嫌を損ねますよ」


 優しいその声にハッとしたように、アルは顔を上げた。


「…そうだね。ありがとう、メアリー。…ごめんね、エリー」

「全くだわ。しょうがないから許してあげる」


 そう言えば、彼はやっとこちらを向いて小さく笑った。ああ、アルのこの顔が好きだわ。だけどすぐに、また暗い顔をして下を向いてしまった。私はアルの、笑った顔が好きなのに。ちょっと拗ねたようにしてみても、全然反応してくれない。アルは一度考え事をしたり、何かに集中したりするとすぐに私のことを忘れて自分の世界に入り込んでしまうんだから。そんなところも好きだけれど、少し寂しいわ。

 だから、いつものように私がアルに一方的にお話をした。最近見た綺麗なバラのこととか、弟が勉強を嫌がってこっそり抜け出してお母様にたくさん怒られたこととか。全然聞いてないのかもしれないけれど、私が話したいからいいの。たまにアルが笑ってくれれば、それで十分だから。


 メアリーがせっかく淹れてくれた紅茶は冷めてしまったみたい。だけどアルが紅茶を飲むまで私も飲まないって決めているから、少し残念だけど諦めるわ。

 いつもならすぐにでも飲むのだけれど、アルにとっては今日の悩みはメアリーの紅茶よりも重要みたい。

 ……何で悩んでいるのかは、何となく分かってる。アルには、好きな女の子がいるのよ。平凡な容姿の私とは違って、とても綺麗で素敵な子。実を言うと、私のお友達なの。彼女の方もアルのことが好きみたいだから、私には秘密の恋を二人でしているの。バレバレなのだけれどね。

 私がアルを縛ってしまっているから、アルは思い悩んでいる。それを見るのは、酷く辛い。


 私とアルの両親は仲が良くて、自分たちの子供を結婚させよう!なんて盛り上がっちゃって婚約を結ぶことになったらしいの。まあ政略結婚をするにしても、アルの家と私の家は釣り合いがとれててちょうど良かったっていうのもあったみたいだけれどね。

 だから、小さい頃から私とアルは婚約していた。私はアルのことが好きだったから嬉しかったけれど、アルはどう思っているのか今でも分からない。

 だけど、好きな人が出来た今、なんだか申し訳なくも思ってしまう。私の存在が、アルの恋の妨げになってしまうなんて。私はアルが好きだけれど、アルには幸せになって欲しいから。それくらい、アルは私にとって大事な人なの。


 そんなことを考えていると、視線は合わせずにアルはこちらを向いた。


「ごめんね、紅茶を飲むのを忘れていたよ。エリーはメアリーの淹れた紅茶が好きだったのに。いつも僕より先には飲まないから、飲めなかったよね」

「そうよ!美味しい紅茶が冷めてしまったわ!」

「…でもごめん、今日は気分じゃないから遠慮しておくよ」

「…そう。なら仕方がないわね。メアリーには悪いけれど、今日はやめておきましょう」

「長居しちゃったね。そろそろ帰るよ。……今日も楽しかったよ。ごめんね、いつも上の空で。気をつけようとは思ってるんだけど…」

「アルがぼんやりしているのなんて、いつものことじゃない。私は気にしていないわ。ほら、帰るのでしょう?見送るわ」

「……いつもありがとう、エリー」


 切なげに、愛おしそうに微笑まれて、私は頬が熱くなるのを感じた。

 急にそんな顔をするなんて反則だわ。…でも、とっても素敵だったから私の話を聞いていなかったことは許してあげる。


「…エリー。明後日、デートをしよう。いつもみたいに、出掛けよう」

「まあ!ええ、ええ、出掛けましょう!」


 しばらくずっとアルとお出掛けをしていなかった。アルが誘ってくれなくなったのだ。忙しいのかしらと思っていたから何も言わずにいたけれど、ずっと寂しかったのよね。

 とっても嬉しいわ!


 踊り出しそうな気持ちを抑えて、アルと一緒に玄関扉へ向かった。私はいつもここで見送るので、今日もこのままここでお別れをする。


「気をつけて帰るのよ、アル。またね」

「…さよなら、エリー」


 いつもは『またね』って言ってくれるのに、今日は『さよなら』なのね。鼻歌を歌いたいくらいの陽気な気持ちは、風に吹かれて何処かへ飛んで行ってしまった。

 アルの心が、もう私にはないって事かしら。思わず俯いてしまう。

 辛いけれど、アルの為にもこの辛い気持ちを乗り越えなくては。顔を上げたときには、アルはもう馬車の方へ向かっていた。

 馬車の近くには何故か両親と弟がいて、アルと何かを話している。アルも、私の家族も皆暗い顔をしていて、あそこだけ大雨でもくるのかしらってくらいどんよりとしている。

 話を終えてアルが馬車に乗り込むと、それを両親と弟が心配そうな顔で見送っていた。アルを見送ると、弟は走って自室の方へと向かって行った。いつもはそれを咎めるはずの両親は今日は咎めず、私の方をしばし見た後、私の横をすり抜けていった。

 声をかけようと思ったのだけれど、あまりにも悲しそうな顔をしていたので声をかけることは出来なかった。


 もしかして、私が知らされていないだけで、アルとの婚約はもう解消されてしまうのかしら。アルたちはそのことを話していて、私に言えなくて、あんな顔をしていたのかしら。

 アルも、私の家族も優しいからありえるわ。久々のデートも、この婚約の最後にとアルが私の為にしてくれようとしているのかしら…。なんだかそれが真実に思えて、空は晴れているのに心をどんよりとした雲が覆った。


 でもどうして私に皆は婚約解消の話をしてくれないのかしら。私は聞き分けの悪い方ではないし、傷付くとしても、前向きな性格だからすぐに立ち直れる方だと思うのだけれど。

 もしかして、私に話したら婚約解消をごねると思って、それで話せなかったのかしら。もしそういう風に思われているのならば、納得がいかないわ!私は好きな人の幸せを願えないほど狭量ではないのに!

 本当にそうだったら許さないんだから。明後日のデートの時に確かめなくちゃ!



 ◇◇◇



 悲しような、嬉しいようなデートの日。

 昨日アルから素敵なワンピースが届いたので、それを着ているの。アルとデートするときはよく街に遊びに行くのだけれど、街の女の子たちが来ているワンピースが可愛くて、いつもアルにはワンピースを贈ってもらっていたのよね。

 自分で着れるようになりたくて、メアリーにどうやって着るのか教えてもらったりして。髪型やお化粧も、全部やり方を教えてもらって、いつの間にか街へ行くときの身支度は全部自分で出来るようになったのよね。

 自分のことがまるで全部自分で出来るようになったみたいで誇らしくて、またそれだけアルとデートをしたってことだから、嬉しくて。

 この身支度の時間は大好きなの。

 準備を終えると、ちょうどアルが来たみたいでメアリーが呼びに来た。


「エリーお嬢様、アルフレッド様がお迎えに上がりました」

「ええ、今行くわ」


 逸る気持ちを抑えてゆっくりと優雅に、でも早足でアルの元へと向かう。玄関扉の前には、私に合わせて良いところの商人のお坊ちゃんみたいな格好をしたアルがいた。


「アル!お待たせ」

「エリー。そのワンピース、よく似合ってるよ」

「ありがとう」


 とっても嬉しい言葉のはずなのに、辛そうな顔で俯いたままのアルの様子にちょっとムッとする。


「全然見てくれていないじゃない!そういう言葉は私の姿を見てから言ってほしいわ」

「……そろそろ行こうか」

「もう!…行きましょう」


 きっとアルは照れているんだわ。きっとそう、そうに違いない!

 怒りが収まらないまま、アルに手を引かれて馬車に乗り込んだ。



 馬車に揺られながらいつものように私が一方的に話し、アルがそれを黙って聞いていた。いつものことだし、贅沢は言わないけれどせめてちょっとぐらい聞いてくれても良いと思うのよね。

 私をちゃんと見て、それで今日の姿を褒めてくれたら許してあげてもよくってよ。そんな意地悪なことを考えている間に街に着いた。


 街に着いてからは、色々なところに行った。よく行った噴水広場や流行りの帽子を買ってくれたお店、メアリーの紅茶によく合うお菓子が売っている街一番の菓子店。どこも昔に一度は訪れたことのある場所で、なんだか私とアルの関係が昔に戻ったみたいで嬉しかった。

 最後に訪れたのは、一番好き好んで行った雑貨屋さんだ。ここに売っている小物はどれも可愛くて、ここで買ったものを今でも部屋に大切に飾っている。

 ルンルンとした気分で店内を一人でまわっていると、アルが一つの髪飾りを手に持っていた。あれは以前私が欲しいなと思って、でもお小遣いの関係で諦めた髪飾りだ。(お父様にねだってもらったお金を、金額を決めていつもデートのときに持って行っていた。その時は他にも色々買っていたからお小遣いが足りなくなってしまっていたのよね)


「まだ、あったんだ…」


 それをどうするのかしらと思って見ていると、それを持って店主に声をかける。


「すみません。これが欲しいんですが」

「はい…あら、アフルレッド様!お久しぶりでございます」

「お久しぶりです」


 旧友に会ったが如く、柔和な空気を醸し出していたのに、二人はすぐに暗い顔になってしまった。


「もう…ご来店になられることはないのではと思っておりました。ここには、よく二人でいらっしゃってましたから…」

「僕も、もう来れないんじゃないかと思ってました。でも、やっと…少しだけ、前を向けそうなんです」


 どうしてもう来れないと思ったのか、何に対して前を向けそうなのか。聞きたいことは山ほどあったけれど、今日会ってから初めて見せてくれた笑顔に見惚れて、すぐに頭の中から溶けて消えてしまった。


「これ、まだあったんですね」

「エリー様が気に入ってましたから。それは特別に、ずっと先約があると売らずにおきました」

「……ありがとう。これを下さい」

「はい。お包みいたしますか?」

「お願いします。緑の…エリーの色のリボンで」

「いつものように、ですね?」

「はい…」


 小声でこそこそと話すようにやりとりする二人の会話が聞こえてしまった私は、何食わぬ顔をして二人の近くを離れた。

 顔が熱い。あれは、私が聞いちゃいけないやつだったわ!

 …よく、緑のリボンに包まれたプレゼントをアルはくれた。どうしていつも緑のリボンなのかしらと思っていたけれど、私の瞳の色だったのね。

 私は燻んだ緑の瞳だから、鮮やかな緑のリボンと繋がらなくて、どうして緑だったのか分からなかった。

 今更気付くなんて、なんて私ってお馬鹿なの。今までずっと私の色を選んでくれていたことに、長い年月を感じてどうしようもない喜びと好きの気持ちが溢れ出す。

 私は良い女ですもの、気づかなかった振りくらいなんてことないのよ。そう、なんてことない…。早く顔の火照りが冷めることを祈った。



 お互い何も知りませんよという顔をして、二人で雑貨屋を出た。馬車に乗り込み、最後に向かったのは私の先祖代々が眠る墓地だ。

 馬車を降り、アルは何の表情も持たぬ顔で一つの墓の前に立った。


 そういえばデートが楽しくて、すっかり婚約解消のことを私がごねると思って黙ってたんじゃないかって話をするのを忘れていた。

 でも、もういいわ。今日がとても楽しかったから。この思い出を胸に、私はアルの元を離れるから。


 ……本当はね、全部分かっているの。ただちょっと、昔読んだ本に恋に破れた女性の話があって、その主人公みたいに振る舞ってみたかっただけ。だって私、本当は舞台女優に憧れていたのよ?これは両親には内緒ね。


 アルは今、私の友人と婚約している。()()()()()が事故で亡くなってしまったから、新しい人が婚約者になったのだ。アルの新しい婚約者は私の友人で、とっても器量が良くて素敵な子。彼女は黙っていたようだけれど、ずっとアルのことが好きだったのよ。私は見て見ぬ振りをしていたけれど、こんな平凡な女がアルの婚約者をしていて、なんだか申し訳なく思っていた。胸は痛むけれど、彼女の方が間違いなくアルとお似合いだし、一度真剣にアルの幸せの為に引くべきかと考えたこともある。

 それがバレて、アルに物凄く怒られたけれど。今となっては懐かしい思い出だ。彼女なら、間違いなくアルのことを幸せにしてくれる。


 一昨日も、今日も、アルは私との思い出をなぞるように、まるで()()()()()()()()()()()()振る舞っていた。

 きっと、彼なりに心の整理をつけようとしていたのだろう。突然貴方の前からいなくなってしまったからか、アルは私がいないことに慣れるのに三年もかかってしまった。

 アルが涙に暮れる日々は、見ていられなかった。魂が抜けてしまったように、毎日ぼーっと過ごしていて、時折私の名前を呼ぶのが辛かった。だけど、アルの両親や、今の婚約者である私の友人の尽力により、彼は少しずつ立ち直って行った。

 私の友人がアルの婚約者になったのは、私がいなくなってからの彼を支え続けたことが大きかったのではないだろうかと、私は思う。

 アルはまだ、彼女に対して親愛の情以上は持っていないようだけど、それも時期に愛情に変わる。誰よりもアルを知っている私が言うのだから、間違い無いわ。

 きっと二人はいい夫婦になる。生まれてくる子供は、二人に似てとても綺麗でしょうね。二人の子供の顔を見れないことだけが心残り、なんてね。


 …ねえ。だから、アル。


「エリー…どうして僕を置いて行ってしまったんだ」


 もう私のことは忘れて、幸せになって。

 私の墓石の前で立ち竦み、小さく震えるアルの姿が辛くて目をそらす。


『男の子なんだから、泣かないの』


 思わず口からこぼれ落ちた言葉に慌てるが、アルに私の言葉はもう届かない。ほっと安心したのも束の間、私の言葉に呼応するようにアルは小さく言葉を漏らした。


「君はよく幼い頃に僕が泣くと、男の子なんだから泣かないの、って言ったよね」


 頬が濡れて、雨でも降っているのかと空を見上げても、眩しい程の青空が広がっている。聞こえているわけがないと思いながらも、私はアルに言葉を返した。


『だってアルったら、とっても泣き虫なんだもの』


「僕が泣き虫を卒業したら、少し寂しそうにしながらも『大人になったわね』なんて、大人ぶって言ってたね」


『なによ。二歳上なのだからアルよりお姉さんなんだもの、いいじゃない』


「僕が泣かなくなったのは、君が大人な人が好きだって言ってたからだよ。エリーに僕のことを好きになって欲しくて、僕は必死だったんだ」


『………そうだったのね』


「でも!君がいなくなって…僕はまた、泣き虫に戻っちゃったんだ。ねえお願いだよエリー。また僕に、いつものように泣かないのって、そう言ってよ!」


 嗚咽を漏らしながら墓石の前で泣き叫ぶアルに、私はかける言葉を持ってはいなかった。

 どれくらい、そうしていたのだろう。地面に膝をつき、ひらすらに泣き続けていたアルは懐から可愛く飾られた、小さな紙袋を取り出した。酷く歪んだ視界の中で、輪郭を失いながらも紙袋を飾るそれが、緑のリボンであることがハッキリとわかった。


「エリー。君にプレゼント。ずっと…渡せなかったから。本当はもっと早く、君に渡そうと思っていたんだ。こんなに時間がかかってしまって、ごめん」


『いいの、いいのよ。ありがとう、アル』


「……今でも、君以外の人と夫婦になると言うのが想像できない。したくない。でも君はもう、いない。君がいなくなって、一年後に彼女と婚約してからずっと嫌だ嫌だと駄々をこねていたけれど…いつのまにか二年も経ってしまっていた。彼女には本当に申し訳なく思う。こんな僕を、彼女はずっと待ってくれている。…ねえ、エリー。君は君以外の女性と結婚する僕を、軽蔑するかな?」


『軽蔑なんて、するわけないじゃない。もういい加減、過去とばかり向き合っていないで未来を見なさい!』


「…君は、きっと軽蔑なんてしないよね。きっとさっさと幸せになれって、そんな風に思える人だ。エリーのそういうところが、僕はとても好きだった。今でも愛しているよ、エリー。幸せになろうとする、僕を許して」


『そんなの、いくらだって許すわよ!』


 触れられないと分かっていたけれど、構わずに駆け寄りアルを抱き締めた。触っている感触も、体温も感じないけれど、彼を包むように彼の輪郭に沿って腕を回した。


 どうして、なんでって思ったこともあった。アルと結婚して、子供を産んで。そんな幸せな未来を思い描いていた。

 それが呆気なく崩れ去ってしまって、どれだけ絶望しただろう。だけど死ぬ間際、私が真っ先に思ったことは、アルの幸せだった。

 愛しているなんて言葉では言い表せないくらい、貴方のことが大切よ。どうか、幸せになってね。


 ゆっくりとアルから離れ、彼の前に立った。


「あ、カンパニュラの香り…」


『ほら、いつまでも一人だけ冬に取り残されたような顔してないで。せっかくの春なのに、辛気臭い顔は嫌よ』


「エリー。君は春の嵐が駆け抜けたような人だった。また僕に、春を運んできてくれたんだね」


 そんな思いが通じたのか、泣きながらも笑ったアルを見て、私は安心してゆっくりと目を閉じた。重かった身体は、飛び跳ねたら空へ登れそうなほど軽くなっている。


『私も愛しているわ。ちゃんと幸せにならないと、許さないんだから』


 そう告げて、彼の額にキスをした。驚いたような顔をしたアルがなんだか面白くって、気分がいい。地面を思いっきり蹴れば、私の身体は風に舞う花びらのように高く舞い上がった。


 アルの近くでは春の鐘が風に揺れ、彼に長い冬の終わりを告げていた。




カンパニュラの花言葉:感謝、誠実な愛

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