1-13-3.SNSグループ【陣野卓磨】
最終更新日:2025/3/12
しかし、俺もグループに入っているはずなのに、こんなメッセージの通知が来ていない。昨日は色々あってスマホをほとんど見ていなかったから、気づかなかったのだろうか。
「心当たりないのか?」
「うーん……」
女子とイチャイチャした記憶などない。俺にそんな相手がいないことは、二階堂や三島も承知しているはずだ。
そう思いながら、俺もスマホを取り出し、SNSアプリを開いてグループを確認する。
「あっ! 俺だけグループはずされてんじゃねーか!」
その通り、画面を見ると俺はそのグループから外されていた。グループの主催は二階堂なので、おそらく二階堂が外したのだろう。今見せられたメッセージの流れから考えると、そうとしか考えられない。
「そうなんだよなぁ。んで、行ったの?」
友惟もその点について疑問を投げかけてくる。
イチャイチャした記憶などないと断言できるが、四人で喫茶店にいた記憶なら確かに存在する。しかも、その四人の内訳は俺が唯一の男だった。
「四人で喫茶店に行ったは行ったけど、霙月と兵藤さんと七瀬さんだぞ。俺からしたら恋愛対象にはなり難い面子だし、相手もそれは同じだろ。それに俺は無理矢理連れて行かれたんだ。コレは濡れ衣だろ」
霙月に関しては、まぁ、なんとも言えない部分もあるが、他の二人に関してはこっちから願い下げだ。
昨日もビンタされて笑い者にされたんだ。思い出すだけで腹が立つ。おまけになぜか精算まで一人で払わされて。俺はATMじゃないんだぞ。
「あら、霙月と行ったのか。なんか帰り際に一緒にいたのは見たけど……昨日帰り遅かったけど何も言ってなかったから知らなかったわ。昔から卓磨とどっか行った時は何かしら話してきたのに」
「霙月も無理矢理連れて行かれた側だからな……疲れてたんだろ。あの騒がしい二人につき合わされたら、その後に誰とも喋りたくなる気持ちは分かる」
「まぁ、なぁ」
俺の言葉から何かを想像したのか、友惟が苦笑交じりに返す。
霙月が事あるごとに俺のことを話していたのも、昔の話だ。数年違うクラスだと、どんなに仲が良かったとしても距離は薄れてくる。
それに、疲れていたという理由もあるかもしれないが、昨日話していた内容が内容だっただけに、霙月もあまり他人には話さない方がいいと判断したのだろう。彼女の性格上、慎重になるのも無理はない。
しかし、あの場面を二階堂と三島に見られていたとは……。
別に後ろめたい気持ちはないが、あの二人の機嫌を損ねると色々と面倒だ。ビンタされた瞬間も見られていたのだろうか。いや、文面から察するに、そこまでは見ていないようだ。もし見ていたなら、メッセージの中に同情の言葉くらい含まれていてもおかしくない。
「まぁ、二階堂と三島の勘違いなら説明しときゃ大丈夫だろ。あいつら単純だし」
友惟はそう言うが、口下手な俺にとってはその説明が面倒だ。どう切り出して話を進めればいいのか。昨日の兵藤の発案の内容も説明しなければならないのか。全てが面倒に感じる。
最悪の場合、二人もその話に乗ってきそうな気もする。
ふと考えると、俺のクラスには面倒な人間ばかりが集まっているのではないかと思えてくる。
天正寺と洲崎が別のクラスでホッとしていた部分もあったのに……。もう、あのどんよりした重々しい空気は味わいたくない。
そういえば、天正寺と御厨、そして洲崎は、クラス全員がバラバラに分けられていたな。知らぬふりを決め込んでいた教師たちの悪あがきだろうか。そんなことをしても虐めがなくなるわけがないのに、誰も苦労しないで済むような簡単な解決策など存在しない。
……。
天正寺と洲崎の名前を頭に浮かべたことで、昨日の兵藤の話とニュース速報が脳裏によみがえった。呪いなど信じるわけではないが、何か気になる点がある。
本当に、〝何か〟だ。今までこんな感覚になったことはなかったが、昨日から背筋がゾワゾワするというか、今までに味わったことのない感覚が時折襲ってくる。
昨日のいつからだろうか。少なくとも帰宅するまでは感じなかったと思うのだが。
事件に関しては、兵藤の話を聞いた時点では全く興味がなかった。
だが、ニュース速報を見てからだ。俺が確実に知る範囲内でも、御厨や洲崎が被害にあった時間がほぼ同時刻だった。
洲崎の件は昨日の今日なので、例のサイトを開いていたかどうかや死亡時の状況などは分からないが、洲崎が伊刈の虐めに関わっていたことは俺でも知っている。
一度、事件に関係していると思われるそのサイトを見てみたいという衝動に駆られた。だが、生憎俺は掲示板のURLを知らない。
実は以前、興味本位でそのサイトを見てみようと思ったことがあるのだが、検索してもなかなか見つけられず、諦めた経緯がある。その頃は単なる興味本位だったため、そこまで執着して見たいという欲求もなく、すぐに諦めてしまったのだ。
「まぁ、あいつ等は話せば分かってくれると信じるよ。……それより、話変わるんだけどさ」
友惟は知っているのだろうか。そのサイトのアドレスを。




