60話 ポケットハウスって便利だね
王都のダンジョンの攻略から1週間ぐらい経ち、わたし達は今日も簡単なクエストをこなしていた。
そしてお昼にお昼ごはんを食べるために借家に帰っていたところ、ドアをトントンと叩く音が聞こえた。
「ん、誰だ? 今日は誰かと合う予定はなかったはずだが……」
ミリアちゃんがドアを開けると、そこにはミラさんが立っていた。
「やあ、お久しぶりだね。ポケットハウスが完成したから連絡しに来たよ」
おお、遂に完成したんだ! 1ヶ月ぐらいかかるって言ってたけどあれから3週間ぐらいだから早めに完成したのかな?
「おお、待ってたぜ! 中に入って話すかい?」
「うん、ちょっと長くなるからそうしてもらえると嬉しいな」
そうしてミラさんをリビングに招待する。ユニちゃんがお茶を出してくれたみたい、流石ユニちゃん、気が利くね。
「ミラさん、お茶をどうぞ」
「ユニちゃんだっけ、ありがとうね。涼しくなってきたとはいえ外を長距離歩いてきたから助かるよ」
ミラさんがお茶を1口飲んでから話し始める。
「それじゃあ本題に移ろうか、話した通り依頼されてたポケットハウスが完成したから持ってきたよ。それで君たちにはちゃんと問題がないか実践でテストをしてほしいんだ」
ミラさんが話を続ける。
「といっても実際に外で1日使ってみてちゃんと展開できるか、雨漏りはしないか、お風呂は上手く作動するか、あたりを確認してもらえればいいよ」
「代金はテストが終わってからでいいよ。実際に使ってもらって問題なければお代を貰う。それが私のモットーだからね。ただしテスト中は追跡機能を付けてるから未払いは許さないよ、君たちなら問題ないと思うけど」
それじゃあ、と言ってミラさんがポケットハウスを渡してくれる。見た目は手のひらサイズのミニチュアの家って感じ。
「展開と縮小の魔法を教えておくね、展開の詠唱は『ポケットハウス、オープン』、縮小は『ポケットハウス、クローズ』だよ。どっちも魔力を込めながら、展開のときは十分離れて行ってね」
「それでは明日1泊するぐらいのクエストを受けに行きましょうか。明日は夜から雨が降る予報ですからテストに丁度いいですわ」
ユニちゃんの言葉を聞くとミラさんがお茶を飲み干してバイバイをする。
「それじゃあ私は帰るね。テストが終わったら私の店に来て頂戴、代金の支払いと追跡機能の解除を行うからね」
ミラさんが帰っていった。みんななんだか楽しそうだ、早く使い心地を確かめたいのかな?
確かにわたしも気になるところ、旅の間でもお風呂に入れるのは(心は)女の子として重要だよね。
そして翌日、冒険者ギルドで行き帰りに1日かかる距離の場所の薬草採取のクエストを受けて早速向かっているところ、そろそろ暗くなってきたかな。
「よし、それじゃあそろそろポケットハウスを使うか!」
ミリアちゃんがマジックボックスからポケットハウスを取り出し、地面に置く。
そして10メートルぐらい離れてから呪文を詠唱する。
「ポケットハウス、オープン!」
すると、どんどんポケットハウスが大きくなり、一戸建ての家が現れた。
「わーすっごーい! ねえねえカオルお姉ちゃん、早く入ろうよ!」
興奮するアリスちゃんに連れられて中に入ると、5人分のベッドがある寝室とお風呂がある浴室と簡単なリビングがある内装が目に入る。
「……思った以上に立派だな、これはゆっくり休めそうだ」
翼くんもごきげんな様子。
「風呂は1人用のサイズだな、まあ何人も入れるサイズを期待するのも無茶か」
ミリアちゃんは少し残念そう。
「それじゃあお夕飯を食べてお風呂に入りましょうか」
ユニちゃんの提案に従い夕ご飯を食べる、テーブルが用意されていたのでいつもと変わらない環境でご飯を食べれるのにほっとする。
すると、ポツポツと雨の降る音がしてきてすぐにザーッという本降りになってきた。
「丁度いいですわね、ざっと見た感じだと雨漏りの心配は無さそうですわ」
そうして夕ご飯も食べたあと、1人ずつお風呂に入る。浴室の中はちょっと狭いけどちゃんとお湯は出るしシャワーも付いてるしで快適だったよ。
そうして少し遊んだり話し合いをしてから寝る時間になる。
「……そういえば翼くんとは家だと別の部屋だし外だと別のテントだからこうして同じ空間で寝るのは初めてかも」
すると、ミリアちゃんが茶化してくる。
「あはは、あたし達を襲うなよー? ツバサならそんな心配してないけどな」
そうして旅の途中とは思えない快適な夜を過ごしたよ。
そして翌日には雨もあがっていた。ポケットハウスを縮小するのにも成功して目的の薬草を採取する。王都に帰ってきたときにはすっかり夜中になってたよ。
「クエストの報告とミラさんのお店に行くのは明日になりそうですわね」
ユニちゃんの言うとおりに今日は休んで翌日にミラさんの店に行く。
「いらっしゃ~い。おや、ミリアちゃん達じゃないか、どうだった?」
「ああ、最高の居心地だったぜ。問題なかったから支払いに来たぜ」
そうしてミリアちゃんとミラさんが書類にサインして金貨数百枚をミラさんに渡す。
「……うん! バッチリ代金受け取ったよ。追跡機能も外しておいた」
「1年間はアフターサポートもあるから困ったらいつでもおいで、君たち冒険者はそうもいかないときもあるかもしれないけどさ」
「それじゃあミラズショップのご利用ありがとうね、またご縁があったらよろしくね!」
ミラさんと別れて借家に戻る。これからの旅は快適になりそうだね!
来週はお盆休みとさせていただきます
再来週からは王都ホテル宿泊回の予定なのでお待ち下さい~