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20話 え、そんなに凄かったんだ……

 遂に辿り着いた塔の最終階、扉を開けて最初に見えたものは身長4〜5メートル位はありそうな巨大なオークだった。そしてその側には合わせて10匹は居そうな通常サイズのオークの群れ。


「なるほど、オークキングが相手って訳か」


 ミリアちゃんは軽く言うけど、あんな肉塊と言ってもいいような巨体、勝てるのかな……?

 などと考えている内にミリアちゃん、翼くん、スタンさんが普通のオーク(って言っても2メートル近く有るんだけどね)を倒そうとしている所だった。


「行くぜ、フレアスマッシャー!」

「無駄だ、斬る!」

「ゆくぞ、ダブルスラッシュ!」


 3人の掛け声が聞こえた後には3体のオークの死骸が残されていた。いや、わたしのパーティーのみんな強すぎない……?


 「オノレェ……オデノコブンタチヲ……ニンゲンドモメ!」


 オークキングが喋った(上位個体は人語を話せるんだってさ、後でユニちゃんに聞いたよ)と同時に持ってる斧に魔力が凝縮されていく。


「そうはさせませんわよ!リーフバインド!」


 ユニちゃんが拘束魔法を唱えると、オークキングの腕に蔦が絡まり行動を阻害する。


「行くよ〜!ウィンドスラッシュ!」


 アリスちゃんが魔法を唱えると、オークキングの身体が風により切り刻まれ、ズタズタになっていく。


「最後は私よ!恨みはないけど覚悟しなさい!」


 エリーさんがレイピアを構えてトドメを刺そうとした時、問題は起こった。オークキングがユニちゃんの拘束魔法を振り切ったのだ。


「オノレェェェ!シネェ!」


 人一人を余裕で切断出来そうな斧の一撃がエリーさんを襲う、エリーさんは突然の行動に避ける余裕がなく、これから起こる惨劇を想像したのか固まってしまっていた。


「エリー!」


 スタンさんが悲痛の声をあげる、わたしも無意識に魔力を声に乗せ叫んだ。


「止まってー!」


 すると、エリーさんに斧が食い込む直前でオークキングの動きがピタリと止まる。その間にスタンさんがエリーさんを救いに動いた。


「エリー!大丈夫だったか!?」

「ええ、大丈夫よ。けど一体何が起こったの……?」


「済まないが、お前はここで終わりだ」


 翼くんがオークキングの心臓部分に剣を突き刺す、すると辞世の句を残して魔力の塊に変換されていく。


「オマエラ……オデニナニヲシタ……」


 そうして魔物を全て倒したわたし達、皆わたしをまさかといった目で見ている。ええと、わたし何かやっちゃったかな……


「なあカオル……あんた時魔法が使えるのか……?」


 半信半疑っぽく聞いてくるミリアちゃん、ユニちゃんも呆然しながら話してくれる。


「いくらカオルさんが転移者で優秀な能力を持ってたとしても、時空魔法を使えるというのは信じられませんわ……大魔術師でも基礎すら困難な最上級の魔法ですのに」


「わたしも正直良くわかってないの、エリーさんを助けようと思って魔力を込めて叫んだらあんな事になっちゃって……」


 そうみんなで話し合っていると、久しぶりに聞いた声が聞こえてくる。


「はろはろ〜!かおるん、ナイス活躍だったね〜」


 この声と気の抜ける挨拶は……


「もしかして、異世界転移の時のクリスちゃん?!」


 わたしの声に、クリスちゃんが応える。


「そそ、クリスちゃんだよん。今降臨したのは他でもない、さっきの時魔法についてさ」


 クリスちゃんと会話していると、他の翼くんを除くみんなが土下座しているのに気付く。


「え、みんなどうしたの?」

「いや、カオルは気軽にちゃん付けしてるけどクリス様はこの世界を管理する女神様のお一柱なんだよ!あたし達は頭が上がらないよ」


 よく考えたら、異世界転移なんてできる時点で凄い方なのは分かっておくべきだったよね……わたしもこれからはさん付けしよう。


「それで、時魔法の話しに戻っていいかな?」

「本来、かおるんに与えた能力は治癒魔法のみだった、これは間違い無い。けど私がこっそり与えた能力、『奇跡の種』がかおるんに影響を与えたのかもしれないね」


「奇跡の種?」


「そう、誰かの為に強い願いを込めた時、奇跡を起こせるような特殊能力だね。今回はエリーちゃんを助けたいと思ったのがきっかけで時魔法の奇跡を起こしたみたいだね」


 なるほどと納得するわたし達、するとクリスさんが慌てて話してきた。


「ごめんね、そろそろ時間切れだね。また何かあれば伝えに来るね。じゃあねーかおるんとみんな!」


 そう言い残して姿を消したクリスさん。しばらくみんな呆然としてたんだけどスタンさんが気を戻して話しかけてきた。


「皆、思うところは色々有るだろうがまずはこのダンジョンを抜けてからにしないか?早く宝物を回収してここを出よう」


 そうだね。と意見がまとまったのでドロップ品や宝箱の中のマジックアイテムを回収していくわたし達。残念ながら性別転換器は見つからなかったけど特大サイズのマジックボックスや魔力を増幅できるブローチなど良いアイテムが回収できたよ。

 そしてダンジョンに入った時と同じ様な魔法陣を使ってダンジョンから脱出したわたし達一行。手に入れた報酬はわたし達のパーティーとスタンさん達のパーティーで7:3で分ける事になった。本当ははんぶんこにする予定だったんだけどまたエリーさんを助けてくれたお礼ということでこうなったみたい。


「それじゃあミリアさん達のパーティーに良い事があるように祈ってるよ、カオルさんには感謝してもし切れないな」

「いえいえ、わたしの力で誰かを助けられたならそれで十分ですっ!」

 そしてスタンさんたちと別れたわたし達は、借家に帰ってから話しに花が咲くのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「やっぱりかおるんは興味深いなぁ、まさか時魔法まで使うとはねー」

「ふふふ、男の娘いいねぇ〜流石私が目を付けた娘、これからも楽しい出来事に期待してるよ〜」


 天界でクリスはそう独り言を言いながら笑うのであった

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