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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-11-3.鴫野の写真【陣野卓磨】

「あらー。珍しい組み合わせの二人だわね。どしたの、呼んでもないのに昼休みに職員室へ来るなんて珍しい。授業で分かんない所でもあった?」


 柴島先生はそう言うと、手に持っていたコンビニのサンドイッチをビニールの上に一端置き、椅子を回転させこちらに向き直った。


「あはは、私は付添いで……私、たっく……陣野君と幼馴染なんですよ。先生に用事があるみたいで、でも一人で職員室に行くのが気が重いから付いて来てくれって」


 笑顔でサラッと本当の事を言ってくれる。

 何かこう、もっといい言い訳はなかったものだろうか。


「あらそう、幼馴染だったの。先生知らなかったわ。まぁ、でも駄目よ陣野君、職員室くらい一人で来れる様にならなきゃ。もっとシャキッとしないとモテないわよ? ねー、烏丸さん」


 柴島先生はそう言うと、意地悪っぽく霙月に笑いかけた。


「そ、そうですよね。あはは」


 どこか慌てた様子で先生に愛想笑いを返した霙月は、早く用事を済ませろといわんばかりに肘で俺を小突いてきた。


「んで、用事って何なの?」


 先生はそんな様子を見て少し間を空けると、俺の方を見た。


「あ、あのですね、前に見せてもらった、あのー……ほら、それ。その四人写ってる写真」


「ん? これ? コレがどうしたの」


 先生は不思議そうな顔をしつつも、俺が指差した先にある、書類の隙間から少しだけ顔を出していた写真立てを奥から取り出した。


「ちょっとその写真をですね、スマホか何かで撮らせて頂けないかと思っている次第か何かでありまして……」


「こんなの撮ってどうすんのさ。何か悪さしようとしてんじゃないでしょうねぇ?」


 柴島先生の怪しむ目つきが俺に向けられた。

 そう言うのではないのだが、そんな視線を浴びせられるとなぜか後ろめたい気持ちになってしまう。


「いやですね、そうではなくて何と言いますか……なぁ、霙月」


 職員室から窓の外をボーっと眺めていた霙月が、俺に急に振られてビクッと肩を震わせる。まさかここで自分に振られるとは思っていなかったのだろう。


「え? あ、うん。そう思うよ。うん」


 そして返ってきた返事は脈絡もない、いかにも話を聞いていませんでしたという返事であった。

 友惟と蘇我のサポートをする時はあんなに頼もしかったのに、そうだ、そうだった。昔からコイツはどこか抜けている所があったんだった。急に呼び出してサポートしてくれってのも無理な話だったか。


 そんな様子を見て柴島先生は一つ溜息をつくと手に持っていた写真立てをこちらに差し出してきた。その表情は、呆れたとも取れるのだが、何かを察したという風にも見える複雑な表情だった。


「はぁ……ま、減るもんじゃないし別にいいけど、変な事に使ったらだめよ。クラスの生徒に見せまわって笑い者にしたら承知しないからね?」


「すいません、恩にきます!」


「恩にきるなら日本史の勉強もうちょっと頑張りなさいっ」


 そんな心に刺さる一言を身に受け苦笑しつつも写真立てを受け取る。すると、手に触れた瞬間、一瞬意識が飛びそうな感覚に囚われた。足がふらつきガクッとなってしまったが、倒れるすんでの所で意識を保ち持ち直した。


「ちょ、ちょっとちょっと、陣野君」

卓磨たっくん、大丈夫……?」


 重なるように霙月と柴島先生の声が聞こえてくる。


「え、あ、ああ。大丈夫……」


 俺の顔を覗きこむ霙月と柴島先生。大丈夫なのだが、なんなのだろうか。


 この写真立てから記憶……?


 鴫野の件は終わったはずなのに、なぜそれに関係する物から同じ様な感覚が……。だが、そう言う状態になった以上、この写真立てには何かがあると考えるべきなのだろうか。


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