29話 Happy Birthday!(挿絵あり)
それは、突然の事でした。
スピカに着いて数日目の朝、みんなで朝ごはんを食べ終わった頃に突然クリスさんがやって来たの。
「おはろ〜! かおるん達元気にしてた?」
急な降臨にびっくりしながら答えるわたし。
「元気ですけど……急にどうしたんですか?」
すると、クリスさんはふっふっふと自信満々で教えてくれる。
「いや、今日はかおるんに吉報を伝えに来たのさ。かおるんが元いた世界では今が11月20日、……つまり君のお誕生日だよ」
それを聞いたみんながそれぞれにお祝いの言葉をくれる。
「お、カオル誕生日か! こりゃめでたいな!」
「カオルさん、おめでとうございますですわ」
「カオルお姉ちゃんお誕生日おめでと~!」
「……良かったな、誕生日おめでとう」
みんなからのお祝いの言葉を受けてちょっと感動しちゃってるわたし、クリスさんも何故か満足そうにしていたよ。
「それじゃあ、言いたい事は伝えたから帰るね。バイバーイ!」
そう言い残してクリスさんは消えていった。相変わらず不思議でお茶目な女神さまだねぇ。
ちょっとして、ミリアちゃんがわたしに嬉しそうに話してくる。
「よーし、それじゃあ今日はカオルを盛大に祝わないとな! 今日くらいはクエストも後回しにして遊ぼうぜ、みんな良いよな?」
ユニちゃん、アリスちゃん、翼くんも賛成してくれてるようだった。
「お誕生日を祝ってくれるのは嬉しいけど、そんなにいっぱい祝われるのも申し訳ないよ」
わたしがそう言うと、ユニちゃんがビシッと反論してくる。
「カオルさん、こういう時は素直に受けておくべきですわ。私達の仲ですもの、遠慮は不要。ですの」
続けてミリアちゃんが話す。
「それじゃあやっぱり最初は誕生日プレゼント探しだな! カオル、何か欲しい物はあるか?」
ちょっと考えて、服屋で見たロリータ服の事を思い出す。
「せっかくこの街にいるんだし、この前ショーケースで見たお洋服が良いな、確か金貨1枚と銀貨5枚位で結構お値段張っちゃうんだけど……」
それを聞いたミリアちゃんがわたしの頭を撫でながら応える。
「よーし、良く言えた。それぐらいなら全然構わないぜ。それじゃあ服を買いに行くついでにちょっと良いとこで昼飯にするか!」
そして、数日前にみんなで服を買った服屋に再び来たわたし達。今回は翼くんも荷物持ちとして一緒だよ。
「いらっしゃいませ~!」
店内に入ると、相変わらず心地よい声で接客してくれる店員さん達。
わたしは店員さんに勇気を出して話しかける。
「すみません、ショーケースにある服を買いたいんだが大丈夫ですか?」
すると店員さんはもちろんです!と明るく対応してくれた。気になってた服を伝えると、すぐにケースから取り出して試着をさせてくれる。
試着した結果、サイズもばっちり合うみたいなのでそのまま購入したよ。ちょっと可愛すぎて恥ずかしくて街なかでは着れないから翼くんに服を入れたバッグを持ってもらってるけど。
「さてと、プレゼントも買ったし昼飯だな。誕生日ならアレを食べないとなぁ!」
そんな事をミリアちゃんが言っていた、アレってなんだろう……?
しばらく歩いて目的のお店に着いたわたし達。わたしでも分かるくらい高級感に溢れるいいとこのレストランみたいだ。
「えっと、ここってだいぶ格調高いとこじゃないのかな……? マナーとかドレスコードとか大丈夫……?」
そう呟くと、ユニちゃんが補足してくれる。
「カオルさん、ここは高級料理を庶民的な感覚で食べられるのがウリのレストランですの。ですから普段通りにしておけば大丈夫ですわ」
なるほど、そんなお店もあるのか。そう思っているうちに注文した品が来たみたい。
「これは……ステーキだね。けどオーク肉とかの普通のお肉じゃないみたいだけど」
ミリアちゃんが正解を言ってくれる。
「良く分かったな、これはジャイアントタートルの肉だ。長寿の種族だから長く生きれるようにって願掛けで誕生日に食べるんだよ」
なるほど、と感心するわたし。世界が違えば文化も変わる、って事だねぇ。
「それじゃあ、いただきます」
とは言ったものの、亀肉なんて食べたことないからどんな味なんだろう……とちょっと不安になっちゃう。
けど勇気を出して食べてみると……美味しい。あっさりしていて噛むごとに旨味が少しずつ出てくる感じ。
ステーキを堪能しているとみんなの分の食事も届いたようだった。
「あっ、ごめんね。わたしだけ先に食べちゃって」
すると、アリスちゃんが話す。
「ううん、今日の主役はカオルお姉ちゃんだよ。気にしないで一緒に食べよ?」
そうだね。と言ってみんなでお昼ごはんを味わって借家に帰ってきたわたし達。なんでもこれからバースデーパーティーを開いてくれるらしい。
準備に結構時間が掛かるからそれまでの間に服を着替えてのんびりしておいて、と言われたので早速買ってきた服に着替える。
姿見で映すと、そこにはフリルとリボンがキュートな衣装のわたしが映っていた。
やっぱりかわいい服だ……とテンションが上がって来たところで翼くんがわたしを呼びに来た。
「待たせたな、パーティーの準備ができたぞ」
翼くんに連れられてリビングに行くと、花で飾られたテーブルに色々なお菓子が並んでいた。
ミリアちゃんが代表で言葉を紡ぐ。
「改めて、誕生日おめでとうな。カオル」
「カオルの居た世界では誕生日にはケーキを食べるんだってな、もちろん用意しておいたぜ。ささ、席に付きな、お嬢様」
言われるままに席に着いて、まずは一口目として切り分けてあるケーキをフォークで口に運ぶ、その美味しさとみんなの優しさで思わず笑みが出ちゃうね。
ユニちゃんが微笑みながら伝えてくれる。
「ふふっ、カオルさん、満面の笑みですわね。気に入って頂けて良かったですわ、実はそのケーキ私が作りましたの」
アリスちゃんも負けじとアピールしてくる。
「カオルお姉ちゃん、このクッキーはわたしが作ったんだよ! 食べてみて!」
そう言われてクッキーも食べてみる。お砂糖たっぷりのアリスちゃんらしい味だった。
「みんな、わたしの為にありがとう。みんなに出会えて、わたしの秘密を受け入れてくれて、本当にありがとう」
すると、珍しく翼くんが感情的に話してくれる。
「俺も薫と会えたときは嬉しかった、同じ日本からの転移者と会えるだけでなくここまで仲良くできるとはな……すまない、話し過ぎた」
「ううん、良いんだよ。今日でわたしは17歳だけどわたしはわたしのまま変わらないから。これからもよろしくね!」
そうして、楽しいパーティーは続いていくのであった。
素敵な挿絵は薫ちゃんの立ち絵に引き続き扇さん(TwitterID:ougi810)に描いて頂きました!今後も何時になるかは未定ですが挿絵の掲載を予定しているので楽しみにお待ち下さい!




