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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
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5-5-3.訃報【陣野卓磨】

『柳川は今朝、ちょっと事件に巻き込まれてな。公には公表されとらんからあまり詳しい事は言えんが、柳川はもう……だから、会わせてやりたくとも会わせられん。すまんな』


 それはえらく急な話であった。七瀬刑事の言い回しからして、恐らく何らかの事件に巻き込まれて亡くなったのだろう。

 柳川氏は警察官と言っても交通課の人だ。一般人の俺としては、交通課と言えばそんなに命の危険に晒されるような事件に巻き込まれる事などなさそうに感じたのだが、七瀬刑事がこんな嘘をつくとも思えないので、今言っている事は真実なのだろう。


「そ、それは……残念です」


『まぁ、気を落とすな。警察官なんだ。いつどんな所で事件に関わって命を落とすかなんて分からんからな。そんな事はないに越した事はないんだが……』


 時折言葉を詰まらす七瀬刑事の声はいつもとは違う感じがした。


『君等には近々また連絡を取る事になるかも知れん。申し訳ないがその時はまた頼む』


「それって……まさか」


『まだ確証はない。さっきも言ったが、公にはされていない事件だ。俺も確証もなしに無闇に誰かに言う事も出来んから、答えはまだ待ってくれ』


「わかりました……」


 返事をすると、向こうから七瀬刑事を呼ぶ声が少し聞こえてきた。恐らく九条さんの声だ。やはりその声も急かす様に感じられ、向こうはとても忙しいようだった。


『じゃあ、ちょっと立て込んでるから、また今度な』


「はい、ありがとうございます。失礼します……」


 そう言い通話を切る。

 今の七瀬刑事の発言からすると、また屍霊絡みと思われる事件が起きているのだろうか。俺もネットニュースの記事等はチェックするようになっていたので、屍霊が関わっていそうだと思える事件があれば気が付くと思っていた。だから、今は付近でそういった事件は起こっていないと思っていたのだ。まさか公にされていない所でそんな事件が起きていたとは。


「どうした、顔色が少し悪いな。何かあったのか?」


「え? あ、ああ……柳川さん、今朝方にお亡くなりになったらしい」


 それを聞いて影姫も少し残念そうに視線を下に向ける。

 自分の失われている記憶の一部を補填できる数少ない手がかりが無くなったのだ。気持ちも落ちるだろう。


「そうか……あの時は元気そうな声だったのだがな。急病か何かか?」


「いや、それが……」


 俺は短いながらも電話をした内容を影姫に説明した。屍霊が絡んでいる事件が起きているかもしれないと言う事で身構える部分もあったが、詳しく教えてもらえなかった為に、今の所は俺達にはどうする事も出来ないと言う結論に至り、七瀬刑事からの連絡が来るのを待つ事になった。

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