表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第五章(第一部最終章)・すべての真実はヤミの中に
462/613

5-3-1.寝覚めの朝【陣野卓磨】

「おい、卓磨、起きろ。何時だと思っているんだ」


 影姫の声が聞こえる。

 何時……。何時だ。今日は日曜日だぞ。

 昨日は遅くまで久々にゲームで夜更かししてしまったのだ。もうちょっと寝かせてくれ。


 そう思いつつ布団の中で身を転がし聞こえないフリをする。


「おい、起きないと霙月が目覚めの接吻をする事になるぞ」


「ちょ、ちょっと! 何でそんな事になるの!?」


 ……?


 からかう様な影姫の声とは別の、すごく慌てた別の声も聞こえる。燕の声ではない。

 霙月? 今霙月って言ったような気がする。え、なぜ霙月が?


「童話の世界ではお決まりのパターンじゃないか。そうしたら確実に起きるだろう?」


「童話だったら大概逆でしょ!? それに、起きるとか起きないとかじゃなくてっ!」


 二人の言い合う声が耳に飛び込んでくる。この声は確かに霙月だ。


「嫌なのか?」


「い、嫌とかそう言うのじゃなくて、何でってっ」


 まだ寝たりない重い瞼を何とか開けながら、声の聞こえる方を見る。

 すると、目に入ったのは影姫と霙月の姿であった。なぜ霙月が俺の部屋に。

 けだるい身体を何とか起こして布団から這い出る。


「ああ、おはよう……なんで霙月がここにいるんだ?」


 俺の問いに二人が答える事はない。ぼやける視界に映る二人の顔は何処か紅潮している気がする。

 布団から抜け出し、ベッドに腰掛ける俺の姿を見て、ただただ目を丸くして顔を真っ赤にし、こちらを見つめているのだ。

 どうしたのだろうか。頭髪に変な寝癖でも付いただろうか。


「      」


 霙月が声もなく、手で顔を覆い隠して部屋を出て行ってしまった。

 寝起きなせいもあって、状況がよく理解できない。


「どうしたんだ?」


 影姫に問いかけると、影姫も不機嫌そうに俺から視線を逸らしてしまった。

 何が何だか分からない。


「どうしたもこうしたもない。さっさと服を着ろ。寝ながら布団の中で何をしてたんだ貴様は」


 そう言って影姫も部屋を後にすると、すごい勢いでドアを閉めて行ってしまった。


 言われて自分の姿を確認すると、全裸であった。

 なぜ俺は全裸で寝ていたんだ……っていうよりまずい。一気に意識がハッキリとしてきた。同時に全身から血の気が引いていく。コレは恐怖だ。年頃の女子に布団から全裸で這い出す姿を見られたのだ。

 絶対二人に妙な勘違いをされている。このまま何の言い訳も出来ずに終わってしまったらと思うと、いてもたってもいられなくなった。


「お、おい! 違うんだ! コレは……っ!」


 慌てて声を上げるが、時は既に遅し。当然、既に二人の姿はない。

 そして目に入ったのは、部屋の隅で漫画を読んでいた友惟の姿であった。


「卓磨、予定がある前日の自家発電もほどほどにしとけよ……」


「ち、ちげーよ! 見ろ! 布団どこも汚れてねぇだろ!?」


「分かってるって。分かってるからとりあえずパンツ履け」


 ニヤニヤとこちらを見る友惟に向かって、そう言って全裸のまま布団を慌てて持ち上げて見せる。

 だが、一番説明すべき女性陣はもういない。女性陣二人への説明は面倒臭そうだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ