4-19-1.見つかった【陣野卓磨】
今日は金曜日。アレから四日が経った。もう友惟のデートは二日後に迫っている。
なのに桐生からの連絡は一向に無い。
学校では同じ教室にいるというのに、チラリと視線を向けてもこちらを気にしている様子も無い。忘れているのではないかと不安になってしまうが、学校であんな頼み事の結果を聞くことも出来ずに、モヤモヤとした心で一日を過ごす。
「卓磨、どうしたの? 暗い顔して」
俺が頬杖を付き虚空を眺めていると、隣で次の授業の準備をしている霙月がニコニコとした顔で話しかけてきた。
いや、ニコニコと言うかニヤニヤと言うべきか。何かいい事でもあったのだろうか。
「いや、うん。別に何も……」
大きな不安に胸を押し潰されそうで、霙月と喋るような気分でもない。
霙月の問いかけも適当な返事で終わらせ、何も置かれていない机の上に突っ伏してしまう。
「そう? ならいいんだけど。もう授業始まるよ」
霙月はそう言うと、俺のそんな姿を気に留めることも無く、視線を逸らし黒板の方へと顔を向けた。
チラリと横目でそれを確認してから、再び桐生の方に視線を向けてみる。すると、桐生も俺の視線に気が付いたのか、ハッとした様な顔で慌ててスマホを取り出して素早い手つきで弄り始めた。
なんだ。どうした。俺の顔を見て……ということはまさか、まさか!
そう思い身を起こす。と、同時に俺のスマホがブルッと震えた。
桐生は他の人に見えないよう手をこちらへ向けて、親指立てニコッとしている。このタイミング、あの行動。間違いない、相手が見つかったのであろう。もう授業が始まりそうだが、そんな事は関係ない。俺にとってはこの件こそが今は最大の重要事項なのだ。
スマホを見るとメールが届いている。それを恐る恐る開いてみる。
親指立てておいて、また見つからなかったなんて上げて落とすんじゃないだろうなと言う不安が少しあるからだ。
『連絡するの忘れてたー。相手の女の子見つかったよ!^^v その子なら絶対間違いないしサポートも万全だと思うから期待しておいて!! でも、本人が当日まで名前は伏せといてって言ってるから、誰かは当日までのお楽しみにねっ!』
おお、おおっ、おお!! この一瞬でこんな長文をっ!
違う、そうじゃない、そこじゃあない!
見つかったか! さすが桐生だ!
俺には出来なかった事を平然とやってのける! そこに痺れる感謝するっ!
……しかし、一つの疑問が残った。なぜ名前を伏せるんだ。
他校の生徒とかだったら聞いた所で分からないから伏せる必要も無いだろうし……。
まさか、俺の知っている奴なのだろうか。そういえば、コイツは駄目と言う人物達を桐生に伝えていなかった気がする。まさか、その中の誰かじゃないだろうな。桐生は二階堂の妹を知らないだろうから、そこは大丈夫だとは思うが……頼んで折角探してくれたのに今更それを伝えるのも気が引ける。
そう思うと、何か底知れぬ不安が沸いてきた。
だが、桐生の人脈を信じて二日後を迎えるしかないか……。




