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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-22-1.外出【陣野卓磨】

「卓磨、本当に行くのか? 果し合いだったらどうする。決闘は法律で禁止されていると本で読んだぞ」


 支度を終えて玄関で靴を履く俺に影姫が問いかけてくる。

 しかし、何を言ってるんだこいつは。時々突拍子もない事を真顔で言ってくるので、冗談かどうかの判別がつかない。


「んなわけないだろ。今時果し合いなんかする奴おるかっ。大体、俺がアイツと果し合いなんかする理由がないだろ。……影姫も月曜の朝にあった事知ってるだろ」


「まぁ、隣のクラスだし声が聞こえてきたから知ってはいるが……だがアレは自業自得だろう」


「お前はほんとに冷たい奴だな。天正寺、アレから学校に来てないみたいだぞ」


 月曜日の朝、隣のクラスで天正寺が朝から泣き喚いていた。

 あの時、影姫は我存ぜぬという感じで、自分の席に着きボーっとしていた。俺もあまり厄介事には関わりたくないと思う方なので自分の席につき野次馬には行かなかったが、気にはなっていた。


 目玉狩り討伐の最後を見て伊刈の言葉を聞いた俺としては、他の生徒とは違い天正寺の今の状況が少し気になってしまうのだ。


「む……まぁ、冗談はさておきだな、もう六日間も七瀬から連絡がないんだ。そろそろあるかもしれないし、ここ数日被害者は出てないとはいえ屍霊はまだ街中をうろついているはずだ。フラフラと遊び歩くのはあまり関心できないな」


 俺がどこに行こうとしているのかと言うと、二日前に天正寺から外出のお誘いの連絡が来たのだ。俺としても、突然の事だったし相手が相手だったので付き合うかどうか迷ったのだが、天正寺の今の状況の事もあるし、何か相談があるのかもしれないと思い引き受けることにしたのだ。


「向こうはこっちに来るって言ってるし、近場だし大丈夫だろ」


「近い遠いの問題ではないだろう。もし卓磨がいない間に重要な連絡が入ったらどうする。そうなれば、下らん女の為に、また新たな犠牲者が出る事になるかもしれんのだぞ」


 どうも影姫は天正寺の事を心底嫌っているらしい。あまり会話をした事がない上に、あの虐めの状況を聞かされれば無理もないとは思うのだが。


「なんだ、妬いてんのか?」


「アホか!! 天地がひっくり返ってもそんな感情は沸いてこんわっ!」


 冗談の通じない奴だ。自分はチョイチョイ変な話を挟んでくる癖に……。もしかして俺はからかわれてるだけなのか。


「冗談はさておきだ。……あのな、影姫。ここ最近のアイツの暗い様子もそうだし、月曜の事もそうだ。このまま無視してほっといてよ、アイツが自殺してまた屍霊にでもなりでもすりゃ、それこそまた一大事だろ。潰せる芽は一つでも潰すのも俺達のやるべき事なんじゃないのか」


「……う……む……。まぁ、そう言う考え方もあるにはあるのか」


 影姫は俺から視線を逸らし、どこか納得いかないと言う表情ではあるが、一応は俺の言い分を理解してくれたようだ。


「ってか、影姫は本当にいいのか? できれば影姫も誘って欲しいってメッセージに書いてあったんだが」


「私は遠慮しておく。いつ連絡があるか分からんからな。それに相手が相手だ。終始私の不機嫌な顔を見せていれば向こうも気が滅入ってくるだろうしな。卓磨も電話はいつでも取れるようにしておけよ」


「ああ、分かってるって」


「あと、七瀬から忠告があった件も……」


「わーかってるって。了解了解」


 俺はそう言い残し、家を後にした。待ち合わせの場所は、喫茶おわこんである。

 朝の早い時間から学校以外で家を出るのは火徒潟町の時以来だ。


 ……七瀬刑事からあった忠告ってなんだっけか。影姫から聞いた気はするが、よく覚えていなかった。

 まぁ、とりあえず数珠はきちんとつけてるし、伊刈のスマホも持ってきた。何かあっても大丈夫だろう。

 最後は和解したんだ。何かあっても、伊刈なら助けてくれる……だろう。

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