51話 ポケットハウスを手に入れろ(中編)
「今日もだめか……」
ミリアちゃんがため息交じりにつぶやく。
そう、冒険者ギルドにロジックキューブがあるダンジョンのメンバー募集依頼を出してからもう5日になる。
みんな新しいダンジョンに行きたがっているみたいで古いダンジョンには人が来ないのだ。
その間1日で済ませられるクエストを受けていたんだけど今日もメンバー募集は収穫なしっぽい。
それじゃあギルドの用は終わったし家に帰ろうか、って時に偶然は訪れた。
「やあ! もしかして薫さんじゃないかな? それと話してたパーティーの皆かな?」
突然わたしの名前を呼ばれて声の主の方向を向く、そこには久しぶりというには最近に合った人が居た。
「春馬さん!」
夏樹さん、秋人さん、冬仁さんも一緒だ。
確か王都に行くって言ってたからもしかしてとは思ったけどホントに会えるとは。ちょっとした感動を覚えているとミリアちゃんが質問してくる。
「カオル、この子達はどなただ? カオルのことを知ってるようだが……」
そっか、ミリアちゃん達は会ってないもんね。前の街でクエストを一緒に攻略した仲だよ、とみんなに說明する。
それと一緒に、春馬さん達にもパーティーのみんなを紹介する。
「皆さんが薫さんが言ってたパーティーのメンバーっすね! 薫さんが言ってた通りの方たちっす」
「薫さん、また会えて嬉しいよ。パーティーの皆さんもよろしくね」
「……よろしく頼む」
紹介が終わると、ミリアちゃんがニヤリとした表情で話す。
「……なるほど、わかったぜ。そうだ、丁度いい提案がある、あなた達は冒険者ランクいくつだい?」
すると、春馬さんが応える。
「俺たちはつい最近この世界に転移してきたからダンジョン攻略もあまりしてなくてね、Dランクだよ」
「ただ転移者ボーナスがあるから実質的な腕はBランク位は行けるって受付のお姉さんが言ってたかな」
その話を聞いて、更に嬉しそうなミリアちゃん。
「それならさ、あたし達と一緒にダンジョンを攻略しないかい?」
「実力があるならAランク推奨のダンジョンでも攻略できるだろ、どうか頼む!」
春馬さんが嬉しそうに応える。
「俺たちでよければ喜んで! また薫さんとダンジョンを攻略できる機会が来るとはね」
「それに薫さんが言ってたパーティーの皆さんが一緒なら心強いよ」
ミリアちゃんと春馬さんが握手をして、こうして共闘パーティー成立となった。
メンバーの都合がついたので受付のお姉さんにロジックキューブが取れるダンジョンのクエストを受けに行く。
「はい、ダンジョンの入り口の場所をお教えしますね。ですが春馬様達のパーティーはDランクですがこのダンジョンはAランク以上が推奨されています。本当に大丈夫ですか?」
お姉さんの発言にわたしが応える。
「はい、以前一緒にダンジョンを攻略しましたがBランク相当かそれ以上に皆さん強いですよ」
すると、お姉さんの表情が柔らかくなる。
「分かりました、Aランクのパーティーの方の発言ですからね、皆さんを信じます」
「それと、もうひとつお伝えする点が。このダンジョンは複数の階層で成り立っているのですが、その中に海辺の世界観の階層が存在するので水着の持ち込みが推奨される、とのことです」
水着かぁ、港町で買ったやつがあるからわたし達は大丈夫かな?
「それでは、無事を祈っております。格上のダンジョンへの挑戦ですので、どうかご注意くださいね」
そうして5+4の9人パーティーとなったわたし達。準備を済ませたら早速ダンジョンに突入する。
転送の魔法陣を起動して飛んだ先は、森の中だった。とはいえわかりやすく道が作られているので、どこに居るのかがわからなかったりどこに行けばいいのかわからないといったことにはならなさそうだ。
途中で魔物が何回も襲ってきたけどこの人数なら危なげ無く対応可能だね。夏樹さんが受け止めているうちに秋人さんや冬仁さんがフルボッコにする連携プレイが冴えていた。もちろんこちらも負けじと(主にミリアちゃんが)魔物を倒していく。おかげでドロップ品も沢山だね。
そうして2時間弱位道を進んでいくと、ダンジョンの入り口と同じような転送の魔法陣と一緒に大きな熊の魔物がいた。あの子を倒さないと次には進めなさそう。
「よし、行くぜ! ツバサとナツキ、壁役を頼む! その間にあたし達攻撃組がぶっ倒す!」
「……了解した」
「ラジャー!」
2人が敵の攻撃を捌いてるうちにみんなが強力な魔法の詠唱を始める。わたしもいつもの水魔法を準備してと。
「フレアドライブ!」
「サンダーフラッシュ!」
「ウィンドスラッシュ!」
「ブルースプラッシュ!」
ミリアちゃんパーティーの総攻撃を受け、致命傷を受けた魔物が宝箱を残して消えていく。
ダンジョンの宝箱は罠があるかもしれないので、そのへんの知識がある秋人さんにお任せする。
「宝物の中身は……魔石っすね」
どうやらただの魔石だったみたい。あまりお金にならないからわたし達が持っとくのがいいかな。
「よし、それじゃあ魔法陣を起動するぞ」
転移の魔法陣を使って次の階層に進む。
意識がぼんやりしてきて、身体がふんわり浮く感覚。その感覚が収まって意識も戻ってくると、そこにあったのは
「海っすねえ……」
綺麗な海と沢山の小島が広がる世界だった。




