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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
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1-29-2.三島卓也【陣野卓磨】

「影姫、遅かったな……いや、それはいいし俺は大丈夫なんだけどよ……これ、なんかすごい事に……」


 今まで見ていたスマホの画面を影姫に見せる。

 影姫はそれを一瞥するとローテーブルの前に腰を下ろした。


「すまん。色々回っていてこんな時間になってしまった。燕に色々悟られて心配をかける訳にも行かないので駆け足で戻る事も出来なかった」


「なぁ、これ、スマホで見たんだけど、近くの大量殺人ってまさか……」


「ああ……」


 こちらを向く影姫の表情には焦りも感じられる気がする。


「もたもたしている間に屍霊がかなり凶暴化している。あの時逃してしまったからかも知れん……いや、奴からしたら私達に逃げられたと捉えていると言うべきか。どちらにせよ一度狙った標的をまだ生かしたままにしていると言う現実が奴の殺意を増幅させてしまったのかもしれん」


「じゃあやっぱり」


「卓磨が言わんとしている件だ。私もさっき、偶然そこを通りがかったのだが、人が一度に沢山死んだ。警察があの場にいたようなので、そこは任せて私は急いで返ってきたが……早急に対策をとらねば取り返しがつかなくなるぞ」


「マジかよ……」


 そんな事言われたってどうすりゃいいんだ……。

 あのサイトさえ閉鎖できればある程度は何とかできるんじゃないかと思うが、勿論俺はあのサイトの管理に入るパスワードもIDも知らない。その上で当然の事だが、俺にハッキングとかクラッキングとかそんな事を出来る能力はない。

 学校のパソコン部にもそこまでの能力を持っている奴がいるなんて聞いた事もないし、知り合いにも……。

 誰か、誰かいないのか……!?


 必死に心当たりがないか思い出す。

 誰か。いないか。誰か……。


 考えれば考えるほど頭の中に靄がかかったように曇っていく。勉強嫌いの悪い所だ。難しい事を考えようとするとすぐこれだ。もっとはっきりと頭の中の整理が付いていればこんなに悩む事もないのだろうに。


 曇って…曇っていく……雲って、キモって、雲って……。

 雲って!?


 ハッと突然浮かんできた丸い顔。眼鏡を曇らす男の顔が頭に浮かんできた。

 三島、そう、三島だ!


 確かあいつ、前に自身がやってるオンラインゲームに関してムカつく事を書いて煽ってきた掲示板の書き込みを見て、掲示板ごと見るに絶えない姿に改竄かいざんしてやったとか自慢してた事があったような……。

 実際に俺もそのスクリーンショットを見せてもらった事がある。マジ物かどうかは定かではなかったが、アイツならやりかねんと思ったのは覚えている。


 俺が今頼るべきはパソコン部の部員でもオカルト研究部の部員でもなく、アニメーション研究部(アニ研)の三島その人なのだ。


「何か思いついたのか?」


 影姫が俺の顔を見て何か気付いたようで、ゆっくりと顔をこちらに向けた。


「わずかな希望にもかけて見るさ。屍霊を倒せないなら大元を断てばいいっ」


 スマホの電話帳をスクロールして三島を探す。そして目に入ったアニメキャラのアイコンをタップすると番号が画面に表示されて呼び出し音がなり始める。

 頼む、出てくれ。


 ……。


 コール音が鳴り続く。

 くそっ、出ないのか?

 まさか、まだヘソ曲げてんのかよ。


 ……。


『もしもし~』


 暫く鳴らして諦めかけたその時、受け口のスピーカーから三島の声が聞こえてきた。出てくれたのだ。


「三島! よかった! 出てくれた!」


『ゴメンゴメン、マナーモードになってて気が付かなかったんだな。陣野氏ー。どうしたんだいこんな時間に』


「いや、ちょっとな……」


『あ、それより丁度言いや、烏丸氏から聞いたよ。あの件、僕達の誤解だったみたいだね。許してクレメンス~』


 あの件―――喫茶店の件か。友惟が説明してくれていたようだ。さすが持つべきものは親友、幼馴染。この説明がなければ三島はこの電話に出てくれなかった事だろう。感謝する。


「ああ、それはいいんだ。許す、許すから……」


『この電話もその事だよね? じゃあ、用件は終わったし、僕はアニメ見てる途中だから切るねー』


 え? おい!


「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょっと待て!! それだけの用事でわざわざ電話しないって!」


 今切られたらアニメを見終わるまで電話に出ない可能性がある。コイツはそういう奴だ。

 これを逃したら次は何時になるか分からない。

 出現条件である〝時間〟を見るに、それが合っているのなら明日の十七時前後までは大丈夫だとは思うが、事は一刻を争う。これ以上死人が出てほしくないし早いに越した事は無い。


『なんだよー。今忙しいんだよ』


 受話器の向こうから面倒臭そうな声と、恐らく見ているであろうアニメの音声が聞こえてくる。

 その聞き覚えのある音声は今の時間帯にやっているアニメではない。深夜帯のアニメだ。という事は、今三島が見ているのは録画もしくは円盤ディスク


「アニメってどうせ円盤だろ? そんなのいつでも見れるじゃん!」


『陣野氏~。映像作品ってのは見たい〝今〟が大事なんだよー? それくらい陣野氏だってわかってるだろー?』


「いや、言いたい事がわからないでもないんだが、ちょっと頼みたい事があるんだ! 聞いてくれ! 何でもするから!」


『え? 今、何でもって』


「そういうお約束の掛け合いは今いいから! 急いでるんだ!」


 今頼れるのが三島しかいないと改めて考えると、ちょっと面倒臭くなってきた。

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