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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-35-3.確認【陣野卓磨】

 目を覚ますと、影姫達の顔が目に入ってきた。


「どうだった? 何か見えたか?」


 影姫の問いに、何を見たかを思い出す。

 見たのは一人の教師が屋上の鍵を閉めに行く所、そしてその教師が交通事故で亡くなったという話。

 確か、その教師の名が……。


「沢渡……沢渡って言う女性の教師に関する記憶が見えた……。霧雨学園の教師だったみたいなんだけど、その人が亡くなったって」


「それだけか?」


「ああ……」


 俺の返事に顔をしかめる影姫。

 しかし、七瀬刑事は違った。俺の言葉を聞いてポケットから一枚の紙を取り出すとそれを広げて見ている。


「卓磨君、沢渡って言ったな。沢渡って言ったら、ほら、これだ」


 そう言ってこちらに見せてきた紙。それは、家で見せてもらった監察医の報告メモだった。そうだ、これでその名前を見たんだ。メモの下部にはしっかりと『沢渡麗子』と記載されている。


「なるほど、この沢渡か……下の名前もこれであっているのか?」


 影姫の質問に見た記憶の事を思い出そうとしたが、その中では『麗子』と言う名前はだれも口にしていなかったように思う。


「いや、下の名前までは……」


「しかし卓磨君、見た記憶の中で下の名前を聞けなかったとしてもだ、苗字だけでも揃うなんて偶然はなかなかないぞ。しかも女性だろ。十中八九同一人物の事と思っていいんじゃないか」


 影姫もその意見を聞いて同感のようで、七瀬刑事の方を見て頷いている。

 どちらにせよ、記憶で見た沢渡という人物が今回の事件に少なからず関連しているという事が見て取れる。


「しかし、それだけでは何も分からんな。卓磨、その沢渡という教師、霧雨学園の教師だったと言ったな」


「ああ。でも、結構昔の人みたいな感じだったけど……現国の鮫島も出てきたんだが、見た感じ十年から二十年位前の人だと思う」


 俺がそう言うと、影姫は自身のスマホを取り出し画面を触り始めた。


中頭なかがみに確認してみよう。過去に着任していた教師なら、奴の執務室に何かしら資料があるはずだ。もしかしたら中頭自身も何か覚えているしれんし、存在したというのならば名前の確認も取れる」


「え、理事長ってそんな前から理事長やってるのか?」


「そんな前どころかもっと前からだ。五十年近くはやってるんじゃないか。詳しくは知らんが」


 そう言ってどこからかスマホを取り出し、少し画面を弄ると耳に当てる影姫。

 理事長、一体何歳なんだ……。


「なぁ、中頭って誰だ?」


 七瀬刑事が当然の質問をぶつけてくる。

 鬼塚も同じ事を思っているのか、俺の方に視線を向けていた。


「霧雨学園の理事長です。あの……天正寺の殺害現場にいた黒髪ロングヘアの女性です」


「ああ、あのなんか不思議な人か。なるほど、霧雨学園の理事長先生だったのか……」


 七瀬刑事はそう言いつつ影姫の方に目を向ける。


「おい、どうせならスピーカーにしてくれないか。できれば俺もその話を聞きたい」


 相手が出るのを待つ影姫に七瀬刑事が提案する。そうだ、俺としてもその内容は共有しておきたい。

 影姫が間に入るとどうしても端折ったりするので情報が事細かく詳細に伝わってこないかもしれないからだ。


「ん? あ、いいが……どうやるんだ……」


「ったく……」


 スマホを下ろした影姫の手元に七瀬刑事が手を伸ばし、スピーカーフォンに設定する。

 すると、スマホの向こうから女性の声が聞こえてきた。


『もしもし、影姫? どうしたのこんな時間に? もしもし?』


 理事長の声だ。設定をしている間に繋がってしまっていたらしい。

 影姫が慌ててスマホに顔を近づけて応答をする。


「あ、ああ、すまん。ちょっと……そのだな、ちょっと聞きたい事があって電話したのだが」


『何かしら? 年齢と体重以外で知っている事ならなんなりと』


「そんな下らん事を聞く為にわざわざ電話せんわっ」


 いや、俺はかなり気になる。特に年齢が……。

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