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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-29-9.裏切られた【陣野卓磨】

「それが、私と九条という刑事の出会い……そして、私はあの人の言った事が今理解できた。心に秘めた決心が揺るがないように。逃げ道を作る……」


 伊刈の口から九条さんの名前が出てきた。

 そこらにゴロゴロといるありきたりな苗字でもないし、同姓同名の刑事が同じ所轄内にいるとは考えられない。間違いなく九条春人その人だと思う。


 伊刈の口から語られた、知らなかった真実に驚きを隠せない。

 心臓の鼓動が高鳴っている。

 腹の底から抑え切れない怒りが湧き起こってくるのが分かる。


「つまり、伊刈から九条へ、九条から本忠へ、本忠から天正寺へ屋上の鍵が渡ったわけか。九条から天正寺に鍵が渡るまでは明らかに意図的だな。私が記憶している事の内容から考えても、九条は鍵が天正寺に渡ればどうなるかくらい容易に予想できたはずだ」


 影姫の言う通りだ。


「九条さんは、伊刈や鴫野がこういう形でまた姿を現しているのは知らないはずだ。伊刈がいなければ、本忠が教えてくれることも無かっただろうし、伊刈と九条さんのこんな事を俺達が知る事はなかったはずだ。でも、伊刈の現状を伝えないで俺達が問い質したところで、シラを切る可能性はあるな……」


 伊刈を見ると表情が暗い。自分が少しでも信じた人に裏切られたのだから当然の事だろう。


「うむ……九条は卓磨の物に対する記憶透視の能力の事は知っているのだろう? それに、屍霊に関してもその存在を認知している。伊刈を同席させればシラを切ることも出来まい。どちらにせよ、九条に確認する必要があるな。卓磨は九条の電話番号は知っているのか?」


「いや、俺は……七瀬刑事のは知ってるけど、そういえば九条さんのは知らない……」


 そこまで言いかけた時、鴫野の名前を口に出した事で、一つ思い出した事があった。柴島くにじま先生から預かっている写真立て。アレの記憶を見るのを完全に忘れていた。

 確か、あれに挟まれている写真にも九条さんが映っていた。そして、最近見た一連の記憶と、今日知った話。何か、何かが繋がってきている気がする。


 アレはずっと部室に置いてあったと柴島先生は言っていた。だとしたら、もしかして、見えて来るのは写真に映っている誰かに関する記憶。……九条さんに関しての記憶なんじゃないのか……。


「そうか。なら七瀬に確認して取り次いでもらおう。伊刈や本忠が今更嘘をついているとは到底思えんしな」


「ああ」


「とりあえず一端家に帰ろう。誰かの気配は……もうないが、これ以上誰かに聞かれてややこしくなるのも御免だしな」


 横の校舎脇のコンクリートの上においてあった鞄を肩にかけ早々と帰る準備をする影姫。伊刈はというと、その影姫の言葉を聞いてすっと姿を消してしまった。


 九条さんに早く確認を取るのも大事だが、家に着いたら、まずは写真立ての記憶を見る。忘れちゃいけない。

 写真には鴫野も映っているし、一応鴫野も同席させておいた方がいいか。少しでも情報を頭に入れた上で九条さんに確認をしたほうがいい。


 しかしなんだ、この感じ。すごく胸騒ぎがしてきた。

 本当に九条さんが、伊刈が自殺をするように仕向けたのか。そうだとしたら、どうなるんだこの先。屍霊の件もあるって言うのに、何でこんな時に、こんな事実が発覚するんだ。


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