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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-22-8.どこにいるの【天正寺恭子】

 テーレレッテ、テレレ~テレレ~テレレ~♪ ………


「誰よ……」


 私は伊刈さんの自殺以降、自分のアカウントには鍵をかけて承認していない相手からはメッセージも届かない設定にしていた。

 なのに、ここ数日着信している悪戯と思われるメッセージは、許可した全く覚えもなく知らないアカウントであった。

 トイレに駆け込んでいった陣野君を見送り、鞄からスマホを取り出すと、不審に思いつつもSNSのメッセージを開く。まず目に入るのはそのアカウントのアイコン。スイカをくり抜いてハロウィンのカボチャの様な顔をつけたアイコンだった。


『今、門宮市駅にいるの』


 既読になっていなかったメッセージの一番古いものにはそう書かれていた。

 アカウントネームも文字化けしていて読めず、誰だかわからない。とりあえず不審なアカウントとは関わりたくないと思いブロック設定もした筈なのだが、アプリのバグか抜け道があるのか、何度ブロックしてもメッセージを送ってくる。


 メッセージはそこからまだ続いている。


『今、映画館の前にいるの』

『今、ゲームセンターの前にいるの』

『今、グフグフバーガーの前にいるの』


 画面を下へ下へとスクロールして見ていくと、今日私が陣野君と行った場所が次々とメッセージで送られて来ている。それぞれの着信時刻を見ると、全て私達とはほぼすれ違いである。なんだろうか、もしかしてストーカーか何かなのだろうか。

 悪戯だとしたら、私を付回してまで悪戯する等と言う労力をかける事は、私の経験上考えにくい。

 そう考えると、少し怖くなってきた。単にクラスの誰かの悪戯なら流していただろうが、ストーカーとなれば話は別だ。身に危険が及ぶかもしれない。


 静まり返った公園。誰もいない公園。鳥や虫の鳴き声、木々が風邪に揺られる音すら聞こえてこない。

 そんな状況の中に一人でいるのが急に不安になってくる。陣野君はまだだろうか。

 ただ単にトイレに行っただけなのに、ものすごく遠くへ行ってしまったように感じられた。

 そう思っていると、またスマホの通知音が鳴った。


『今、あさぎり公園の前にいるの』


 あさぎり公園……。聞きなれない公園のが名前だったが、ふとこの公園のに入る前に立っていた看板の文字を思い出す。確か、この公園の名前があさぎり公園だった。

 このメッセージ主が近くにいると思うと、何か底知れぬ恐怖を感じ鳥肌が立ってきた。


 慌ててスマホの画面を消しバッグに入れると、再び着信音が鳴る。


 テーレレッテ、テレレ~テレレ~テレレ~♪ ………


 怖い。なぜだか分からないが怖い。メッセージを見ない方がいい様な気がする。そう言えば、どこかでこういう都市伝説を聞いた事があるような気がする。都市伝説……ということは、やはり誰かの悪戯だろうか。だろうかじゃない、悪戯であって欲しい。


 不安で目の前の地面を只々見つめていると、地面が次第に暗くなっていく。

 雲がかかったような暗さではない。


 影……? 誰の影……?

 影は大きく広がっていくのに、足は見えない。

 上……? 上から何かが……?


 恐る恐る、視線を上へと上げていく。


〝いま、あなたの目の前にいるの〟


 ……。


 それはメッセージではなく、私の頭の中に直接聞こえてきた。

 次第に視界に入る、顔の形に穴の開いた巨大なスイカ。それに跨る一人の少女。まるで穴が開いたかのような漆黒の目、不気味に吊りあがった口角。少女は気味の悪い満面の笑み浮かべてこちらを見ながら、私に向けて言葉を放つ。

 

「恭ちゃん、みぃつけたぁ~。 アァソォボォォ~」

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