22話 異世界風コミケ?(前編)
「うわー、すごい人混み……!」
ブックマーケット、略称ブクマの会場に着いたわたし達が見たのは圧倒的な人の数だった。
「おー、相変わらず盛況だなぁ」
ミリアちゃんがそう溢す、そしてわたし達の方を向いて確認事項を喋り始めた。
「皆いいか、注意事項をいくつか話しとく」
「まず、本の販売コーナーでは魔法の使用禁止だ。試し打ちして暴発する輩が多いからな、試したい気持ちは分かるが家に帰ってからな」
「そして、皆に魔導音声通信機を渡しておく。集合の連絡や何かあった時の連絡にはこれを使ってくれ」
「最後に、基本は各自行動だがアリスはあたしと一緒に行動だ、良いな?」
「うん、ミリアお姉ちゃんと一緒に居るね!」
「よし、それじゃあ解散だ。時間が経ったらあたしから連絡する。じゃあ各自頑張ってな!」
そう言ってみんなと別れる事になった、わたしは水魔法の魔導書販売コーナーに向かって歩き始める。
なぜ水魔法なのかというと、ユニちゃんから昨日おすすめされたからだ。
なんでも、
「カオルさんの治癒魔法を補うには水魔法が良いですわね。カオルさんは能力を持って治癒してますけど、本来治癒能力は水魔法の分類ですの。それ以外でも飲み水の確保や身体を洗うのにも使えますし、戦闘でも使えますわ。」
との事らしい。大体の魔法が使えるユニちゃんの言う事なら間違い無いだろうと思ってその通りにしてみることにしたよ。
しばらく歩いていると、水魔法の魔導書を販売しているコーナーにたどり着いた。色んな所で声を上げてアピールしている中、ふとコーナーの隅の方でひっそりと設営して販売していたおばあちゃんのブースが目に止まる。
わたしがそのブースに行ってみると、おばあちゃんの方から話しかけてきた。
「おや、お嬢ちゃん。老いぼれの私になにか用かね」
「あ、水魔法の魔導書を探してて、おばあさんの所が気になったので……初心者向けの魔導書って扱ってますか?」
わたしが応えると、おばあちゃんは古ぼけた鞄の中から1冊の本を取り出してわたしに見せてくれた。
「入門書だとこれかねぇ、今なら水の魔石もおまけに付けとくよ。銀貨2枚でどうだい?」
銀貨2枚ってことは日本円換算だと2000円ぐらいかぁ、魔石も貰えるならいい金額かな?
「はい、買いますっ」
「ありがとね。はい、魔導書と魔石だよ」
おばあちゃんに銀貨2枚を渡して受け取ったわたし。けど魔石をどう使えばいいのか分からないので聞いてみる。
「えっと、おばあさん、魔石ってどう使えば良いんでしょうか……?」
すると、おばあちゃんは一瞬怪しげな顔をした後に納得した顔で応える。
「あなた、もしや転移者かい?この世界生まれならそんな質問出ないからねぇ」
バレちゃったかーと頷くと、おばあちゃんは話を続ける。
「魔導具、持っているだろう?そこに魔石をはめる穴が開いてるはずさ。そこに魔石をはめて魔導書の通りにすれば魔法が使える筈だよ」
わたしはマジックボックスからステッキの頭の部分だけ出して、確認してみる。
見てみるとそれらしいスペースがあったので貰った魔石をはめてみる。
すると頭のオーブが水色に淡く発光し、少ししっとりするようになった。
「そう、それで良いんだよ。但し試すのは家に帰ってからね」
ステッキをマジックバッグに戻して、おばあちゃんに改めて感謝を伝える。
「あの、ありがとうございました!何も知らないわたしにここまでして下さってありがとうございます」
すると、おばあちゃんも感謝の言葉の言葉を伝えてきた。
「いや、私の方からもありがとうね。こんな古びた魔導書を買ってくれる人は少なくてねぇ。お礼と言ってはなんだけど、他に聞きたいことはあるかい?」
それならば、と時魔法について聞いてみることにする。
「それじゃあ、わたし時魔法に興味があるんですけど何か情報を頂けませんか?」
わたしがそう言うと、びっくりした顔でおばあちゃんが応える。
「時魔法!?いくらお嬢ちゃんが転移者だとしても時魔法なんて容易に使えるものではないはずだよ?」
「はい、でも知りたいんです。みんなの役に立てるかもしれない力なんですっ」
すると、おばあちゃんは鞄の中からかなり古びた本を1冊取り出してわたしに渡してきた。
「これを持っていくといいよ、お代は要らないさ。お嬢ちゃんに使える代物かは分からないけどねぇ」
「良いんですか?貴重そうな物をただで頂いてしまって……」
その言葉におばあちゃんは笑顔で応える。
「なに、お嬢ちゃんならもしかして使えるかもしれないのさ、こんな老いぼれが持ってるより有意義になるわよ」
そして、おばあちゃんにたくさん感謝の気持を伝えて魔導書コーナーから抜けたわたし。まだ集合の合図は掛かってないのでどうしようかな……と思ってると、近くでカラフルな服装に着替えた人たちがたくさん居るコーナーを見つけた。気になってそのコーナーに行ってみるわたし、しかしこれが大変な事になるとはまだ知らなかったのです。