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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-27-1.月紅石の行方【或谷岩十郎】

「日和坂が持っていた月紅石はまだ見つからんのか」


 日和坂が赤マントに殺られてからどれくらい日がたっただろうか。日和坂が殺られたのはもう終わった話で仕方ないとするにしても、日和坂が所持していた月紅石がまだ見つかっていない。あれは数に限りがある。失態も失態だ。


「申し訳ありません。まさかマサが殺られるとは思っていなかったもので……」


 目の前にいるのは雨宮猛あまみやたけし。組員達からは〝ヤス〟と呼ばれているが、なぜそう呼ばれているのかは私は知らない。俺自身も、組員につられてなのかどうかわからないが、いつしか彼の事をヤスと呼ぶようになっていた。


「まさか、思っていなかった、で済む問題ではない。アレが悪用されればどうなるかお前でも分かるだろう」


「はい……組員総出で探しているのですが……GN社から提供された厄災因子の探知機がまだ試作段階なのもありますし、捜索に出ている組員が屍霊の邪魔にあってまして。その、何人か殺られています」


「屍霊に殺られているだと?」


「はい、屍霊の行動から〝メリーさん〟と〝隙間男〟と呼ばれている屍霊です。つい最近発生しました様でして」


「ふむ、今話題になっている損壊持ち去りと警察官挽肉に関係している屍霊か……」


「はい。双方の被害がウチの組員に出ています。損壊の方に二名、挽肉の方に四名……」


 霧雨警察からは情報が入っていた。両事件共に屍霊が関係していると。だが、腑に落ちない部分がある。挽肉の方だ。挽肉の方は警察官を狙っていると聞いていた。なのになぜ、ウチの組員が殺される。一人くらいなら偶然警察官の近くにいて巻き込まれたという事も考えられるが、四人となればそれほど偶然が続くとも考えにくい。


 その屍霊どもの殲滅任務に当たっている組員もいるのだが、まだ殲滅完了の報は入っていない。

 現状、潜伏場所すら掴めていないのが実態という所か。


「探知機の精度はどうなんだ」


「私が持っている物はそれなりの精度はあるようです。陣野家や白鞘の犬神、それと戦邊や中頭なかがみ氏の持っている月紅石等も感知出来ていました。能力が発現していて使用者との波長が安定し、比較的強い波動が漏れ出しているモノに関しては反応し易いようです。ただ、他の組員が持っている一つ前のプロトタイプは少し劣る様で……」


「ヤス、お前はもう少し範囲を広げて捜索を続けろ。もう政の月紅石は門宮市内にはないのかも知れん。とりあえずお前は霧雨市に範囲を広げてやれ」


「承知いたしました。組長はいかがなされるのですか」


「部下の失態のケツを拭くのも上の仕事だ。俺は機構に月紅石紛失の責について弁明に行かねばならん」


「申し訳ないです……」


「お前が気にすることではない。相手の力を見誤った日和坂の責だ。俺は暫くウチを空ける事になるだろうから、何かあれば他の幹部連中に連絡を入れておけ。あと、月紅石が見つかれば俺に連絡をすることだ。いいな」


「承知いたしました……。では、私は失礼します」


 ヤスはそう返事をすると、頭を下げて部屋から出て行った。


 聞いている報告だけのまとめになるが、やはり今回出現している屍霊どもはどこか今までの奴等とは違う所がある。

 一部の屍霊被害に関する報告を聞いていると、屍霊どもが自分の意思で殺していないのではないかと思える件が幾つか見られる。これはあくまで、長年の経験から来る俺の勘だ。また、何か新しい力が働いているのか……。

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