5-22-9.遊ぼ【天正寺恭子】
「恭ちゃん、みぃつけたぁ~。 アァソォボォォ~」
不気味な声、だけど知っている声。そして懐かしい声。
「恭チャン、あにめ見おわッタぁ~? あははははは」
私の目の前に浮かぶ巨大なスイカの上に跨っている少女は、私の知っている少女であった。
「め、芽依理……………………?」
それ以上の言葉が出てこなかった。芽依理の顔はしているが、私の覚えている芽依理の笑顔ではない。
よく見ると、胸には傷があり、着ている服にはそこから滲んだ血が広がっている。
「恭ちゃぁん、お人形イーッパイ集めたから、一緒に、アァソォぼォォ?」
これって、もしかして、伊刈さんと同じ……。
あの時の光景が頭を過ぎった。全身が震えているのが自分でも分かる。震えで足に力が入らない。
彼女の姿を見ていると、ベンチから立って逃げる事が出来ない。
駄目だ、逃げないと。伊刈さんと同じ様な存在になってしまっているのなら、私一人じゃ何も出来ない。逃げにないと、逃げ……。
そう思い、震える体をなんとか動かしたが、遅かった。芽依理の横に浮かんでいた巨大なフォークがこちらに向かって突き立てられた。
一瞬何が起こったか分からなかったが、自分の胸を見下ろすと、胸から赤いシミが服に一気に広がっていくのが見えた。それを認識したと同時に胸に激痛が走る。時折噴き出る血が、私の服を赤く染めていく。
「え、あ、あ……」
「あはははははははははは! 恭チャン面白い顔ー!!」
喉の奥から熱い物がこみ上げてきた。次第に口の中に広がる鉄のような気分の悪くなる味が舌を麻痺させていく。
じ ん の 君……。 たす けて 。
「ネぇ、あそぼーよおおおおお」
今度は、芽依理の横に浮いていた巨大なナイフが振り下ろされた。
何が起きたかは分からなかったが、視界が転げ落ち、意識が急激に遠のいて行くのは分かった。
……。
「あれェ? 動かなくなっちゃっタ ねぇ、恭ちゃーン。恭ちゃぁん? アハハハはは、お人形さん見たぁい」
……。
「……」
……。
「……」
……。
「ツまんなぁい。動かないなら、恭ちゃんのはイラナイや」
アハハハ
あはははははははは
あははっ あはははははっ
アハハハハハ
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハは




