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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-38-1.カチコミ【陣野卓磨】

 すっかり暗くなった外の景色を眺めながら、鬼塚刑事の運転する車に乗せられ走る事十数分。自宅が見えてきた。


「誰か来ているようだな」


 影姫が家の方を見てぼそっと呟いた。確かに自宅の前には黒い車が一台停まっている。その横の玄関側では複数の人がなにやら会話している様であった。


「誰かな、こんな時間に」


「さぁな」


 影姫の素っ気無い返事が返ってくる。


「……何かあったのかしら。少し離れてるけどここに停めるわね」


 鬼塚はそう言うと黒い車の後ろの少し離れた場所に車を停車しサイドブレーキを引いた。


「すいません。ありがとうございました」


 二人で礼を言い車を降りると、目に入って来た人物は或谷蓮美とそのお付きの立和田だった。二人は爺さんと何か会話していた様で、俺が車から降りてきたのに気が付くと、蓮美がこちらに駆け寄ってきた。


「陣野先輩、影姫っ。どこ行ってたのさっ」


 その顔つきは、暗がりでも分かるくらいに少し険しく、どこか急いでいる様であった。


「警察に行っていたんだ。どうかしたのか」


 影姫も同じ事に気が付いたのか、蓮美に問いかける。すると立和田と爺さんもゆっくりとこっちに歩み寄ってきた。後ろからは、鬼塚も何かあったのかと車から降りてきた。


「ええ、急な話なんだけど、今出没してる屍霊共の潜伏場所が分かったから、今夜これからうちの組でカチコミに行く事になってて……でね、屍霊が複数体いるから影姫たちにも協力してもらおうって話になって呼びに来たんだけど……」


「いざ尋ねたら二人とも外出しているとのことでしたので、諦めて僕達だけで現場に向かおうって所にあなた達が戻ってこられたんですよ。いやぁ、グッドタイミングでしたね」


 蓮美に続いて立和田が答える。


「屍霊共の潜伏場所だと? 妙な言い方だな。まるで屍霊が複数で徒党を組んでいるような言い方だな。そもそも今出現している……隙間男もメリーさんも、行動範囲からして地縛型の屍霊でもあるまいし、潜伏場所などあるのか?」


「そう、その通りよ影姫。徒党を組んでしかも固定の場所に留まってる。それも屍霊だけじゃない。人間も混じってんの。屍霊三体に人間一人」


「人間が? 屍霊だけならともかく、そんな事があるのか?」


 影姫は顔をしかめ蓮美の方を見つめた。


「私も最初は目を疑ったわよ。でも、うちの組の奴が現場の写真つきでメッセージ送ってきたから間違いないわ。どう見ても襲われている瞬間というより、何か会話しているような場面だった」


「撮影者からその時の状況は詳しく聞いたのか?」


「いや、メッセージ送ってきた組員、その後死体でみつかったから……でも、メッセージには間違いなく手を組んでいるように見て取れるってあったから。それで、うちの兄貴も含めて今夜その場所に……」


「もう少し早く影姫さん達に連絡できてればよかったんですけど、組の方もバタバタしておりまして……。僕も若頭に言われるまで頭にありませんでした。すいませんギリギリになって」


 申し訳なさそうな顔をしながら丁寧な口調で頭を下げる立和田。

 本当にこの人は見た目とのギャップがすごい。


「卓磨、ワシも話は聞いたが、非常に危険な案件じゃ。或谷組もおる事じゃし、とりあえずは影姫に任せて、卓磨が無理に着いて行く必要はないと思うが」


 爺さんはそう言ってくれるが、俺がいないと影姫は全力を出せない。しかし、屍霊が三体……。メリーさんと隙間男と、あとは誰なんだ。今出現しているのって二体じゃなかったのか。

 それに人間ってなんなんだよ。人間が屍霊に混じって人を殺してるって言うのか?


「場所は何処だ」


「貴駒峠よ。前に刑事さんが井戸で骨を見つけた小屋あったでしょ。あそこよ」


 影姫の問いに答えた蓮美の答え。

 貴駒峠。人間。そう聞くと、頭の中に警察署で見た記憶が浮かんできた。

 もしかして、その人間って……。

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