48話 休日のユニちゃんとわたし
「うーん、朝かぁ……」
今日も新しい1日がやってきた、二度寝したい気持ちはあるけど起きなくっちゃ。
「おはよー、……って、あれ?」
リビングに出てみてもユニちゃんの姿しか見えない。普段ならみんな揃ってるのだけれども。
「あら、カオルさん。おはようございます」
……ユニちゃんに聞いてみよう
「おはよ、ユニちゃん。他のみんなは起きてこないの? 珍しいね」
すると、ユニちゃんが笑って応える。
「ああ、カオルさんは知らないのですわね。今日は国王さまの生誕記念日、お休みの日ですわ」
「なので皆さんもゆっくり寝ていますわね、私はいつもどおりですが」
なるほど、祝日なのか。それじゃあわたしも二度寝したかった……
「それじゃあ今日はお休みの日なのかな?」
「そうですわね、ギルドもお店もお休みなので家に居るのが一番ですわ」
そっかぁ、お店もお休みだとウィンドウショッピングもカフェでスイーツ食べるのも出来ないよねぇ。
悩みが顔に出てたのか、ユニちゃんがからかってくる。
「ふふふ、カオルさん、どうしようって顔してますわね」
わ、バレた。
「それなら私の部屋で一緒に本でも読みますか?」
ユニちゃんはいっぱい本持ってるからわたしでも読める本ありそうだね、良いアイデアかも。
「うん、お邪魔しちゃおうかな」
「それでは朝ご飯を食べたら私の部屋に来てくださいな、お待ちしてますわ」
ユニちゃんに言われた通りに1人で朝ご飯を食べる。いつもは5人一緒で食べるから寂しいね。
ご飯も食べて食器洗いもしたあと、ユニちゃんのお部屋のドアをノックする。
「ユニちゃん、いま大丈夫?」
「カオルさん、鍵は開いてるので入ってくださいな」
そうして、ユニちゃんのお部屋に入る。スッキリと整頓されたユニちゃんらしい部屋だった。
「いらっしゃいませ、楽にしてくださいな。ベッドに座ってもいいですわよ」
それじゃあ、とベッドに座らせてもらう。
「何か読みたい本のリクエストとかありますの? 娯楽になるような本は恋愛小説と少女漫画ぐらいしか持ってないですが……」
んー、そういえばこの世界の漫画ってあまり見たことない気がするね。
「それじゃあ漫画をお願いするね」
「わかりましたわ、ブック、オープン!」
ユニちゃんが大きめの箱にキーワードを唱える。すると、ホログラムの本棚が箱の上に展開される。
「わ、なにこれ?」
あら? といった感じの表情をするユニちゃん。
「もしかしてカオルさんには見せたことなかったかしら? このマジックシェルフ」
「うん、初めてだよ」
「このアイテムはマジックボックスの技術を応用して作った私専用の本棚ですわ。値段を付けるなら金貨50枚以上はする私の宝物ですの」
ユニちゃんがよく買ってる本をどうやって収納してるのか謎だったけどこんなものがあったとは。
「もっとも、この装置より中に入ってる書物のほうがよっぽど貴重ですけどね。合計で金貨200枚は行くかしら」
……ユニちゃんって、ほんと読書家のお嬢様だ。
感心していると、ユニちゃんが本を1冊取り出してわたしに渡してくる。
「はい、リクエストの少女漫画ですわ。とりあえず1巻だけ渡すので続きが気になったら言って下さいまし」
借りた漫画を読んでいく。お話としては主人公の女の子とヒーローの男の子とのもどかしい距離感をちょっぴりコメディ色強めで描いた王道の漫画で、恋愛事に疎いわたしでも楽しく読める傑作だった。
「1巻読み終わった! ユニちゃん、次をお願いしてもいい?」
すると、ユニちゃんは机に向かって何かを熱心に書いているみたいでわたしの声が聞こえていないみたいだった。
あまり邪魔をしたくないけどしょうがないから肩をたたいて……
「わわわっ! なんですのっ?!」
……凄い驚かせてしまった。
「カオルさん、どうしましたの……?」
「あ、えっと。借りた漫画、1巻を読み終えたから続きが読みたいなーって」
「ああ、わかりましたわ。残りの巻全部出しておきますわね」
そうして、4巻ほど続きを本棚から出してくれる。
「……ところで……、もしかして、見ましたの?」
見た? 何のことだろう。もしかして集中して何かを書いていたのと関係あるのかな?
「もしかして、夢中になって書いてたなにかのこと? ごめん、声掛けるときにちょっと見えちゃった」
すると、ユニちゃんはあちゃーといった表情で語ってくる。
「見られたからには話しますわね……」
「実は私、読むだけじゃなくて書く方にもチャレンジしていますの。でも中々上手くいかなくて……恋愛小説を書こうとしてるのですが難しいですわ」
なるほど、確かにそれは見られると恥ずかしいかも。でもね……
「ユニちゃん、何かを作り出すっていうのは難しいし恥ずかしいかもしれない。でもそれ以上に素敵なことだよ!」
「恋愛事となるとわたしに手伝えることは無いかもしれないけど、応援してる!」
ユニちゃんが恥ずかしそうにしながらも応える。
「カオルさん……ありがとうですわ。そう言って貰えると自信が出ますわね。必ず名作を書き上げてみせますわ!」
そうしてユニちゃんは執筆、わたしは漫画の続きを読んでると、読み終えた頃にちょうどお昼ごはんの時間になった。
「おーい、昼飯にするぞー。ってユニの部屋にカオルが居るのは珍しいな」
ミリアちゃんから声を掛けられる、それにユニちゃんが応える。
「ふふっ、今日で一気に秘密を共有する仲になりましたの♪」




