32話 羊肉BBQ!
新年明けましておめでとうございます。
今年も「わたしの異世界のんびり日常記〜男の娘と仲間達のゆったりライフ〜」を宜しくお願いします。
今年は週一のペースで投稿しようと思っています、良ければ応援お願いいたします。
ズラトロクはこちらを見て、鼻息を荒くしているようだった。戦闘は避けられそうにないかも……
と身構えていたら、翼くんから作戦を小声で聴かされる。
「まずアリスとユニが奴の足を止める、その隙に薫が水魔法で思いっ切りふっ飛ばしてくれ。そうしたら俺とミリアでとどめを刺す、やれるか?」
あんな大きな魔物にわたしの魔法が効くのかな……? とは思うけど翼くんの作戦の事だ、きっとなんとかしてくれるだろうという安心感があった。
「うん、いけるよ!」
わたしの返事を聞いた翼くんがユニちゃんとアリスちゃんに指示を出す。
「ユニは雷魔法でショックによる足止めを、アリスは草結びで足止めを頼む!」
「了解ですの!」
「りょーかいだよ!」
「グルァァァァァァァ!」
こちらに向かって勢い良く走ってくるズラトロク、その勢いがこちらに来る前にアリスちゃんが呪文を詠唱する。
「大地の草花よ、力を貸して! グラスノット!」
すると、スルスルと蔦がズラトロクの足に絡まり動きを制限する。
「アリスさん、よくやりましたわ!次は私の出番ですの!」
「雷よ、唸れ! サンダーパラリシス!」
ユニちゃんの呪文の詠唱が終わると、バチン! という静電気が起きた時の音が大きくなったような音が聞こえる。それと同時に眩しい光が起き、一瞬の光のあとにはすっかり動きが止まったズラトロクが居た。
それじゃあわたしの番だよね……
ロッドをズラトロクの居る方向に構えて神経を集中させる。
「吹き飛んで! ブルースプラッシュ!」
すると、想定外の威力の水流がズラトロクに向かっていき、その巨体を吹き飛ばす。
ただ、打った反動でわたしも尻もちをついてしまった。やっぱり戦闘用魔法はまだまだだなぁ。
「薫、よくやった。あとは任せろ」
そう翼くんが言うと、吹き飛んでいったズラトロクに向かって走っていく。
「行くぜツバサ! フレイムナックル!」
「……止めだ、ブレイブスマッシュ」
2人の技が同時に打ち込まれ、ズラトロクはダウンした。
「ふう、これで何とかなったかな。ユニ〜! モンスターネット頼む!」
するとユニちゃんが鞄型マジックボックスから巨大な網を取り出した。相変わらずどんな原理であの鞄の中からあんな大きい物出せるんだろう……? などと思っていると、ミリアちゃんはその網をズラトロクに被せていく。するとどんどんズラトロクの体が小さくなっていき最終的にサッカーボール位の大きさの球体になった。
「えっと……どうなってるの? というかズラトロクはドロップ品を落として消えないんだ?」
わたしの疑問に、ユニちゃんが答えてくれる。
「普通の魔物は倒すとドロップ品を落として消滅するのはご存知ですよね。けど一部のユニークモンスターは死体が残りますの。なのでマジックアイテムで小さくして冒険者ギルドで解体してもらう必要があるのですわ」
なるほど〜、新たな知識を身につけたぞ。と感心していると助けたおじさん達が褒めてくれる。
「君たち、見た目によらず……と言ったら失礼かな。けど子供2人も居るのにすごい強いパーティーなんだな、改めて助かったよ」
「あたし達はこれから出口に行くけどあんたらも一緒に行くかい?」
そうミリアちゃんが言うとおじさん達も賛成したようで、出口までご一緒する事になった。
そうして出口に到着し、ダンジョンを抜ける。スピカの街に帰ってきたときには既に夕暮れ前だった。
「さて、ズラトロクの解体はこんな時間だし明日にしようぜ。今日は羊肉のバーベキューにするか!」
ミリアちゃんの提案に異論はなく、街で香辛料や一緒に食べる野菜を買って借家に帰る。
この家、良いところを借りているお陰でなんとバーベキューセットが中庭にあるのだ。なので機材を準備することなく肉を焼ける、と言う事になるね。
「ふう、こんな感じでいいかな」
アリスちゃんと一緒に野菜を切ったりして準備をしていると、外で火力番をしているミリアちゃんから声がかかる。
「こっちは火加減丁度いいぞ〜!野菜まだか〜!」
「はーい! 今持ってくよ~!」
そう言って野菜を持って外に出ると、肉が焼ける良い匂いが漂ってくる。
「お、待ってたぜ! 野菜もどんどん焼かなきゃな!」
「もう、そう言いつつミリアさんはお肉ばっかり食べるんですもの。ちょっとは野菜も食べないと駄目ですわよ?」
ユニちゃんのお叱りにあーあー聴こえなーいといった感じのミリアちゃん。話題を変えようと焦ってわたしに話しかけてくる。
「カオルは羊肉初めてなんだろ? 食べてみて感想教えてくれよ」
言われた通りに木製のお皿に載った肉をお箸で口に持っていく。
「うん……美味しいといえば美味しいんだけど臭みがちょっとキツイかな……?」
それがファーストインプレッションだった。噛むたびに旨味が出てくるんだけど同時に獣臭さというかあんまり食欲をそそられない臭いも出てきて気になってしまう。
「やっぱり最初はそうなるよなぁ。次はこれをたっぷり付けて食べてみな」
そう言って手渡されたのは真っ赤な香辛料の入った小鉢だった。
「えっと、わたし辛いのだめだよう」
「いや、こんなに赤いけど辛味はほぼ無いんだぜこの香辛料。まずは食べてみなって」
ミリアちゃんがそう言うなら……とたっぷりと肉に香辛料をまぶして食べてみる。
「辛く……ない! それに臭みが消えてる!」
へへっ、どうだ? とでも言わんばかりの表情のミリアちゃん。確かにこれならどんどん食べれちゃいそう。
「カオルお姉ちゃん、あ~ん♪」
「あ、アリスちゃんありがと! あ~ん♪」
「やっぱりスピカの羊肉は美味えなぁ〜! 酒が進むぜ!」
「もうミリアさんたら! 飲みすぎですわよ?! 明日は冒険者ギルドで色々やらないといけない事有るのですからね?!」
「ふふっ、騒がしいが……たまには悪くは無い」
そうして、5人のバーベキューはみんなが満腹になるまで続くのであった。




