23話 異世界風コミケ?(中編)
気になって覗いてみたコーナーはどうやらコスプレコーナーだったらしく、いろんな人が特徴的な衣装を着て決めポーズを取っていた。
龍の尻尾を付けて赤と黒の露出高めの装甲を付けている女の人、胸と股関だけカバーしてるだけの露出度凄い高い女の人(ビキニアーマーって言うんだっけ?)、一人では扱えなさそうな大剣を持ったカッコいい男の人等バリエーション豊かな人たちが居て、それを見る為の人だかりも沢山居てカオスな事になっちゃてるね。
ぶらぶらと眺めていると、コスプレしているお姉さんの前に行列ができているのに気付いたわたし、なんだろうと思ってそっちの方向に向かってみる。
お姉さんの横に看板が置いてあるのに気付いたので見てみると
「幻視魔法を使ったコスプレ体験、してみませんか?」
と書いてあった。
コスプレかぁ、興味なくは無いけど恥ずかしいかも……と考えていると、お姉さんがわたしに近寄って声を掛けてきた。
「あら、お嬢ちゃん、コスプレに興味あるのかしら? あたしが手取り足取り教えてあげるわよ?」
突然のお誘いに慌てて答える。
「え、えっと。興味無いわけじゃないけど恥ずかしいかもって……」
するとお姉さんはわたしの手を取ってさっきまでいた場所に連れて行こうとする。
「興味があるなら素質十分よ、あたしに任せて頂戴」
「え、でもコスプレ用の衣装なんて持ってきてないですよ?」
「それなら大丈夫よ、幻視魔法を使って着てる服を変えずにコスプレ衣装を着ているように見せることができるのよ」
なるほど、そんな事も可能なんだね。それじゃあお願いしてもいいかな?
「分かりました、コスプレやってみたいです!」
そう言うと、お姉さんがワクワクを隠せないような顔で話す。
「よし、決まりね。あなたの名前を教えてくれる? あたしはマリヤっていうの」
「わたしは薫ですっ」
「それじゃあ薫ちゃん、今から魔法をかけるから大人しくしててね。下手に動くと魔法の座標がずれて変な見た目になっちゃうからね」
マリヤさんに言われる通りにじっとするわたし、するとマリヤさんが呪文の詠唱を始めて、それと同時にわたしの衣装が光に包まれていく。
詠唱が終わって光が収まると、そこにはだいぶん露出度の高いチア衣装のようなコスプレ衣装を纏ったわたしが居た。
えっと、脇、おへそ、ふとももとかが全開のかなり恥ずかしい衣装なんだけど……
マリヤさんに話しかけようとした瞬間、向こうから話しかけられた。
「薫ちゃん、可愛いじゃない〜! ほら、あたしとペアで記録してもらお!」
そのままグイグイ押され、少し盛り上がった撮影用コーナーに連れて行かれるわたし。
そこにはカメラのような物を持ったお兄さん達が沢山居て、わたし達を撮影しようとスタンバイ済みみたいだった。
「うう、やっぱり恥ずかしいよう……」
そう溢すと、マリヤさんが小声で伝えてくる。
「実際に胸とかパンツとか見られる訳じゃないし幻視だから本当に素肌を見せてる訳じゃないのよ? こういうのは楽しまなきゃ♪」
その言葉に乗せられてマリヤさんと一緒にカメラマンのお兄さん達のポーズ要求にこたえていくわたし達。
でも何かマリヤさんの様子が少しおかしい気がする、ちょくちょくわたしのお尻を触ってくるしスキンシップも過剰な気がする。これがコスプレ界隈の普通なのかな……と疑問に思ってるとマリヤさんが急に耳もとに息を吹きかけてきた。
「ひゃうっ!?」
思わず変な叫声をあげるわたし、マリヤさんはそのまま耳の近くでわたしにしか聞こえないように話しかけてきた。
「ねえ薫ちゃん、あたしあなたの事気に入ったの。このまま一緒に大人の階段登らないかしら?」
……えっと、もしかしてマリヤさんって女の子同士かつ幼い子好きとかいう2重の禁断の関係ですのっ!?
いや、わたしは心はともかく身体は男の子だし、見た目はともかく年齢的には(この世界基準では)立派な大人だけども!
ともかく、この危険な状況をどうやって突破しようと考えるんだけど、マリヤさんからは逃れられそうに無いし撮影してるお兄さん達も今の状況をパフォーマンスとして受け取っている様だった。
四面楚歌な状況で、どうしようか迷っているわたしへの助け舟は唐突に現れた。
「ん? もしかしてあの少女、カオルじゃないか? 衣装は違うけど間違い無い!」
この声はミリアちゃん?声を聞いて暫くするとミリアちゃんがわたし達の目の前まで走ってきて強い口調で叫んだ。
「カオル! そいつから離れろ!」
そう言いつつ、わたしの腕を引っ張って強引にマリヤさんから引き離す。
「貴女、何ですの? せっかく楽しい時間を過ごしていましたのに」
マリヤさんからの言葉を上書きするようにしてミリアちゃんが声を上げる。
「お前、男だろ? それも転移者の。カオルを騙してエロい事させようとしたんだろうがあたしが来て残念だったな」
「お前のことをブクマ運営に言えば相応のペナルティが課される筈だ、大人しく自首しな。さもないと……」
すると、マリヤさんとわたしの身体が光り、消えたあとには元の服のわたしと中年のおじさんがそこに居た。
「チクショウバレたら仕方ねえ、わかったよこの人数の前じゃ逃げ隠れもできねえしな。自首してやるよ」
そう言い残しておじさんはブクマの運営の人に連れ去られていった。
「うえーん怖かったよう〜!」
「よしよし、この世界にもあーゆー変な奴が居るから注意しないと駄目だぞ?」
ともかく無事にコスプレ会場から抜け出せたわたし達。
「さて、アリスを待たせてるからな、漫画コーナーに行ってブクマもお終いだな」
そういえばミリアちゃんと一緒に行動してた筈のアリスちゃんが居ない。
「今アリスには漫画コーナーの入り口で待たせてある、危険かもしれないがカオルの救出が優先だったんでな」
「それじゃあ漫画コーナーに行ってみよっか、そういえばこの世界に来てから漫画って読まなくなったなぁ」
そう話していると、わたし達を見つけたアリスちゃんがこちらに向かってくる。
「ミリアお姉ちゃん、カオルお姉ちゃん、おかえり!」
「ちゃんと無事に待てれたようだな、よしよし」
そうして3人で漫画コーナーを物色することにしたわたし達、好みに合う漫画は見つけられるかな?