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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第四章・暗闇の中のチキンレース
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4-99-1.エピローグ

「卓磨、説明してもらわにゃならん事が山ほどある。わかってるな?」


「そうだよ、卓磨たっくん……前の呪いの家の時もそうだったけど……今回は流石に説明してくれるよね……?」


 俺の部屋。小さなローテーブルを囲んで目の前には友惟と霙月。

 二人が揃って俺の部屋に来るなんていつ振りだろうか。

 その表情は二人とも真剣で、貴駒峠の一件について問い詰められている。今回は鴫野を見られたという事もあり、言い逃れをするのが困難である。普通の同級生やクラスメイトとなれば、のらりくらりとはぐらかして交わす事も出来るかもしれないが、二人は別だ。幼馴染だし俺の家も知っている上に家も近い。

 隣には影姫がいるが、呑気にお茶など啜っている。


「お、俺、何の事だか……二人揃って同じ夢でも見たんじゃないか? ほら、双子だし……」


 目を逸らして、何とか引き下がってくれないかと言い訳をするも、流石に苦しい回答だと自分でも思う。

 二人があの時、気でも失ってでもいてくれればこれで言い訳もついたかもしれないが、ガンガン目がパッチリと開いてたものだから、こんな言い訳が通るはずもない。


「おいおい、卓磨君。随分と苦しい言い訳だなぁ? 言い訳するにももうちょっとマシな言い訳できないのか?」


「い、言い訳とは失敬な。あれは擬似的な……そう、新開発されたVR空間で……!」


 流石にコレも無理があるか。


卓磨たっくん……流石に無理があるよ……この感じじゃ、影姫さんも何か知ってるんでしょ?」


 案の定無理があった。俺の思考を読み取ったかの如く言葉を言い放った霙月の視線が影姫に向く。

 影姫はその視線に気が付き、手に持っていた湯呑みをテーブルの上に置くと小さく溜息を浮いた。


「卓磨、もう隠せんだろう。洗いざらい話すしかない」


「で、でもよ」


 影姫は焦ってモゴモゴとしている俺に目をくれる事もなく、前の二人に視線を移した。


「理由を話して、どうなると言う仲でもないのだろう? なら、話してやれ。卓磨の近くにいる人間として前もって知っておいた方が心構えができると言う事もある」


「そりゃそうだけどよ……」


 影姫の言葉を聞いて二人は黙って俺の方を見ている。そんな二人の顔を見ると、目線を逸らしてしまう。

 本当に話すべきなのだろうか。話したとして、二人を危険な事に巻き込んでしまうなんて事にならないだろうか。それが一番の心配なのだ。


「何も、知ったから実戦に加担しろと言う訳でもないんだ。桐生や柏木だってそうだろう。知っていて自分のできる範囲で手伝ってくれようとしてくれる人だっている。危険だと思えば、その時に断ればいい。いわゆる裏方というやつだ」


「なんだよ……俺等以外にも知ってる人がいるのか。なーんか、ショックだなぁ。長年連れ添ってきた幼馴染を差し置いてよ。なぁ、霙月。お前も何か言ってやれよ」


「う、うん……」


 友惟が影姫の言葉を聞いて、大袈裟に天を仰ぐように天井を見つめ、後ろにあったベッドにもたれかかる。

 霙月も何処となく寂しそうな顔をして少し俯いてしまった。


「い、いや、なんていうかよ、内緒にしてたって言うか、二人を危険な目に巻き込みたくないって気持ちがあってよ……今回の件だってそうだっただろ? 余計な事知ってさ、二人が危険な事に首突っ込むんじゃないかって思うとよ……俺は何とか対処できる術を持ってるからいいけど、二人は……」


「あのね、卓磨たっくん。もちろん私だって危険な目には合いたくないよ。でもね、もしあんな化物の相手をしててね、卓磨たっくんにもしもの事があったらと思うとさ……何も知らされてなかった、何も出来なかった自分にすごく後悔すると思うの」


 その霙月の言葉が胸に刺さった。

 そうか……。今までは周りの人を巻き込みたくないって事ばかり考えて、自分が死んでしまった時の事なんて微塵も考えていなかった。


「もちろん、もしもの事なんて起こらない事が一番だと思うけど、もっと私達の事を信用して頼って欲しい、とは思う。あんまり一人で抱え込まないで欲しいな……」


「そーいうこったな。俺も同感だ。何も関わった人間全員に事細かく言って回れって言ってるんじゃないんだ。俺だってあんなのに関わって死ぬなんてまっぴら御免って気持ちはある。でも、できる範囲で手伝ってやれることはあるだろ」


 友惟は身体を起こしてこちらに顔を向けた。幼馴染であり親友でもある友惟に打ち明けて入れなかったという後ろめたさもあり、真剣なその眼差しを直視する事が出来なかった。


「出来る範囲って……」


「ちょっと考えりゃわかるだろ。今回だってそうだ。事前にあのトンネルでああいうのが出てきてるって知ってれば、バスで行くなんて選択肢を選ばずに、遠回りして電車で行くって事も出来た訳だしな。関わりに行くんじゃなくてよ、関わらないようにする為に逃げる選択肢だってうてる訳だ。そういう場所に人が行かないようによ、行こうとしてる奴を見つけたら止めることだって出来るだろ」


「そうだよ、知ってれば呪いの家の時だって、すぐに逃げる事が出来たかもしれなかったし……あの時も本当に怖かったんだよ?」


「確かに、そうだな……」


 二人の言葉が胸に突き刺さった。横目で影姫をチラリと見ると、影姫もこちらを見て一つ頷いた。


 その後、二人には全てを話した。

 影姫の事、目玉狩り事件の事、呪いの家の事件の事、赤マントの事件の事、そして今回の事。

 二人は真剣に耳を傾けて聞いてくれた。そんな姿を見て、今まで自分が一人で抱え込んで二人を遠ざけていた事に後悔もした。同時に、俺にはこんなに真剣に話を聞いてくれる友達がいるんだと心底感謝した。


第四章 首無しライダー・ターボババァ・大喰い地蔵 完


第五章 メリーさん、隙間男、※※※※※※※、????へ 続く

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