24話 異世界風コミケ?(後編)
コスプレ会場から離れて漫画コーナーを物色することにしたわたし達、何となく男の人の割合が多くなってきたような?
「まあ、この世界でも漫画は男性人気のほうが高いからな」
ちょっとした独り言をばっちり聞かれてたみたい、ミリアちゃんが教えてくれた。
「あれ? あっちの方に人混みができてる」
そう思って向かってみようとするとミリアちゃんに肩を掴まれて止められた。
「おっと、そっちは成人向けコーナーだ。確かにカオルは年齢的には成人だが見た目的にアウトだからやめときな、今はアリスも居るしな」
「そ、そうなんだ……恥ずかしい……」
思わず顔が赤くなるわたし、それを見たミリアちゃんとアリスちゃんがからかってくる。
「お? カオルもやっぱりそーゆーのが気になってくるお年頃かい?」
「カオルお姉ちゃんもやっぱりえっちなの好きなの……?」
「もうミリアちゃんとアリスちゃん! からかわないでよう」
「と、ともかく! 一般向けコーナーの作品を見に行こ、ねっ?」
話題をそらして周囲を見てみると、「新ジャンル、男の娘もの!」というポップを見つけた。
気になったのでそっちの方に向かってみると、スペースに居る女の子のほうから話しかけられた。
「お、皆さん男の娘に興味がおありですか?! えっと、男の娘ってのはですね……」
「知ってますよ、女の子にしか見えない容姿の男の子の事ですよね?」
すると、女の子は驚愕した表情をして更に畳み掛けてきた。
「まさか男の娘が通じる方と出会えるとは……! もしや最近来た転移者の方ですか!?」
ええ、そうですと若干引きつつ応えるわたし。まさか自分が男の娘ですとは言えないしね(自分で言うのもなんだし男の娘って言われたくはないけども)
「嬉しいです、ある転移者の方から男の娘というジャンルを知り、布教を頑張っていたのですが中々理解されず……」
と一人恍惚状態になって語り始める女の子。どうしよう……と考えているとミリアちゃんが耳打ちしてきた。
「あーなるほどな。カオルと合った初日にツバサが言ってた男の娘ってのはそんな意味だったのか。で、どうする?」
「どうする、って?」
「いや、悪いやつでは無さそうだがあまり関わらないほうが良いような……」
「ま、まあもうしばらくは付き合ってあげようよ」
すると、ハッと気付いて女の子は謝ってきた。
「すみませんっ、私、男の娘の事になるとついつい……」
「それで、新刊買っていかれます? 男の子と男の娘のラブコメもの、1冊銅貨5枚です」
それくらいならいいかな? と思ってミリアちゃんに確認を取ってみる。
「まあ、良いんじゃないか? カオルが読みたければ」
それじゃあ1冊、と伝えると女の子は凄く嬉しそうに冊子を渡してくれた。
「ありがとうございますっ、他の方にも是非男の娘の素晴らしさについて布教をお願いしますっ!」
そう熱意のこもった台詞で見送ってくれる女の子。決して悪い子じゃ無いんだろうけど気持ちが暴走し過ぎというか……ともかく楽しい娘ではあったかな。
「よし、そろそろ良い時間だしお終いにするか。ユニとツバサを魔導通信機で呼ぶからちょっと待っててくれ」
ブクマの会場外に移動したわたし達はミリアちゃんの連絡中暇だった、なのでさっき買った漫画を流し読みしてみる。
内容は大雑把に言えば男の娘に一目惚れした男の子がお風呂場で偶然の事故によって男の娘の性別を知るも、「それでも構わない、俺は君が好きだ」と決心して結ばれる。というお話だった。
……なんとなーくわたしの境遇に似ているような、お風呂場で性別を知られたのは女の子組だし男の子と恋に落ちてはいないけれども。
わたしの居た世界的には王道過ぎて古臭い位のお話だけどこの世界では新鮮なのかなーって感想だった、決してつまらない訳じゃなくむしろ胸がキュンとするような良いお話だったけどね。
でも、わたしには恋愛はまだ早いよね……前のキャンプの時の恋バナの時にも言ったけど、わたしは恋愛対象がよく分かってないから。
そうしてるうちにユニちゃんと翼くんがこちらに向かってきた。
「お待たせしましたわ、魔導書に小説に豊作でしたわ〜!」
相変わらずテンション高めのユニちゃん、本のことになると人が変わるね……
「すまない、待たせたな。目標の魔導書は無事入手した」
こちらは相変わらず落ち着いたテンションの翼くん。
「よし、全員揃ったな。それじゃあ各自今日買った魔導書のタイプを教えてほしい」
「ちなみにあたしは理力魔法だな」
「わたしはユニちゃんのおすすめ通り水魔法だよ、あと時魔法もね」
「私は自然魔法だよっ」
「俺は熱魔法だ」
各自報告していく中、ユニちゃんだけ格が違った。
「今回は雷魔法を中心にセレクトしましたわ、それと通信魔法、転移魔法も取得を目指したいですわね」
「おーおーユニは相変わらずだな。それじゃあ帰るか、習得は明日以降の課題として今日はゆっくりするぞ〜」
そうしてブクマから帰るわたし達、非常に濃い1日だったなぁ。明日はユニちゃんを教師役に迎えて水魔法の習得練習があるから今日は休まないとね。
ハプニングもあったけどブクマであった出来事はこれからの力にできそうかな、ちょっと楽しみにしておこっか。