30話 お相手はだあれ?
今日は久しぶりにパーティーのみんなとは別行動で1人でのんびりお買い物とスイーツ巡りをしていたの。
いつもの4人と遊ぶのも楽しいけどたまにはこんなのもいいかな? と思いつつカフェのケーキを食べる。
「うーん、美味し〜!」
甘い誘惑に負けて本日2つ目のスイーツを堪能していると、遠くの方で賑わいができているのに気付いたわたし、気になったので何が起こってるのか見に行ってみようかな? 食べた分は動かなきゃね、と理由を付けて向かっていく。
賑わいの元に来てみたんだけど、みんなが密集してるせいでどうなっているのか分からない。なのでここは素直に近くのお姉さんに聞いてみることにする。
「すみません、人が集まってますけど何が起こってるんですか?」
すると、お姉さんが親切に教えてくれる。
「ふふっ、お嬢ちゃん、今この会場で結婚式が行われている最中なのよ。それでブーケトス目当てで人が集まってるってわけ」
なるほど、お祝い事でみんな集まってるんだね。こっちの世界にもブーケトスってあるんだねぇ。などと思っていると、会場が更に騒ぎ出した。
「お待たせいたしました、これよりお2人の幸せを願っての誓いの言葉とブーケトスを行います!」
進行役っぽい人の発言でこの場に居る人たちのテンションが更に上がっていく。
「それでは、誓いの言葉をお願いします!」
進行役の方の台詞の後に、ウェディングドレスの新婦さんとスーツの新郎さんがお互いの手を握りながら高々に宣言する。
「私達は、苦しいときも、楽しいときも」
「お互いに助け合い、2人で困難を乗り越え」
「「永遠に愛し合う事を誓います」」
2人の宣言を聴いてテンションがクライマックスになる皆さん、わたしも心が弾んでいた。
特にわたしの目を引いたのはウェディングドレスの綺麗さだった、純白のドレスは美しく、綺麗で、憧れる素敵な衣装だった。
「わたしもあんな衣装、着てみたいな……」
そう呟くと、隣りにいたお婆さんが声をかけてくる。
「ふふ、お嬢ちゃんなら成長すればきっといい彼氏が見つかるじゃろうて、焦らずとも良いんじゃよ」
わ、聴かれちゃってた……恥ずかしい……
話題を変えようとお婆さんにお返事するわたし。
「あはは……お婆さんはお相手さんはいらっしゃらないんですか?」
すると、お婆さんは悲しそうな顔になる。
「夫には先立たれてのう……今では孫の姿を見るのが楽しみじゃの」
しまった、触れちゃいけない話題だったかな……
「あ、ごめんなさい……不躾な質問でした」
わたしの言葉を聞いて、お婆さんはいやいやといった感じで話しだす。
「いやいや、良いんじゃよ。ほら、そろそろブーケトスの時間じゃ、私みたいな老いぼれじゃなく未来ある若者が掴まないとねぇ」
進行役の方が、いよいよといった感じで宣言する。
「それでは、ブーケトスの時間です! 新婦の方、どうぞ!」
新婦さんの手にあるブーケが宙を舞う、それはまっすぐわたしの元に向かっていき手に収まった。
「わっ、ブーケ、取れちゃった!」
それと同時に歓声が巻き起こる、新郎新婦の2人がこっちに来てとジェスチャーしているので従ってそちらに向かう。
「お嬢ちゃん、受け取ってくれてありがとう」
「貴女に素敵な相手が見つかるといいわね」
2人にお祝いの言葉を貰い、つい妄想しちゃうわたし。
わたしはウェディングドレスを着るとしてお相手は……?スーツなのかドレスなのか。女の子同士の禁断の恋になっちゃうの?いやわたしの場合ノーマル……?
などとよろしくない方向に妄想が進んでいくので一旦リセット!
「ありがとうございます、素敵な相手が見つかるようにしていきたいですね!」
とひとまず無難に会話を続けていく。
「それでは今回の公開式はこれにて終了となります、この後は親族の方のみの式がありますので一般の方はお帰りください」
アナウンスに従い、わたしもそろそろ帰路に付く。その間も妄想が止まらなくなっていた。
(やっぱり相手は男の方になるのかなぁ、わたしの伴侶になってくれる人は。1番身近な男の子……翼くん……いやいや確かに翼くんは好きだけどそういう好きじゃなくてっ!)
などと良からぬ妄想をしているといつの間にか借家まで帰ってきた。
玄関を開けると翼くんが出迎えてくれる。
「薫か、お帰り。今日の夕飯の担当が薫と俺になっているから準備ができたら手伝ってくれ」
うわ、改めて翼くんの顔と声を見ると妙に意識しちゃう……!
「薫? どうした? 顔が赤いが熱でも出たか?」
「ううん、ちょっと1人にさせてほしいな……」
部屋に戻ってベッドでばたばたするわたし、これが……恋心?
それは、くすぐったくてキュンとくる甘酸っぱい気持ち、今日1日は悶々とした気分で過ごしたわたしなのでした。