表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第四章・暗闇の中のチキンレース
442/613

4-31-6.八方塞【霧竜守影姫】

 卓磨はすぐそこにいるというのに声をかけることすらできない。

 何とかこの状況を打破する手立てはないものか。


 声、声……そうだ……。電話、電話はつながるはずだ。私のスマホは電池が切れてしまったが、七瀬なら卓磨の番号も登録しているはず。


「七瀬っ! スマホを貸してくれ! 卓磨の番号は入っているのだろう!?」


「あ、ああ。しかし、繋がるのか? その……固有空間とやらは」


「ああ、ここに来る前、卓磨の方から電話がかかってきたんだ。その時は私のスマホの電池が切れてしまったのだが……だが、それならこちらから電話をかけてもいけるはずだ」


「そ、そうなのか」


 七瀬はそう言って慌ててポケットをまさぐりスマホを取り出すと、画面を触り始めた。


「あ、あった。ほら」


 そう言って差し出されたスマホの画面には陣野卓磨の文字が。さっきはいけたんだ。かかってくれ、お願いだ。

 コール音が鳴り響く。呼び出しはしているがなかなか出ない。どうなっている。

 そんなに切迫した状況なのか。気持ちだけが焦ってしまう。


「どうだ?」


 七瀬も九条もこちらを心配そうな視線で見ている。


「呼び出しはしているのだが……」


 駄目か…? 駄目なのか? 向こうの状況がどうなっているのかがさっぱりわからない。何とか状況だけでも……。

 三十回ほどコール音が鳴り、諦めて電話を切ろうとした時、コール音が途切れた。


「卓磨! 大丈夫か!?」


 相手が喋るのも待たずに声をかけてしまう。自分でもわかるが相当焦っている。


『影姫か!? 何やってるんだよ! もう峠には着いたのか!?』


 卓磨の方もよほど焦っているのか、喋る声が大きく耳に飛び込んでくる。思わずスマホを少し耳から話してしまう。


「着いたのは着いたんだが、屍霊の固有空間に侵入できない! そっちは今どうなっているんだ!」


『どうだって言われても……鴫野と首無しライダーが戦ってくれてるけど、影姫の言った地蔵の妖怪がしつこくてどうにもなりそうにない……!』


「鴫野……? 赤いチャンチャンコがそこにいるのか!? それに首無しライダーが戦ってくれているとはどういうことだ!? 屍霊じゃなかったのか!?」


『あ、ああ、ライダーは喋らないから何がなんだかよく分からないんだが、俺等の為にターボババアと戦ってくれてるみたいな状況なんだ。鴫野に関しては、また、俺の能力みたいなんだが……それでも圧されてて影姫もなんとか……』


「状況がよくわからないが……私も何とか手を尽くして……」


『たの……はや……れ…………たない……』


「おい! 卓磨! どうした!? 声が!」


 突然卓磨の声が途切れ始める。今まで鮮明に聞こえていたというのにどうしたというのだ。


「七瀬、向こうの声が途切れるんだが、この辺は電波が悪いのか!?」


「い、いや……よくわからんが」


 それを聞いて九条が自分のスマホを取り出し画面を確認する。


「いや、僕のスマホはアンテナバリバリたってるね。となると先輩のスマホだけ……もしくは向こう側に何か問題が……」


 九条がそう言いかけた時、スマホの聞き取り口から、がちがちという金属をぶつける様な音と大きな声が聞こえてきた。


『喰ワセロオオオオオオオオオオ!』


 その声と共に、微量の電気がスマホに走り、思わずスマホが手から離れ地面に零れ落ちる。

 外枠にケースがついていたのでスマホ自体は大丈夫だったようだが、地面に落ちたスマホの画面を見ると通話が切れてしまっていた。


「お、おい、どうしたんだ」


 七瀬が慌ててスマホを拾い上げ画面を覗いている。


「向こうから干渉があったみたいだ。電波を遮断されたのかも知れん……クソッ、これでは八方塞だ」


 卓磨は鴫野や首無しライダーの事を話していたが、中途半端に聞いたせいでますます訳が分からなくなってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ