表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
496/613

5-15-1.リサイクルショップ葬間【陣野卓磨】

 部活に少しだけ顔を出して、早々に切上げリサイクルショップへ向かう。

 帰り際、部長に「また最近サボり気味だ」とブツブツ言われたが、仕方のないこともある。だが、その理由を言うわけにもいかず平謝りするだけで部室を後にした。

 場所は霧雨学園から少し離れており、十五分程歩いた所にある。

 今はリサイクルショップへ向かう為に影姫と二人きりで歩いているのだが、こうして制服姿で二人で歩くというのも滅多にないことなので少し緊張してしまう。

 同じ家に住んでいて同じ学校に通っているのだが、通学や帰宅が一緒になる事がほぼないからだ。


「歩きながらスマホを弄っていると危ないぞ」


 俺がスマホの画面を覗いていると影姫が横目で見ながら注意してきた。

 歩きスマホが危ないのは、柴島先生の腕時計の記憶を見たので重々分かっている。今はゲームとかSNSを弄っているわけではない。周りに気をつけながら画面を見ているだけだ。


「大丈夫だよ、ちゃんとチラチラと回り見てるし」


「挙動不審だな。さっきから何を見ているんだ?」


「これだよ」


 俺が見ているもの。それは伊刈と桐生が写った写真である。

 一枚だけでよかったのに、あの後桐生が何枚も送ってきたのだ。だが、それだけ仲が良かったという証拠なのだろう。送られてきた写真を見ていると、とても屍霊なんかになるような人物には見えなかった。


 そんなスマホの画面を影姫に向けて見せると、少し見ただけで興味もなさそうに視線を前に戻してしまった。


「下らんな。どの道、人前に姿を現すわけでもあるまいし容姿など気にしてどうなる。元の姿になって戦闘能力が落ちでもすれば元も子もないぞ」


「それは、まぁ……そうかもしれないけど、伊刈も鴫野も女の子なんだよ。見た目くらい気にするだろ。それに、いつまでも言う事を聞かないでへそ曲げられて、屍霊と出くわした時に消えでもされたらそれこそだろ」


 そう言って改めてスマホの画面を見る。去年一年同じクラスだったはずなのに、伊刈ってこんな顔だったのかと改めて認識する。それだけ俺は、虐められている彼女の事を見ないように遠ざけていたんだなと痛感する。

 鴫野の写真はというと昨日バタバタしていて見るのを忘れていた。鴫野は伊刈ほど元の姿に執着はないみたいだったが、それでも一人だけという訳にもいかないので、後でしっかりと確認しないといけない。

 後、写真立ての記憶も……。


「おい、ここじゃないのか?」


 そんな事を考えていると影姫が立ち止まり、横にあるそこそこ大きな店を指差している。


〝リサイクルショップ葬間そうま〟と看板が掲げられている。

 俺もこの店に来たのは初めてなのだが、いかにも遺品を取り扱っていそうな店名である。店のある本館と、横には倉庫らしき建物がある。

 倉庫の方では男性が一人、いそいそと荷物の整理をしていた。


「ここだな。店の人にコレについて聞いてみるか。覚えててくれればいいんだが」


 そう言って鞄から例の器を取り出す。

 そして店を眺めていると声をかけられた。振り向き誰か確認すると、そこにいたのは桐生であった。


「あれ? 陣野君」


「ん? あ、桐生か。こんな所で会うなんて奇遇だな」


「うん、ちょっとマスターが積んでたお皿を何枚か割っちゃったらしくて……ここで何か安くていいのがないか探してきてくれって」


 桐生は手振りでよく分からないジェスチャーをしながら苦笑する。そして俺が「そうなのか」とヘラヘラ返事をしていると、横にいる影姫に軽く肘で小突かれた。

 顔を見ると、「何をやっている急ぐぞ」と言いたげである。それが目に入ったのか、桐生の顔が少し険しくなった。


「ねぇ、珍しく二人並んで歩いてるって事はもしかして……」


「い、いや、なんというか、なぁ? たまには二人で買い物をって、なぁ?」


「じゃあ、それ何? どっからどう見ても怪しい代物なんだけど……」


 桐生は誤魔化そうとする俺の手にある奇妙な器をじっと見つめつつ、引き下がろうとしない。

 何ともタイミングが悪いものだ。よりにもよってイベントアイテムを手にしている時に見つかってしまうとは。


「こ、これは……そう、コレを売りに来たんだ。うちの爺さんに頼まれて。な、影姫?」


 曖昧な返事を返しつつ影姫の方を見ると、やれやれといった感じにそっぽを向かれ溜息をつかれてしまった。

 どうして俺はこうごまかすのが下手なのか。爺さんもそうだし、血筋なのか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ