53話 9人で一緒にごはん
ダンジョン攻略から翌日、わたし達は春馬さんに指定された場所に向かっていた。
「楽しみだね〜、ハルマお兄ちゃん達と一緒のごはん♪」
アリスちゃんがつぶやく、わたしも今日が楽しみだよ。
「着いたな。ハルマ達は……っと、あそこか」
春馬さん達と合流する。
「やあ、皆さん来てくれたんだね。今日は俺たちの奢りだから値段を気にせず楽しんでほしいな」
「そうっすよ、春馬がここまで気前いいのは珍しいっすからね!」
そうして店内に入る、そこそこ人の入っている、ちょっといいとこの食堂っぽかった。
春馬さんが店員さんに声をかけると、個室に案内してくれた。どうやらコース料理を頼んでいてくれたみたい。
みんなが着席すると、まずは前菜が運ばれてきた。トマトのサラダだ。
「……うん、素材の味が活きてて美味しいですわ。これはこの先の料理も期待できますわね」
ユニちゃんの言葉に同意するよ。シンプルなんだけど美味しい、クオリティの高い一品だった。
次はスープ、聞いてみたところジャイアントタートルの肉を使ったスープらしい。こちらも上品で美味しいスープだった。
更に続いて魚料理、魚の魔物の肉と卵を使ったムニエルがやってきた。お上品にナイフとフォークで食べるのは慣れてないのでちょっと苦労しちゃった。
他のみんなを見るとユニちゃんは綺麗に使いこなしていたみたい、さすがお嬢様……!
反対にミリアちゃんや春馬さん達はわたしと同じく苦戦していたようだった。ちょっと親近感。
ここで口直しが出て小休止、春馬さん達とのお話に花が咲く。魔物の討伐談だったり日常話だったり……
そんな事を話していると、夏樹さんから質問が飛んでくる。
「あの、僕、皆さんの恋愛事情に興味あります! 特に薫さんと翼さん、薫さんはパーティー組んだ仲で色々知りたいですし翼さんは女の子に囲まれてるんだから良い話の1つ位ありますよね?」
え、えっと……と返答に困っていると翼くんが先に応える。
「……悪いが色恋沙汰はないぞ。女性に興味がないわけではないが俺たちのパーティーのメンバーはそういう関係ではなく大切な仲間だ」
翼くんの答えに春馬さん達がつぶやく。
「はえーやっぱり翼さん渋いっすね……うちの冬仁みたいっす」
「翼さん、ストイックですね……それじゃあ薫さんはどうですか?」
春馬さんの声にわたしの思いを答える。
「えっと、前にも話したと思うのですが正直に言うと恋愛感情はまだよくわからないです! けどいつかは誰かとドキドキし合う関係になれたら……って思います」
わたしの答えにみんなが優しい眼で声をかけてくれる。
「ピュアっすね……」
「おおう、純粋すぎて眩しい……」
「はは、薫さん、いつか良い相手が見つかるといいね」
「……その気持ち、実るといいな」
春馬さん達の反応にミリアちゃんが笑って話す。
「はは、カオルはこの通り初心だからな。おっと、メインディッシュが来たみたいだぜ。丁度いい所でお話も終わりだな」
お肉料理、メインディッシュはコカトリス肉のステーキだった。鳥系の魔物のお肉とは思えないジューシーさでみんな美味しいって言ってたよ。
そして最後にデザートと紅茶が出てきてコースも終わり。紅茶を飲み終わったら2回めのお話タイムに入ったよ。
そうしてお店を出て、お別れの時間がやってきた。
「今日は本当にありがとうな! こんな良い料理ごちそうになって感謝するぜ」
「いえいえこちらこそ楽しい時間をありがとうございました。皆さんのお陰で冒険者ランクも上がったしこっちも感謝ですよ」
ミリアちゃんと春馬さんが挨拶する中、わたしもみんなに挨拶をする。
「春馬さん達、今日はありがとうございました! 一緒にパーティー組んでからこんな縁が築けるとは思いませんでした、またお会いしたらその時は楽しみましょうね!」
そうして春馬さん達と別れて帰ってきたわたし達。今日は良い1日だったな〜!