表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
69/613

1-20-2.解決策はあるのか【陣野卓磨】

 片付けの手を止め影姫がこちらに向き直る。


「私を起こした人間が弱すぎて本来の力が出せん。何か他に解決策を見出みいだす必要がある」


 起こしたってどういう事だ。確かに影姫は俺の隣で全裸で寝てて、俺が胸を触って起こしたのかもしれないが、それは一時的なものだろう。それとも、何か別の意味を含んでいるのだろうか。俺には影姫が何を言わんとしているのかが、よく分からなかった。


「解決策、あるのか?」


 だが、真剣な顔でこちらを見つめる影姫に対して、今別の質問をぶつける事は出来なかった。

 そして、俺の問いに対して影姫は手を上げて拳を作り、指を一本立てた。


「①知っている人間に強力で戦える者がいるのならその人間に頼む」


 少ない人間関係を思い出してみるが、いくら考えてもそんなやつ知り合いにいない。いる訳がない。テレビに出てるような超能力者でもインチキばかりなのに、俺の周りにそんな力を持った奴がいるはずもないのだ。

 皆、影姫の言う一般人ばかりだ。


「思い当たる節は……俺には無いな」


 俺の言葉を聞いて影姫が二本目の指を立てる。


「②根本となる者を見つけ出し、あの掲示板自体の存在を抹消させる」


「根本……裏サイトの管理人か……」


「ただ、これをやったところで屍霊が消えるかどうかは知らん。下手をしたら手がかりが消えるだけで奴を追えなくなる可能性もある」


 さっき掲示板で見た。管理人が失踪しているらしく、荒れに荒れていた。もしかしたら管理人をやっていた奴も既に殺されたのかもしれない。


 管理人には思い当たる節はある。

 一昨日目玉狩りに殺された御厨緑みくりやみどりだ。あいつは確かパソコン部だった気がする。


 さっき掲示板を見ていた感じだと、スレッドが荒れ始めていたのは御厨が死んだ日付時刻以降だった。百パーセントと言うわけではないが、俺の予想では御厨があのページの管理人だ。


 仮に俺の予想が外れて御厨と違ったとしたら、管理人が生きていたとしても俺に見つけ出せるとは思えない。


 そして三本目の指が立てられる。


「③諦める」


「おい! 諦めたら俺殺されるんじゃないのか!?」


 馬鹿言ってんじゃないよ! 死ぬなんて嫌だ。


「そうだな。だが、私には良い策などそれ以外思いつかん。邪魔をした以上、私もられるかもしれん。今回はこの部屋が狭かった事もあり、間合いが取りにくかったのもあるが、仮に広い場所で戦ったとしてもだ……はっきり言って、今の私では勝てるかどうかは五分五分ごぶごぶだと思う」


「そんなに強いのか、アイツ……影姫だってほら、何か武器持ってたじゃないか」


「武器があった所で力が出せなければ意味がない。あと、奴が画面から完全に出てきていたら、画面を壊した所で消えるかどうかも分からん。画面を壊したのも一か八かだった。今回は運がよかったと思うしかない」


「じゃあ、もしそうなったらどうすれば」


 少しの沈黙の後、影姫が小指を突き立てる。


「④殺られる前に自決するか?」


「馬鹿言えよ……」


 マジかよ……俺も何か……バールの様な物か、釘バットみたいな物とか武器を用意して戦わないといけないのだろうか。いや、俊敏な動きで刃物を持っていた影姫があの状態だったのだ。俺が向かって行って太刀打ちできるはずがない。退治なんてもってのほかだ。


 第一怖い。怖すぎる。さっきだって何がなんだかわからなかったのに、何の策もなしに不用意に近づくなんて俺には出来ない。返り討ちに遭ってザ・エンドってねって感じになるのが落ちだ。


 何か良い策、良い策……。こんなこと初めてだ。俺だって思いつかない。思いつくはずがない。

 焦りが頭を混乱させる。だが、思いつかないのは焦りだけのせいじゃない。例え冷静になったとしても対策が思い浮かぶとは思えない。何かないのかよ……。


「そう言えば卓磨、奴の事をイカリだとかクラスメイトだとか言っていたな」


 不意に影姫が言う。

 そうだ。あの声あの眼鏡、それにウチの制服も着ていた。恐らく伊刈だ。


「あ、ああ、さっきも言ったが、去年虐めにあってた奴でな……名前は伊刈早苗いかりさなえっていう奴だ。先月校舎の屋上から、飛び降りて……」


 昼に謎の映像で見た光景が頭をよぎる。胸糞悪いあの光景が。


 まさか伊刈が復讐の為にこんな事をしているのだろうか。そう思うと同時に、御厨の様に殺された俺の姿が頭に浮かぶ。

 血の気が引ひて行くのが分かった。確かに俺は伊刈に助けの手を差し伸べてやる事はしなかった。だが同時に虐めに加担なんてしてなかったぞ。それなのにこれはあんまりだろう。何で無関係の俺を襲うんだ。


 伊刈の自殺の原因ははっきりしている。天正寺達だ。あいつ等があんな事をしたせいで俺が殺されるのか。

 それは嫌だ。そんなのごめんだ。マジでなんとかならないのか……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ