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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-26-1.証拠物件紛失【七瀬厳八】

「くそっ、どこだ……どこなんだよ……!」


「七瀬さん、あっちにもありませんでした……誰かが間違って捨てちゃったんじゃ……」


「んな訳あるかよ! 茅原の骨が見つかったのはつい最近の事だぞ! 茅原の遺品がなくなってんのはおかしいだろうがよ!」


 あさぎり公園で八人の警察官が屍霊に殺された。

 もう、もたもたしている暇はない。一刻も早く陣野卓磨に茅原の遺品を見せて記憶を辿らねばならない。

 そう思った矢先だ。茅原芽依理の遺品は隣市の門宮警察署に保管されているのですぐには無理だが、茅原清太だけでもと思いここに来たのだが証拠物件管理室から茅原の遺品が根こそぎ無くなっているのだ。


「でも、これだけ探してないって事は……もしかしたら保管倉庫の方に送られてるんじゃ。別室に保管してあったはずの、茅原芽依理が殺された広域案件の児童連続殺害事件の他の証拠物件も無くなってるとの事です」


「だから、茅原清太のはおかしいだろっつってんだろ! 鬼塚、鑑識は!? 鑑識にはないのか!?」


「鑑識にも確認しましたが、あちらにも無いそうです」


「くそっ……マジで何処いったんだ」


 気持ちだけが焦る。芽依理の方も危険だが、清太の方だ。警官を狙っている。これ以上、屍霊やつらを野放しにしておけば、まだまだ被害者が増えるどころか、俺だって命が危ない。自分の身だけを守りたいと言う訳じゃないが、自分に死が迫っていると考えると冷静ではいられなくなってくる。

 鬼塚はどこか緊迫した様子がないが、状況を理解しているのだろうか。


「そうだ……。おい、鬼塚。九条だ九条! まだ誰もアイツに聞いてないだろ!」


「は、はい」


 もう九条が休みに入ってから一週間ほど経っている。隙間男に人員を殺されている現場だ。人が足りない。もはや、身内だから捜査からを外すなんて言っている場合じゃぁない。ついでに出てくるように言う必要もある。

 アイツだってこの件に関する捜査には復帰したいはずだ。


 俺と鬼塚は証拠物件管理室を足早に退室し、捜査一課へと足を向けた。一課内に残っている人間も、慌しく皆が対応に追われている。


 俺は自分の机の上に置いてあったスマホを手に取り、九条に電話をかけた。

 だが、九条は一向に電話に出る気配がない。鳴り響くコール音だけが耳に入ってくる。


「出ろよ出ろよおい……何やってんだよあいつはよ。こんな時に、くそっ!」


 苛立つ俺を見て船井がこちらに近寄ってきた。


「七瀬さん、誰に電話かけてるんですか」


「九条だよ九条! あいつにちょっと聞きたい事があるっ。それと、もうそろそろ出て来いってな!」


 俺の苛立つ様子を見て船井は少し引いているが、そんな事を気にしてはいられない。そして、耳元でなり続けるコール音が俺の苛立ちを加速させていく。

 コール音が鳴り続けるって事は電源も切れてないしマナーモードにもなっていない筈だ。なのになぜ出ないんだ。


「七瀬さん」


「あぁ!? なんだ!?」


「それがですね、俺も課長に言われて九条に何度か連絡入れたんですけど……数日前から全然連絡が取れないんですよ。今の……七瀬さんと同じ状況で、コール音はなるんですけど、全然出なくて」


 数日前から、だと……。

 悪い予感が頭の中に過ぎる。一番起こって欲しくない出来事。あってはならない出来事。溜まっていた苛立ちが一気に不安へと変わっていくのが感じられた。全身から熱が引き、自分の心臓の鼓動が大きく聞こえてくる。


 鬼塚や船井の方を見ると、心配そうな視線でこちらを見ている。どうする、どうしたらいいのだ俺は。


「クソッ! 鬼塚、九条の家行くぞ! 船井、課長に言っといてくれ!」


 当たって欲しくない。予感が外れて欲しいなんてこんなにも思ったのは初めてだ。電話に出れないのは何か理由があっての事だ。きっとそうだ。そうであってくれ。

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