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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第四章・暗闇の中のチキンレース
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4-29-6.タイミング【霧竜守影姫】

「アホかあああああああああああああああああ!!」


 街中に蓮美の大声がコレでもかと言う位に響き渡る。

 道行く人々は何事かと此方を見ては視線を逸らして通り過ぎていく。緊急時で急いでいるのだが、恥ずかしい事この上ない。


『だって蓮実さんが……』


「帰れっわれて、真に受けてホントに帰る護衛がどこにいんのよ! 馬鹿なの!? あんた馬鹿なの!? 脳みその代わりにプリンでも入ってんの!?」


『そ、そこまで言わなくても……あ、プリンと言えばお土産にプリンを……』


「黙れぇ! この、この……クッ……! 今日会ったばかりだからアンタを卑下する言葉が見つかんないわよ! とにかくそんな事どうでもいいから、今すぐ戻ってきて! 場所は……えーっと……降りた所の近くの……!」


 どこか悔しそうに握り拳を震わせて、地団太を踏みながら顔を赤くする蓮美。洩れて聞こえてくる会話からすると、立和田を待っていたら間に合わなさそうだ。


『今すぐって言われても、もう或谷邸で待機中ですから、ここからだと急いでも二十分は……』


「はぁ!? じゃあ、こっちに誰か近くにいないの!?」


『僕はちょっと、組員の現在地を把握できるような立場でもありませんので……急いで出発しますんで、少々……』


「時間ないのよ! もういい! アホッ!」


 そう言って荒々しく通話を終了させた蓮美は、申し訳なさそうに此方を向くと口を開く。


「影姫、ウチのアホは無理っぽいから……どうする。タクシー捉まえるにしてもこの辺はあんまり走ってなさそうだし……ホントウチの奴等は肝心な時に役に立たないんだから……ひよひよだったらこんな事、絶対になかったのに……」


 そう言う蓮美の手は、悔しさからか少し震えている。日和坂は前の戦いで死んだ。いなくなった者の事を言っていても埒が明かない。

 しかし、走っていくにしても時間がかかってしまう。どうすれば……。

 焦れば焦るほど考えてしまう。こうして考えているうちにも足を動かせばいいとは分かっているが、蓮美はともかく燕を一人残していく訳にも行かない。


 と、そんな時だった。近くの信号が青に変わり、此方に近づいてきた男が話しかけてきた。


「やぁ、影姫ちゃん。こんな所で何やってんの」


 それは七瀬と九条であった。私自身焦っていたせいか、声をかけられるまで気が付かなかった。

 九条は笑顔で此方に手を振っている。七瀬はというと、バツが悪そうに視線を逸らしながら頭を掻いている。


「いや、遊んでる所悪いな。俺はやめとけつったんだけどよ。九条が勝手に……」


「く、九条に七瀬……なぜこんな所に………いや、そんな事はどうでもいい! 車か!? 車でここまで来ているのか!?」


 私が血相を変えて声を荒げたものだから、二人とも何事かと驚きを隠せないようであった。二人とも上げた手をそのままに表情が固くなり、少し固まってしまった。


「え、あ、ああ。ちょっと二人に相談する前に峠の下見をもう一度しとこうと……今日事故った車がまだ現場にあるみたいだし……」


 慌てて声がどもる七瀬。そんな二人を見て蓮美が歓喜の声を上げる。


「影姫っ! グッドタイミングじゃん! 行き先も一緒だし、この人等に乗せていってもらえば……!」


「え? どういう事? 状況がよく分からないんだけど」


 喜ぶ蓮美や焦る私を見て、九条が一連の流れに理解が追いつかずに頭にハテナを浮かべている。

 しかし、ここで詳しく説明している時間は無い。一刻一秒を争う事態なのだ。グズグズしていたら取り返しが付かなくなる。


「事情は車の中で説明するっ。急いでくれないか!」


「お、おう。何か急ぎみたいだな。九条行くぞ」


「何かよくわかんないっすけど、了解りょーかいっす」


 そう言って九条と七瀬は今来た信号を逆戻りして対面に見える駐車場へと足を向けて行った。

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