33話 市場でお買い物
羊ダンジョンに行った翌日、わたし達はスピカの市場に食料品を買いに出掛けていた。
「うわー! いっぱい店が出てる……!」
思わず口に出ちゃう、それくらいの活気のある市場だった。
「ここはこの国ではそこそこの都会ですからね、市場も活発ですわ」
ユニちゃんが説明してくれる。
「さて、今日の買い物のおさらいですわ。私とアリスさんは肉と魚を、ツバサさんとカオルさんは野菜と果物を買ってきますわよ」
ミリアちゃんは冒険者ギルドで昨日狩ったズラトロクの解体作業のお手伝いをしているから今は居ない。魔物の解体が出来るって凄いなぁ、わたしは血を見るのが苦手だから「解体作業の見学でもしないか?」ってお誘いも断っちゃったよ。
「それでは、頼みましたわ」
ユニちゃん達のグループから離れ、翼くんと買い物をしていく……のはいいんだけども。
「仲のいい兄妹ねぇ、これおまけしちゃうわ」
「おう、これも持っていきな! お嬢ちゃんに食べさせてやりな」
「あらあらうふふ、これおまけしとくわ〜」
……どうもどの店員さんもわたしと翼くんが兄妹に見えているらしい。
翼くんが喋らないからわたしが訂正するんだけどそれも背伸びしているようにしか見えないらしく。
一応同い年なんだけどなぁ……やっぱり伸びすぎても困るけどちょっとは成長しても良いのに、なんて思っちゃう。
兄妹扱いされてる事をどう思ってるか気になったので翼くんに聞いてみる。
「翼くんはわたしが妹として見られてるのどう思ってる?」
「……薫には悪いが妥当だろうな、カップルとして見られるとは思われないだろう」
……うう、翼くんが冷たいや。
などと思いながら買い物を続けていく。じゃがいも、レタス、トマト、大根、人参、etc……
異世界の筈なのに元の世界の野菜とあまり変わらない物が手に入るのが不思議だったんだけど、後日ユニちゃんに聞いてみたところ大昔の転移者の人の中に元の世界のお店でお買い物ができる能力を貰った人が居て、その人が買った野菜の種がこちらの世界でどんどん栽培されていって一般に普及していった。って事らしい。
野菜は大体買い終わったので次はフルーツを買いにいこう、と思っていると翼くんが手を差し出してきた。
「……万が一はぐれないように、握っておいてくれ」
「……うん、わかった」
やっぱり翼くんは優しい、改めて感じる。けどちょっと恥ずかしいかな……
そうしてちょっとしたドキドキを感じながらフルーツを買い終えた頃に魔導音声通信機が振動する、ユニちゃんからの連絡だった。
「カオルさん達は買い物終わりました? 此方は大体買い終えましたわ」
「うん、こっちも買い終えた頃だよ、そのまま借家に帰る形でいいかな?」
「そうですわね、ではまた家で、ですわ」
ユニちゃんとの会話を終え、翼くんと一緒に借家まで帰る。
「翼くん、荷物殆ど持ってくれてありがとう。重くない?」
「……大丈夫だ」
「そっか、やっぱり男の子が居ると心強い……ってわたしが言うのもおかしいか」
「いや、おかしくなぞないさ。薫は女の子さ」
「……うん、ありがと」
そんなやりとりをしつつ家に帰るわたし達。ミリアちゃんも遅れたけどちゃんと帰ってきて5人で夕食を作る、それは小さくても大きな幸せだった。なんてね。




