43話 入れ替わりパニック!(前編)
今日はダンジョンでクエストの消化に来ているよ。
「よし、ついにボス部屋だ。去り際に厄介な術を使うってクエストの説明に書いてあったから気を付けてくれ」
ミリアちゃんがそう言いつつ部屋の扉を開ける。
部屋の中には、全身をローブで覆った人型の魔物が居た。
「キタナ……ノロッテヤル」
「人語を喋れるやつか、魔法が厄介そうだな、さっさと物理攻撃でケリをつけるぞ!」
そして戦闘へ、わたし達の魔法はバリアで減衰され、ミリアちゃんや翼くんの物理攻撃は躱されと中々有効打を与えられない。
「フフフ……コレデモクラエ!」
魔物が大規模な詠唱を始める、その隙をついてミリアちゃんが一撃をお見舞いする……筈だった。
「ミリアさん、これは罠かもしれませんわ!」
ユニちゃんの言葉にミリアちゃんの動きが一瞬止まる、魔物はその時を見逃さなかった。
「バカメ!クルシムトイイ!サラバダ!」
その瞬間、強い光がわたし達を包む。それと同時に意識が遠くなっていく、今ここで隙を見せたらあぶな……
「うーん……あれ、確か魔物の魔法を喰らって……」
目が覚めると、わたし含めたみんなが床に倒れていた。
……あれ?声に違和感。わたしこんな低い声じゃ……
意識がはっきりすると同時に、目の前におかしなものが映る。
それは銀髪で長い髪をツーサイドアップにしている幼い少女……にしか見えない子、つまりわたしの身体だった。
「え、なんでわたしが目の前に!?」
パニックになって改めて自分の身体を見てみると、ガッチリとした男の子の身体がそこにあった。
「ん……一体どうなったんですの?」
「おい、なんか身体が変なんだがどういうことだ?」
「んーなんかお胸が重たいよう」
「……これは、そういうことか」
他のみんなも目を覚ましたみたいで、やはり各自身体と口調が合ってない。
「つまり、これって……」
「「「「「入れ替わってる〜!?」」」」」
「……なるほど、こりゃ確かに厄介だ」
ユニちゃん……の身体に入ってるミリアちゃんが確認してくる。
「あたしの身体にアリス、ユニの身体にあたし、アリスの身体にツバサ、カオルの身体にユニ、ツバサの身体にカオルが入ってる。で良いんだよな?」
各自頷く、するとミリアちゃんが頭を掻きながらどうするかを提案してくる。
「とりあえず魔物を追い去ったからクエスト自体は成功だ、冒険者ギルドに報告に行ってこの呪いがどんなものなのか聞く必要があるな」
そしてダンジョンを出て、冒険者ギルドにクエストの報告とどんな呪いを掛けられたのかを確認しに行く。
するとそういう事は教会のシスターさんが詳しいとのことなのでお話しを聞きに行く。
「……なるほど、厄介な術をかけられましたね……」
シスターさんが言うには、すぐに解呪とかはできないタイプの呪いらしかった。
「ですが安心してください。強い呪いではないので一晩手を繋いだ状態で寝ていれば翌日には元に戻っていますわ」
それを聞いてホッとするわたし達、ずっとこのままじゃ大変だからねぇ。
「ありがとな、シスター。世話になった」
「いえ、困っている人を助けるのが私達の役目ですから。……それにしても、お嬢様な見た目の方が勇ましい言葉遣いなのは混乱しますわね。いえ、これは失礼かしら……」
そんなこんなで借家に帰ってきたわたし達。夕ご飯を食べようとしたときに早速問題が、各自がいつも食べている量と入れ替わった身体で食べられる量が食い違っている影響で食事量がずれるのだ。
特にわたしとアリスちゃんはいつもより沢山食べないといけなくて、逆にミリアちゃんと翼くんはいつもの量を食べようとして身体が受け付けず残してしまっていた。
そんな問題が起こったあと、さらなる問題が起きようとしていた。
「なあ……風呂はどうするんだ?」
「特に性別変わってるユニとツバサ、あとカオルも問題だろ」
確かに、ユニちゃんにわたしの身体見られるのは恥ずかしいね……それにわたしが翼くんの身体を見るのも恥ずかしい。
「た、確かにそうですわね……カオルさん、裸を見ちゃってもいいのかしら……?」
「うう、恥ずかしいよう……ユニちゃんに目隠ししてもらってわたしが洗うのじゃダメ……?」
「仕方がないですわね……カオルさん、お願いしますわ」
「ユニとカオルは話が付いたな、ツバサとアリスはどうだ?」
すると、アリスちゃんが顔を赤らめて小さな声で話す。
「ツバサお兄ちゃんに私の身体を見られるの恥ずかしいけど……お兄ちゃんなら変なことしないって信じてるから大丈夫だよ」
「……了承した。済まない」
そんな感じでお風呂の件もお互い了承して、いざ入る時間に。うまくわたしの身体を洗えるかな……?